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可愛いならなんでもいいでしょ / 愛にまつわるファッションデザインの備忘録 001

「可愛いならなんでもいいでしょ」
って感覚で作り始めるものがいくつもある。

だから、レッグウォーマー(ルーズソックスモチーフ)を作ったり、服に花を咲かせたり、スカートを作ったり、帽子に耳を生やしたり、ツインテール用の穴がある帽子を作ったり、韓国トレンドのバブーシュカ(三角巾)を作ったりする。


色々な思いはあれど、まず、可愛いから、可愛いのが好きだから、可愛いと言われること、可愛いと笑う人の姿が好きだから作りはじめたものが、無数にある。

「可愛いは正義」、そんな、自分の中にある俗性や軽薄さに、目をそらさず、意識的に、向き合い、肯定するようにしてる。

けれど同時に、あらゆる「可愛い」がローコストに気軽に手に入り、かつ、爆速でうつりかわる時代だからこそ、そのトレンドチックなアイテムをあえて、長年パートナーにしたくなるようなディティール、手縫い、古着再構築、非効率的・オートクチュール的な手作業工程を注ぐことに、面白みを感じてる。そこに少しの反抗心を注いでる(逆にわざと「機能」を削いだりして)

可愛いで好きになっていい。けど、トレンドが終わったあとも愛してもいいように作り込んでおいてるからな、という仕掛けを込めておく。時代の可愛いに乗っかる通行証でありつつ、その船が沈没したあとも、一人でもその可愛いの旅を続けられるような、そんな服になりたくて。




大半の人にとっては無駄かもしれないこと、気付きもしないこと、それでも別にいい、きっと誰かには届くだろうと信じて作ってる。
「誰か」が受け取ってくれたから、8年も作れている。きっとこれからも。

「時代を超えて愛される服になりたい」と思うのは、作る人間は誰でも同じだろうと思う。僕にとってそれはどんな服か。それは、「君が飽きたあとも、私は君のことが好きだよ」と、持ち主の手を離れても、トレンドの波を離れても、作り手によって込められた愛が、どんなに時代と場所を漂流しても、静かに持続してるような服のことだ。

僕の服がそうなれるかどうかは、あと10年続けたってわかりはしない。それでいい。それがいい。



nisai 松田直己


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