魔女刈り的様相

大阪市長が新型コロナウイルス感染症対策としての自粛要請の中、営業を続ける店舗名を公表するという。

これに関連して、市民からの通報が数百件寄せられたとのこと。

新型コロナウイルス感染症については、感染症や医療関係者への言われない差別が問題になっているが、市民の通報により、市長が営業している店舗の店舗名を公表するというのは、危険な徴候である。まるで、魔女刈り的様相であり、危機感を禁じえない。

大切なのは、市民が自分や家族を守るために外出しないこと。このような状況の中で、日々最前線で対応している医療関係者や保健所職員、そして、スーパーやドラッグストア、コンビニエンスストアなどの従業員、公共交通機関の運転士を初めとする職員、介護関係者、保母さんなどの関係者、警察官や自衛隊、消防士などの治安関係者など、皆さんの使命感と奮闘には感謝しかない。

緊急事態宣言は、もともと憲法上の私権の大きな制約があることが危惧されていた。しかし、新型コロナウイルス感染症対策には必要不可欠。強制力は限定的な形で導入された。
営業自粛要請はできても、基本的には強制はできない。それを市民の声ということで、実名報道することは、間接的な強制にほかならず、しかも市が行うとなれば、公権力の行使による、営業の自由に対する介入、弾圧につながる。我々の自由が不当に制限されるきっかけになりかねない、重大な脅威である。

通報する市民が悪いとは言わないが、今必要なのは、人に移さないための優しさであり、お互いへの信頼と敬意である。

市民通報が力を持ちすぎると、近所の人が外出した、けしからんと警察を呼んだりする騒動に発展していく。いや、すでに起きている可能性はある。生活必需品や食材の買い出しや病院、薬局などにもいけないと、困る人もいる。自分が不要不急で外出しないことを考えるべきで、他人を咎めだてするのは、違う。文句や不満なら構わないが、公権力を使って、それを咎めようとするのは、国民間の差別や弾圧を助長する。

こう言うときは、まさに国民性が出る。

賢識と良識、そして優しさをもった国民性でありたいし、そうあってほしい。

市もやるのであれば、在宅勤務等の一層の要請と生活面の補償、そして医療関係者等への助成である。本質を履き違えてはいけない。若手の期待株の吉村市長、今あなたかやるべきことは、国民による魔女刈りに手を貸すことではなく、市長として、市民に一層のケアを考えることだ。

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