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置いてけぼり・青・胃酸

Discordでお題を出して文章を書こう、となったのでお話を書きます。
(お題は 置いてけぼり・青・胃酸の3つ)


初音ミクの髪の色は青か緑か、という問題ありますよね。絵を描く人によって色はまちまちだし雪ミクに桜ミク何ていうのもいる。けれどもその問題に終止符が打たれる時が来ました。何故ならこれからお見せするのは本物の…。

私の娘は幸せな人生を送ったと思う。昔から歌が好きだった。小さいころの合唱会では誰よりも上手に歌っていたし全国規模の大会に出たことだってある。社会に出てからも私の研究に手を貸してくれた。家庭も、子供も持った。だからと言って親を置いてけぼりにしてよい理由にはならないだろう…。

「教授!本当に発表する気ですか!?」
「まだ言うのか!」

男が二人、声を荒げている。教授と呼ばれた老年が続けて喋る。
「この研究を始めたのは私たちだ!…確かに君も見ただろう、青い海の中に浮かぶ真っ赤なミクの体を…。だがしかし!それは肉体の死であるのみ!」

もう一人の若い男は大声にひるんだ様子で、顔を青くしながら言う。
「教授…いいえお義父さん、あなたは狂っている。ミクは確かに死んだ。ひどく青くなったあの死顔を私は忘れることができない。でもあなたの好きな音は、声は、記録は残っている。だからといって、それを生き返らせても良い理由にはならない…」

老年は捲し立て続ける。
「黙れ青二才が!!ミクはもうあの青々とした森の墓で眠ってなどいない、これからステージに立って皆に音を、歌を届けるのだ。さぁ、ミク、行こう。」

ミクと呼ばれた、「人の形から外れてしまった何か」はその2本だけ長く伸びた髪のようなもので教授の腕にやさしく絡みついている。

若い男はもう止められないことを悟ったのか。胃酸を吐瀉物を、思いのままを吐きながら倒れこむ。
「もう私の好きだったミクはもういない。」

教授は倒れこむ青年を横目にステージに歩きながらつぶやいた
「ミクはここに、いるじゃないか。」

さぁ、いよいよ発表だ。皆に見届けてほしい。娘の晴れ舞台を。


「初音ミクの髪の色は青か緑か、という問題ありますよね。絵を描く人によって色はまちまちだし雪ミクに桜ミク何ていうのもいる。けれどもその問題に終止符が打たれる時が来ました。何故ならこれからお見せするのは本物の…。」



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