勝ち負けだけじゃないスポーツの楽しみ方vol.24「もっと、もっと、もっと、楽しもうぜ」

大和シルフィード分析サポート担当の日記

アスリートでも、コーチでも、監督でも、トレーナーでもない僕は、スポーツに関係ない仕事で培ったスキルや知識を活かして、スポーツを分析しています。このコーナーでは、2022年シーズンを分析サポート担当として戦う大和シルフィードのことを書いていきます。


もっと、もっと、もっと

先週行われた福岡Jアンクラス戦は2-0で勝利。今週は試合がなく、次節から岡山湯郷Belleとホームで、アウェーで4位のディアヴォロッソ広島と、1週空いて延期になった岡山湯郷Belleとの試合をアウェーで行うという変則的な日程が続きます。この3試合が終わるとなでしこリーグは中断期間に突入し、9月から最終クールに突入するというスケジュールになります。

福岡戦を終えて感じたことがあります。それは大和シルフィードと対戦する対戦相手はどのチームも「大和シルフィードがボールを保持する」ことを前提に戦術を組み立ててくることです。

福岡戦の前に戦った静岡SSUボニータ戦はハイプレスを仕掛けることが多い静岡がミドルブロックを作ってロングカウンターを狙う戦術を準備してきました。

福岡もボールを保持するのがうまいチームですが、大和シルフィードと戦った試合ではキックオフのボールをゴールラインに蹴り出し、わざとボールを渡し、カウンターを仕掛けるという戦術を準備してきました。こんなプレーは他のチームとの対戦ではみられませんでした。

他のチームと戦うときに比べて大和シルフィードと戦うときは違う戦術を準備してくるということは、相手は自分たちにとって嫌なことを仕掛けてくるという前提に立って準備を進めなければいけないということになります。大変だなぁと思いつつも、それは大和シルフィードにとってより一層成長するチャンスだということでもあります。特に2試合後に戦うディアヴォロッソ広島は元なでしこジャパンのテクニカルスタッフが監督を務めてらっしゃるので、大和シルフィードをしっかり研究して準備してくるはずです。ディアヴォロッソ広島は4-4-2のミドルブロックが強固なチームでカウンターも上手いチームですので、大変な試合になるはずです。

相手の戦術を想定した上で、自分たちがどうプレーするのか。自分たちが上手くできれば、相手を上回ることができる。相手が自分たちのレベルを上げてくれると思えば、こんなによいことはありません。チーム内の基準も自然と上がるし、基準が上がることで選手たちのプレーの質も上がってくるはずです。

昨日ある場所で女子サッカー選手と話したときに伝えたのですが、大和シルフィードの場合は答えがあるというよりは、選手とスタッフがすり合わせながらプレーをしています。

毎週出来ることが増えているので、課題も変わるし、トレーニングも変わるし、正解なんてないし、理想もありません。現在進行系でアップデートを繰り返しているので、開幕時にOKだったプレーも今は別のプレーがOKなんてこともあります。

最近監督と話していたのは「もっと驚かせて欲しい」という話でした。監督やスタッフが思いつかないアイディアをもっと試合中に表現して、相手も、味方も、驚かせて欲しい。監督やスタッフが驚かせるようなアイディアでなければ観客を驚かせることなんてできません。

福岡戦のアディショナルタイムでコーナーキックの場面でこれまでやったことないパターンを試しました。上手くいかなかったのですが、上手くいかなかったことで相手に2対1のシュートチャンスを作られてしまいました。

このシーンの動画に対して、僕はこうコメントしました。

「アイディアは最高でした。次は上手く決めましょう」

「時間を考えろ」「何をやってるんだ」と注意するのは簡単ですし、そんなの面白くありません。選手たちは上手くやって3-0にしようとチャレンジしたのですから、成功させればいいだけの話です。パターンもないし、限界もないので、自分たちがもっとできると思うなら、こちらはサポートするだけです。

最後に前節福岡戦のゴールシーンを貼っておきます。少しずつこういうことができるようになりました。

ちなみに1点目はPKなのですが、PKを奪ったシーンは左サイドバックがボールを受けて縦にパスを出して、そのままペナルティエリア内にランニングして入り、右サイドバックからのクロスを受けようとしたことで生まれたPKでした。このチームはサイドバックがペナルティエリアに入ることもOKです。

新日本プロレスの高橋ヒロム選手が試合後のマイクで「もっと、もっと、もっと、楽しもうぜ!」と話すのですが、相手が対策してきてもそれを楽しむ。高橋ヒロムも相手に研究される立場ですが、この姿勢を崩しません。

このサッカーに限界はないので、もっと、もっと、もっと、楽しみたいと思います。

マーケティング視点で風間八宏を分析する

2014年から2016年まで川崎フロンターレの監督を、2017年に名古屋グランパスの監督を務めている頃、風間八宏さんの考えを知りたくて、すべての試合のプレビューとレビューを書いていました。

ただ風間さんの考え方やメッセージは、サッカーのコーチや戦術が好きなマニアックなファンほど違う捉え方をしている気がします。

普段デジタルマーケティングの仕事をしている人にとっては、風間さんの考え方はとても合理的で解像度が高く腑に落ちることばかり。サッカーが好きでビジネスの最前線で活躍する人で風間さんのことを知っている人ほど「風間さんはすごい」と話しています。

そんなわけで、風間さんの考え方を僕なりの解釈で説明してみます。


設計図=正解、ではない

先日読んでいて気になった記事がありました。

この記事を読んでいて気になったのは「設計図」という言葉です。中村憲剛さんはこう語っています。

攻撃面に目を移すと、今回の6月シリーズには「大迫勇也不在で攻め筋はどうなる」というテーマがありました。3トップの中央では浅野拓磨が2試合に先発し、古橋亨梧と上田が1試合ずつ先発しました。前田大然は3試合に途中出場しました。

4人とも大迫とはキャラクターが違います。大迫に近いと言われる上田にしても、プレースタイルが重ならない部分はある。僕自身は、「彼らを3トップの中央に置く理由が、チームのなかで共有されていたのか」という点が気になりました。 

スピードを強調すると、早いサッカーになります。浅野、古橋、前田らは、チャンスと見たら相手最終ラインの背後に走るタイプなので、最前線でタメを作る動きは多くありません。

上田はポストプレーもしますが、ガーナが5バックを敷いてきたとはいえ、相手陣内の高い位置でタメを作るプレーができたのか。上田だけでなく3人のFWも含めて、最前線中央で1秒、2秒とタメを作ることで、周りの選手が危険なエリアに入っていくシーンは多くなかったでしょう。

6月シリーズの攻め筋では、最終的に誰が点を取るのかがはっきりしませんでした。つまりそれは、「3トップ中央にこの選手を置く」理由と「どう得点を取るのか」という設計図が、チーム間で共有しきれていなかったと考えられます。

僕が感じたのは「どう得点を取るか」の共有は必要ですが、「設計図」という言葉は誤解を生むかもなぁと思いました。中村さんは設計図のことを選手が選択を迷わないための共通言語という意味合いで使っていると思いますが、多くの人は正解のことだと誤解しそうだと思ったのです。

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スポーツのコラムにプラスして、日記を書くことにしました。日記には、お会いしている人の話、プロジェクトの話、普段の生活など、表に書けない話を書こうと思います。

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