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僕は僕が出会ってきたものがどれだけ美しかったかを表現するためにブランドをやってる

2015年
ブランド立ち上げ前日

住んでいるアパートの駐車場に
布をしいてペイントしてた

この写真は、
絵の具でよごれた白い布をまいただけで
これってかっこうよくない?と
得意になってる自分の姿だ




でも、これがファッションの本質かもしれない
「これってかっこよくない?」
と、自己満足しながら、対面してるものへ問いかけること

とあるデザイナーが言っていた
「ファッションは、共感と反発を繰り返すもの」
だって

僕はこの頃、縫うことが出来なかった
家庭用ミシンの糸のかけかたも知らなかった

上京から一ヶ月後、原宿で偶然知り合った服飾学生に
「僕がデザインとテキスタイル作りをするから、君は縫ってほしい」
と声掛けして始動したブランドが、this is nisaiだった

ブランド立ち上げ直後に、
縫う担当の友達は辞めてしまい
それでも僕は服で人を振り向かせることを諦められなかった

図書館で裁縫の本を借りまくって
アマゾンで1万円もしない安物のミシンを買って

手持ちの服をバラしてまた元に戻したり
下北の古着屋で買わないで見ることばかりして
ある時には古着屋を出禁にされたりして
だましだましでブランドと名乗ってた

友達にも兄弟にも「こんなの誰も買わないよ」と言われてたし
古着卸の社長には、
「俺は、ブランドを続けられる人間かやめる人間かは一目でわかるはずなんだけど
 松田くんが続いてるのは本当に予想外だった」
と言われてた

2021年、ブランド初のファッションショーは
バケツに入ったペンキに足をつっこんで
布に絵の具のあとを残しながら歩く、というランウェイだった


アパートの駐車場に布をしいてペイントしてたその日常が
このランウェイの着想源だ



何も縫えず、テーマしか持たず
それでも何かを作ろうと、届けようとして
汚れみたいなものでも、色が残って、
重なりあって、模様に、色彩になっていく

そんな、偶然から生まれる創造を、可能性を信じてる
失敗から、偶然から、自己満足から、はじまっていく
「これかっこよくない?」なんて瞬間が、そして累積が
僕らの日々を少しだけ明るく、面白く、人と人をつなげたりしていく

それを「ファッション」と定義したあとの
「ファッションショー」ってどんなものだろう?

君がただ、絵の具によごれた布をまとうだけでも
好きな服を着て街を歩くだけでも
その姿を、自分や誰かに撮ってもらうだけでも
十分ファッションショーじゃない?

今、そんなことを思っていて
これから、それを形にしていく

僕は僕が出会ってきたものがどれだけ美しかったかを表現するためにブランドをやってる
それは君のことだよ


2022年9月3日
東コレ公式ホームページ+youtubeにて、
nisai 新作コレクション発表


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