夜散歩してただけでいろんな人に遭遇した話

8月12日の金曜は、24週間の語学学校生活が終わって解放感を得たのも束の間、午後にはバイトに行ってヘトヘトになるまで働いて帰宅した。
とっととシャワーを済ませ、日課の夜散歩に出かける。夜散歩しながらのタバコは日本にいた時からの習慣だった。
家から歩いて2分くらいの大通りの交差点に出た瞬間、対岸の歩道にあるバーの玄関先から「hey !」と叫びながら手を振ってくる男がいた。全然知らない人だったので、僕じゃなくて違う誰かに手を振ってるんだろうと思ったが僕以外には誰もいない。
そのまま交差点のコーナーで立ち止まってタバコ吸ってたら、その男はこっちまで歩いてきた。僕の推測で40代後半くらいの男で、顔つき的にラテン系だった。
僕の目の前までやってくるなり「Would you like to have fun ?(楽しみたくないか?」とニヤつきながら僕に聞いてくる。「What do you mean ?」と返すと、また同じことを聞いてきたから臆することなく「I can’t understand. What’s the point ?」って聞き返すと、そいつが立ってたバーを指差しながら「あのバーでビリヤードでもしよう」と言う。「俺はここでタバコ吸ってるだけだ。これ吸ったら帰って寝る」って言うと、「楽しいことしたくない?」とまた聞いてくるから、流石にうざくなってきて「I’m not interested in that and you」と言うと諦めたのかバーに戻って行った。日本で日本人のおっさんに同じこと聞かれて、これくらい強気に言い返せるだろうか、なんて思った。

一本目のタバコを吸い終わって、もう一本吸おうと火をつけながら歩く。なんとなく気が向いて、その男がいたバーの方まで歩いて行くと、ちょうどそいつがバーから出てきて、やべっ、と内心焦ってるのとさらにバーの中から白髪にめちゃくちゃ恰幅の良い婆ちゃんと、若い女の子二人の計三人が出てきて、その男に何やら叫んでた。男は必死に謝ってる様子だったが、婆ちゃんが「2度と戻ってくんな!!!」と叫ぶと早歩きでその男は逃げてった。
そのままその三人は店先でタバコを吸ってたので「Can I ask you ? Who is he ?」って聞くと、不機嫌そうに「He is fuckin’ rude」と答える。
「さっき、あっちの対岸でタバコ吸ってたらあいつが近づいてきて、俺のことこのバーに誘おうとしてきた。キモかったわ」
「無視して正解だ」
なんてやりとりのあとで、「お前誰だ? 初めて見る顔だな?」
って聞かれたから自己紹介すると「お前学生か?」って聞かれたから「今日卒業したんだ」って答えたら「Oh my !! Congrats !!!」って突然叫ぶなり、「めでてぇからいっぱい奢らせろ」とバーに招き入れようとしてくるから「下戸なんだ。遠慮させてくれ」と言うと「なんか飲みもん頼めよ。カウンターで「ブリジットの奢りだ」って言うだけでいい」って勧めてくるから「コーラ1杯だけもらうよ」って答えた。これがブリジットとの出会いである。
ブリジットはこのバーの店員で、一見柔和そうな太った白人のばあちゃんだけど、口はめっちゃ悪いし、両腕にがっつりタトゥーが入ってて、めっちゃチャキチャキしてる。このバーでたむろしてる若い子全員を「my fuckin’ grandkids」って呼んで可愛がってた。白人黒人で計6人の若い子たちと知り合った。タバコ吸うときめっちゃたかられた。
バーに招き入れられて奢ってもらったコーラ飲んでると、顔中にピアスして、ブリジットと体型が似てて、ブリジットと同じように両腕にタトゥー入れてる顔の彫りが割と浅めのおばはん(ネイティブの血筋なのかもしれない)と、そのツレのドレッドヘアーの黒人のアンちゃん(どういう仲なのかは聞いてないから不明)がやってきて、ブリジットを見るなり、大はしゃぎしてハグしてた。きっと親友なんだろう。
おばはんの方がホリー。黒人の方はマイコー(日本人の発音だとマイケルかな)
ホリーは酒とタバコで声がガッラガラで、おまけにめちゃくちゃ大声で喋る上に、何を言うにしても「ファッキンファッキンファッキン」ととにかく口が超悪い。僕が自己紹介するなり「カナダでもうファックしたか?」って聞いてきて思わず爆笑した。

バーの外でタバコ吸ってると、ブリジットの“孫”たちが店内の音楽に合わせてめちゃくちゃ下品なダンスをノリノリで踊ってて、それを見るなりホリーが「Hey!!! What fuck are you doing, kids !!! Stop it !!!!」と吠える。するといきなりブリジットが「手本見せてやらぁ」と立ち上がってケツ振り出したので、彼女の“孫”たちは一斉に「フォーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」と大はしゃぎだった。キャーナダ。
ブリジットとこのキッズたちが本当にいい関係であることがわかるシーンだった。冷静に考えるとババアがケツ振ってるだけだったけど。キャーナダ。

一方、マイコーは僕が日本人とわかるとめちゃくちゃアニメ・漫画のことを聞いてきた。アニメめちゃくちゃ好きらしくて、幽遊白書とHUNTER×HUNTERの大ファンなんだとか。「Togashi is my best Mangaka」って言ってた。僕がワンピース全く読まないと知るや、めちゃくちゃガッカリしてた。ごめんて。
マイコーはアニメについて色々なことを語り出した。
「ナルトは最高だ。でもボルトはゴミ」
「ワンパンマンの最新話はBeautifulだった」
「デスノートはとんでもねぇ名作だよ。あれを毎週雑誌で追えてた日本人が羨ましい」
とかいろいろ。あまりにもアニメオタクなので「AKIRA好き?」って聞いてみたら「AKIRA? Ah !! AKIRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA !! Holy shiiiiiiiiiiiit!!!!!」って大騒ぎだった。
政治の話するのもめっちゃ好きで「シンゾー、撃たれて死んじまったんだろ? とんでもねぇ話だぜ。マジで驚いちまったよ」なんて言ってくれた。

他にも「缶バッチを背広にめっちゃつけてる渋い黒人の爺さん(退役軍人らしい)」や「ホテルの清掃員してる黒人の婆ちゃん」などいろいろ話してて楽しい人と知り合えた。
めっちゃ疲れてたのに、楽しくて長居してしまって結局家に戻ったのは夜中の3時だった。近所で良かったね。

ちなみに今日は12時からバイトで、目が覚めたのは11時半だった。


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