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#要約 『安いニッポン「価格が示す停滞」』

こんにちは。西坂です。今回は『安いニッポン』という本の要約をしました。
この本はただただ本屋さんでタイトルに惹かれて購入しました。実際に読んでみると日本の100円ショップや回転寿司は欧米や東南アジアの一部の国よりも安いことを知りました。こうした日本の価格は非常に安価である一方でそれによって起こりうる課題について学ぶことが出来ました。

書籍情報

【書籍名】 安いニッポン 「価格」が示す停滞
【著者名】 中藤 玲(著) 
【出版社】 日本経済新聞出版
【出版日】 2021/3/9
【ページ数】 256ページ
【目次】
第1章 ディズニーランドもダイソーも世界最安水準
第2章 年収1400万円は「低所得」?
第3章 「買われる」ニッポン
第4章 安いニッポンの未来

要約

日本は世界の国と比較して価格水準が安い。日本の価格水準が低くなったのは「長いデフレにより、企業が価格転嫁するメカニズムが破壊された」ことが原因であると考えられる。これは企業の賃上げが鈍ったことによって、働く人の消費意欲が高まらず、物価の低迷するということが労働者の賃上げができないという状況を作り出しており、負のスパイラルに陥っていると考えられる。

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※負のスパイラルの流れ

昨今のコロナウイルスの感染拡大を受けて、賃金についての考えはさまざまである。一部の人からは価格をもっと上げて目に見えない生産者や現場で重労働を強いられている人々に還元すべきと考える人も存在する。しかし、コロナウイルスによって所得が少なくなったことでできる限り安価にしてほしいという意見も存在する。このように、「生活を支えてくれている人々の労働に適正な価格にすべき」ではあるが、「所得の減少から金銭的に余裕がない」という状況が起こっているのである。

ここからは、日本企業の課題についてである。日本企業が抱える課題として「低い価格付け」「金額で測った低生産性」「低利益率」があり、これらは二つの原因があるという点で同根であると考えられる。一つ目は日本は従業員を解雇するための規則が厳しいため、機動的な人員整理ができない点にある。需要の変動に応じた人員整理ができないことが上記の課題を招く原因であるのだ。二つ目は同質競争気質である。ほかの国では「オンリーワン」に特化するため、独自性の高さが特徴であるが、日本は同質のものが他にも存在するがために、価格で勝負せざるを得ない状況になっているのである。

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市場内に同じ質の製品を扱う企業の多さで差別するところが変わってくる。(質であるのか価格であるのか)

また、賃賃金が低い原因について、多様な賃金交渉のメカニズムが整っていないことも挙げられる。例えば、日本人の7割以上もの人が賃上げを求めたことがないという結果が出ているのである。このような状況になる要因としては、日本は終身雇用制が主流であったことにより、雇用が流動化せず、他社との比較ができないことが原因である。また、日本人は今までに個人での交渉という考えがないため、たとえ声を上げても聞く側は耳を貸さず、むしろ不利益を被る可能性がある。そのため、日本人の賃上げ交渉を成立させるためには要望を受け入れる環境を整備したうえで、従業員がボイスを上げることが重要なのである。

最後に安い日本の未来についてである。確かに安いままでも最低限の生活を営むことができるが、これによる弊害も存在する。一つ目は個人的な趣味などを持っている人は海外ブランドに手が出せなくなる可能性があることだ。二つ目は有能な人材の海外流出である。物価が下がることによって高い賃金のポジショニングが維持できないため、有能な人材が流出する可能性が高くなるのである。三つ目は人材育成がうまくいかないことである。賃金の減少により、海外への留学が金銭的な理由からできなくなる。これによって、有能な人材は海外へ行き、スキルのない人が日本に残るという状況になりうるのである。

まとめ

価格が下がると顧客である私たちとしては嬉しいことであるが、物価を下げることは最終的に所得減少につながり、人手不足となる可能性が高い社会から有能な人材が海外に流出してしまうことにつながる可能性があることが分かった。そのため、消費者としての目線だけでなく、製造や販売にかかわる側の立場にもなり、価格設定は慎重にならなければいけないと感じた。しかし、この負のスパイラルを脱するためには景気の回復以外に方法があるのだろうかと考える。

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