第2種電工・技能 改良型複線図【ゾーン式複線図】 <0-1 ゾーン式の考え方>
第0-1回 ゾーン式複線図を考案した経緯
ゾーン式複線図とは?
複線図のモヤモヤ感
技能試験の練習で複線図を書くことにいつもモヤモヤ感がありました。本当にこういうことやってていいのか、迷いがつきまとうのです。
なぜ、そんな風に感じるのか、モヤモヤ感の原因をあれこれ考えてみたら、次のようなことではないかと思い至りました。
こういった複線図のモヤモヤ感から逃れるには複線図を書かないという選択もありますが、私は、複線図の書き方を改善することでモヤモヤ感を多少なりとも解消することはできないかと考えました。
複線図とは何かと改めて問う
よりよい答えを導き出すためには正しい質問、正しく問うことが肝心だという話があります。複線図に関する疑問も同じだと思います。
複線図に関してよく耳にする問いは「技能試験で複線図は書くべきか」ですが、その前にまず問うべきは「複線図とは何か」だと思います。さらに、「技能試験において複線図は何のための書くのか」です。これをはっきりさせなければ、複線図を書くべきかの議論は無意味なものになってしまいます。
では、そもそも複線図って何でしょう?
単線図の単線がケーブルなのに対し、複線図の複線はケーブルの中の芯線です。
単線図で書かれている線はケーブルレベルで、ケーブルの中を通っている芯線が2本であっても3本であっても、まとめて1本で表記されます。一方、複線図はケーブルの中の芯線がどことつながるかを1本1本具体的に表記します。
つまり、複線図とは「配線・結線を芯線レベルで表記する配線図」と言えます。
”芯線レベル”であることがポイントで、これによって、どの線とどの線をつないだらいいのかが、単線図に比べてわかりやすく表現できるので、技能試験の際に、複線図を書いた方が作業しやすい、確認しやすい、失敗がないという話になるわけです。
まさに、「技能試験において複線図は何のための書くのか」の答えは、この「作業のしやすさ」です。
「複線図=配線・結線を芯線レベルで表記」→「作業がしやすい」という図式になります。
そんなこと、わかりにきったことだろうとおっしゃるかもしれません。
この図式で問題ないとも言えます。実際、多くの方が複線図を使って試験に臨んでいます。
「芯線レベルの表記」が役に立つのは間違いないことでしょう。
しかし、「作業のしやすさ」のためであれば、複線図に求めることが「芯線レベルの表記」に終わっていいのと問い直してもいいのではないでしょうか。
また、もし「作業のしやすさ」に関係ない部分があれば、「芯線レベルの表記」を省略してもいいんじゃないかという考えも浮かぶかもしれません。
つまり、こういう図式です。「作業がしやすい」を起点として、複線図とは何かを改めて問い直すということです。
技能試験で書く複線図は、誰に見せるわけでもない、自分だけが見るものです。ならば、「作業がしやすい」に特化して、複線図をアレンジしても誰にも文句は言われません。「複線図=芯線レベルの表記」を絶対視する必要はないわけです。
技能試験において、複線図は作業指示書である
では、「作業がしやすい」ために複線図に求めることは何でしょう?
私は、「複線図=作業指示書」と捉えてみたいと思います。
図)「複線図=作業指示書」→「作業がしやすい」
「芯線レベルの表記」も作業の指示につながってはいるのですが、もっと、実際の作業、やるべきことを明確にするための「作業指示書」と捉えなして、そのために複線図をどう改善していけばいいのかを考えてみたいと思います。
作業指示書としての複線図の過不足感
「技能試験において、複線図は作業指示書である」を捉えたとき、現状の複線図にはどんな問題があるのかを確認してみたいと思います。
私は、現状の複線図は、肝心なところが物足りなくて、いらないところに手間がかかると感じます。具体的にあげてみましょう。
まずは、物足りないと感じている点から……。
■物足りない点
次に、手間がかかる割には不要ではないかと感じている点です。
■不要な手間と感じる点
ゾーン式複線図は複線図の改良版であり、作業指示書である
以上のように、複線図を作業指示書として見た時の問題点を解決しようと工夫してみたのがゾーン式複線図です。
基本的には従来の複線図をベースとして、足りないところを補い、必要ないところを簡略化しました。
「技能試験で複線図は書くべきか」の問いに対する私の答えは、「書くか書かないかは、その人の感覚に合った方を選ばがいいが、もし、書くのならば、技能試験の適した複線図の書き方をしよう」です。
※ゾーン式複線図は、あくまで、技能試験の対策のために考え出したものであり、ゾーン式複線図があれば、通常の複線図はいらないということではありません。筆記試験の対策のためにも、通常の複線図の書き方をマスターすることをお勧めします。
では、次回は、ゾーン式複線図の概要を説明します。
Ⓒnishi morinaga