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【食|麺】冷やし中華3 二口目への下降線

その3

どうも最近のボクは気分の浮き沈みが激しいようだ。先日(勝手に)凹まされたばかりだと言うのに、また今日もコンビニで彼女に手を差し伸べている。

セブンイレブン 夏の涼み ミニ冷し中華

多少好みと違っても手軽にいつでも会えるというのはキャラクターとしての大きな利点だが、そこに互いに媚びや期待が入り込むと関係性が途端に複雑化してコンビニエンスなものではなくなってしまう。

ボクは帰宅すると、あくまで気の無いふりでレジ袋を無造作にテーブルに投げ出し、しばしヒーリングタイムヘッドラインなんかを眺めながらビールを飲んで帰宅後の短い安息を謳歌する。

多少酔いが回って冷静さを欠いてきたところで、おもむろに彼女を剥きにかかると、先日の反省を踏まえて、あえて乱暴に全ての具材を混ぜて早急に一口目を啜りこむ。


そのコンビニ育ちという安っぽいビジュアルからくるイメージは、ボクの記憶の中の最も安っぽい冷やし中華と合致する。ボクにとっての安っぽい冷やし中華とは、土曜日の半ドンの昼食に母が作ってくれたような、穀物酢と砂糖が強烈に主張する、どこまで行っても甘酸っぱいアレだ。


ところが彼女は意外にも覚悟していたキツい甘酸っぱさは抑えられて、しっかり出汁の風味も感じられる、まろやかな味わいだ。あぁなんだ、こいつ美味いじゃないか!

ただ、いつも一口目なのだ。彼女との営みはプラトーを描かず、一気にクライマックス直前まで昇りつめ、昇天せずに急激に下降線を描く。人の目がないだけ完食義務もない。三口目にはもう残そうか迷っているボク。

ボクはまだ男になれない。

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