No.135 「感情の作用・反作用」

独立後に提供しているプログラムの一つに、「団体競技部・チーム力強化」がある。公に宣伝している訳ではないので、年に数回あるかないかの依頼数ながら、携わったチームが目標を達成すると、これ以上ないほどの喜びと誇らしさを感じる。

当然だが、既にてっぺんにいるチームから依頼を受けることはない。てっぺんを取りたくても取れないチームから依頼を受けることになる。つまり、依頼されるチームは、てっぺんに辿り着くまでに負けるチームなのだ。

まず行うのは、「なぜ負るのか?」「何が足りないのか?」「どうすれば勝てるのか?」を、とことん突き詰める。これらを理解することなく日々の練習を一所懸命行えば掴めるほど、てっぺんは甘くない。同じ過ちを繰り返すだけで、目標は掴めない。

突き詰めれば突き詰めるほど、化けの皮が剝がれる。てっぺんを取りたいという気持ちの本気度があぶり出されると同時に、チームメンバーの中にある温度差が露となる。
この後が大事だ。この後に、悔しさ・不甲斐なさ・情けなさ、と言った負の感情が心の底から湧き起こるか。
そして、チーム一人ひとりから、これら湧き起る負の感情を、言葉として、更には言霊にして仲間にぶつけ合うところに達するか。
私の感覚ながら、ここでてっぺんを取れるチームか否かが掴める。

言い換えるながら、トレーナーとして、この言霊のぶつけ合いまで導けるかが試されるのだ。

悔しさ・不甲斐なさ・情けなさ、といったマイナスの感情を深く見つめれば見つめるほど、勝ちたい・絶対に負けたくない・恩返ししたい、といったプラスの感情が比例して高まる。
てっぺんを取る強豪チームは、このことを伝統的に知っていて、敗戦時の悔しさや不甲斐なさを徹底して見つめることを怠らない。

選手たちに、このマイナス・プラス感情の作用・反作用の原理をしっかりと体感させるところから始まる。

絵に描いた餅で終わらせるようなことは絶対にさせない。


2012年3月

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