［ー閉ざされた世界ー］第5話

［失意の日…］
（登場人物）
岩谷赤也
東俊明
田村英次
木下基木
川原ヒロキ
黒川丈太郎
（来歓院）雲来和尚・コハル

場面:東区本部近く
田村が、粒子少しずつ跳び始める権藤を背負って歩いている。田村は、感心しながら呟くように

田村「本部まで近い距離ですが……権藤さん…貴方はスゴいお方だ。」

田村は、静かにゆっくりと本部まで歩いて行く。
場面が変わる:東区本部前
岩谷と東が田村が戻るのを待っている。

岩谷「……」
東「大丈夫…だよな？」
岩谷「…ん？あれは……」

2人は、走り出し田村の近くに寄る。

岩谷「英次…権藤さん…」
田村「……」
東「英次……まさか」
田村「…すいません…俺が、もう少し早く向かっていれば……」
岩谷「（背負われている権藤を見て）それにしても…スゴい人だ……さぁ！奥に運んであげてくれ。」
田村「はい…あ、（岩谷に何か渡す）権藤さんの…」
岩谷「（名前の書かれた木の棒を手にとる）…こんな早く受け取ることになるなんて……」

田村は、権藤を抱えて奥に歩いて行った。同じ時間帯に本部にいる人たちや木下は、道着を着て歩いているヒロキに権藤のことを話した。ヒロキは、軽く会釈をして体育館内に入っていった。
場面:体育館脇の道場スペース
ヒロキは、座禅を組んでいる。

ヒロキ「《落ち着け…落ち着け…心を乱すな！……》（呟く）権藤さん」

場面変更:本部入り口近くに、歩いてくる足が見える。
東が、それに気づく。

東「⁈あ…黒川」
黒川「…場違いだと思うが、俺が知ってることを大将にさせてくれないか？」
東「どういうことだよ⁈何か、知ってるのか？」
岩谷「（奥から）丈太郎…どうした⁈」
黒川「岩さん……また名前で呼んでくれる何てな嬉しいよ……権藤さんに何があったか…それと、一つ相談があります。」
岩谷「権藤さん……何だ、何でも良い…教えてくれ！」
黒川「知ってるといっても…俺は、そいつを…」
岩谷「まぁ、入れよ……話は聞く。」

黒川は、岩谷の誘いに乗り本部に入る。
少し日が変わり、翌日。
東区本部前にゆっくりと雲来と少し後ろからコハルが歩いてくる。木下が、出迎える。

木下「雲来和尚…突然すいません」
雲来「いいえ…頼まれたからには最後まで務めさせて頂きます。（コハルに）ゆっくりで良いから諸々用意して」
コハル「（早歩きで）はい！分かりました！（コハルは、先に歩いて行った）」
雲来「（木下に）さあ、我々も」
木下「こちらです。」

2人は、体育館まで歩いて行く。
場面変更:体育館内（椅子が並べてある中央に権藤の遺影が5枚ほど置かれ、周りには大量の花が飾られている状態）
雲来が、入ってきたタイミングに岩谷が歩いてくる。

岩谷「雲来さん……お忙しいなかすいません…来歓院の方は大丈夫ですか？」
雲来「院のほうは大丈夫ですよ（穏やかな表情で）出る前に（身体に触れながら）悪気の力を使い結界を張って来ました……（和かに）それに、アタルたちも留守を守ってくれています。」
岩谷「そうですか……狭いですが、（奥の部屋を指差し）あちらの部屋でお待ち下さい。」
雲来「ありがとうございます…（遠くにいるコハルに）コハル〜準備は終わったかい？こっちに来て休もう。」
コハル「はい！（雲来がいる方へ歩いてくる。）」

2人は、部屋に入る。
場面と時間変更:多種多様な椅子が並んでいる…何人かは、座っている。
会場の入り口には、板屋がボーと何かを考えて立っている。
会場が、ざわめくなかコハルから声がかかる。

コハル「お待たせ致しました。これより、権藤仁さんのお別れの儀を執り行います。」
雲来「（スタスタと中央の所まで歩いて行き、参列されている人たちに）これより始めさせて頂きます。」

雲来が座椅子の所に座り、お経を読み始める。
読み始めて少し経った後、コハルが参列者に声をかける。

コハル「（小声で）それでは、3人ずつ並びながらお手持ちのお花をお願いします。」

参列している人たちがゾロゾロと並ぶ。最初に花を置きにいくのは岩谷。

岩谷「（花を置きながら）権藤さん……」
東「（花を置く）……ありがとうございました。」
田村「（花を置く）もう少し早く来れてれば……（花を置き祭壇背中向けて歩きながら）俺が…」

木下と少し後ろからヒロキが歩いてくる。

木下「（花を置く）…早いっすよ……」
ヒロキ「（花を置く）今日も…これからも…いつもの通り…続けます。」

その後ぞろぞろと東区の人達が花を手向に並んでいる。その中には、統合した支部の人達が池見を先頭に並んでいる。
岩谷が、建物の端にいる黒川に話しかける。

岩谷「丈太郎…これからのことを相談させてくれ。」
黒川「…お、おぅ……俺ができることならやるぜ。」

2人は、静かにその場を離れる。岩谷は、離れる前に入り口近くにいる板屋にも声をかける。
続

次回:6話［板屋…西区潜入調査］