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仲の良い同僚が職場で泣いた話

基本的に授業の予定がない日は、色んな教室をうろうろしている。今日はそんな感じで、自分の作業をしつつ、他の講師の先生とお話ししたり、隣の教室に遊びに行ったりしていた。

その中でも、隣の教室にいるミスは私と年齢が近いこともあり、一緒にお昼ご飯を食べたりして、本当に良くしてもらっている。今日もいつものように、彼女の教室に行くと、ちょっと授業とは違う雰囲気で、少し忙しない様子だった。彼女曰く、すぐに作らなきゃいけないチラシのデザインがあるらしく、ディモと彼女の二人掛かりでやっていたのだ。
私は未だ職場のシステムとか人それぞれの仕事の仕方をよく知らないので、ただ見ることしかできない。しかし、たぶんいることが大事なんだよなぁと感じ、ミスの隣にいた。

気付けば時間は12時をまわり、お昼ご飯の時間になっていた。しかし、ミスはとにかく早く出さないきゃいけないから、と言ってお昼ご飯どころではない状況だった。最初の方は私も出来る限り付き合おうと思って作業を手伝っていたものの、こういう時に限ってめちゃくちゃお腹が空いてしまう。ついに我慢できなくなり、しれっとお昼ご飯を食べに食堂に向かった。

30分ほどで教室に戻ってきたが、ミス達はまだご飯も食べずに作業を続けていた。しかし、私自身がミス達の仕事の実態を全て知らないので、何を手伝えば最適解なのか分からない。その為、私は彼女の隣にいるしか出来なかった。
そうこうしているうちに、オフィスの男性がやって来た。彼らがミスに仕事を頼んでいたようなのだが、会話の雰囲気からして、あまりいい雰囲気ではない。そして彼女は「私たちはお昼ご飯もまだ食べていないのです」と言うと、その男性は突き返すように「僕だって、まだ食べていない」と言った。

私はその会話しか理解できなかったけど、それだけでも良くない状況なのは察することが出来る。同じ教室にいた自動車整備クラスのディモも肩をすくめるし、その場にいる生徒はみな苦笑いだった。そして私の隣にいたミスは「アパラーデ」(どうしましょ的な感嘆詞)と言って、下を向いて泣き始めた。
あらあらあら、どうしましょう…と、私も内心困惑した。しかし、隣にいる私はただ彼女の背中をさすったり、抱きしめたりするしかなかった。

結局、彼女は授業の時間が終わった後も残って作業をしていた。私がいつも行く夕方の日本語クラスの授業が終わった後も、彼女達は教室に残っていた。
私はいつも日本語クラスが終わったら、すぐに日が暮れてしまうので足早に帰る。とは言え、今日のミスを1人置いて帰る訳にはいかないと感じ、またミスのいる教室に戻った。

ミスは私が教室に戻って来た私を見ると、「どうしたの?」と言った。仕事の状況は大分落ち着いた様子だったが、デザインを印刷しに行ったディモを待っていたようだ。私は「ミスを一人で帰らせる訳にはいかないでしょ」と言うと、彼女は涙目になっていた。私はその様子を見て、これは泣き出す3秒前だな、と思い、ミスを抱きしめた。案の定、彼女は泣き始めた。
スリランカの人はよく「Don't cry」って言うけど、泣きたい時は泣けばいいと思っている私は、何も言わずに彼女の肩をポコポコしていた。

その後、ミスは「オヤー ホンダ ナンギー ヘベイ アンマ ワゲー」(あなたはいい妹ですが、お母さんみたい)と言いだした。
※スリランカでは親しい間柄の人をお姉さんや妹と言ったりする。この場合はミスの方が私よりも年上なのでナンギ(妹)

確かに、お昼ご飯も何も食べていないミス達が不憫すぎて、食堂でビスケットを買って皆に配って回ったけども。そういう行動ってスリランカでも「アンマ ワゲー」って言われるもんなんだな、と思った。

しかし、こういう時に自分が距離感近めの人間で良かったなぁと思う。あまりにも同僚の人たちと手を繋いだり、くっついたりすることが多いせいで、「プーサ ワゲー」(猫みたい)と言われるのは、良いのか悪いのかよく分からないが。


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