nodo ga ITAI desu!

のどが痛い。小さいドラゴン(見た目はかわいくない土気色のやつ)をたくさんのどの中で飼っていて、それが火を噴いたり、ひっかいたりきばで噛んだりしてるみたい。あるいは、画鋲がのどの天井にびっしり刺さってるみたい。とにかく、とても痛いですどうしよう。年始に参加したイベントで風邪をもらってきたっぽい。一緒にイベントに参加してた友達は平気らしくて、まあ確かにその子は除菌シートとか持ち歩いてたけど、私はご飯食べるときだってぜんぜん手を洗ってなかった気がするからそれもそうか、いい加減ちゃんとしなくちゃなぁと思った。熱もないし、のど以外は全く普段通りなんだけど、のどだけはもうおしまいですこんなの久しぶり助けて泣。

出ない声をがんばって出すと、がらがらどころではなく、ぐぐぐるぁぐぐぐるぁみたいな声が出る。もしこのまんま声がもとに戻らなかったらどうしよう、もとのふわふわなかわいい声に戻らなくても私は「にらせかんな」でいられるんでしょうか?、、、そう考えると、声は私のアイデンティティを構成する要素としてかなり重要なものなんだなって気づいた。

私は声が変なのでいつも困ってきた。誰と会話しててもふつうの人の12倍くらい聞き返される。初対面の人にはばかっぽいとかぶりっ子だと思われることあるし、声の他に話し方も変なので外国人に間違えられて気まずくなる。バイトで電話に出るとお客さんに舐められるし、ごはん屋さんで注文するときにはいつも緊張してつっかえる。下ネタを言ってみるとただただびっくりされて誰も笑ってくれないし、あと、意思疎通が難しいので基本的にモテない。

そうはいっても、この声で良かったと思えることも割とある。まず、初対面の人にすぐ覚えてもらえる。新学期にはクラスで一番最初に名前を覚えたよってよく言われてたし、いま、お笑いをやっていると覚えてもらいやすいのはすごい強みになっている。あと、怒っていてもあまり怒っているように見えないので、無駄なけんかをしなくて済む。私の話をまじめに聞いてくれるくらいには我慢強くて先入観にとらわれない人だけ自動的に私の周りに残るので、友達全員めっちゃいい人になる。ばかっぽいと思われるのが嫌だったのでたくさん勉強するようになり、結果それなりにいい大学に入れた、あと英語も得意になった。いい声で歌える。音声配信したら癒されるとかかわいいって言ってもらえる。個性としてとても分かりやすいしポップである。何を言っても少しだけポップになる。などなどだ。この間集まったとき親戚の人が、かんなちゃんあんな声だといじめられたりして大変なこともあったでしょうねとか言ってたらしいけど、本当に余計なお世話だ。そのことを聞いたときには1日中不機嫌になってたくらいには、自分の声がプライドに結びついている。

人魚姫の童話では、ヒロインの人魚は自分の美しい声と引き換えに足をもらって、地上にいる王子様を追いかける。でも私は、どんなにかっこよくて優しくてリッチな王子様だとしても、たぶん声と交換するほどではないなと思う。人魚姫はすごく美しい声を持っていながら、それをなくしてもアイデンティティをなくしてはいなくて、めちゃくちゃかっこいい。
自分の声が好きなのは、たぶんかっこいいことだ。でも私は、私の不完全なところに執着していて、もしこの声がなくなったら、私は私じゃなくなっちゃうかもしれないと思ってる。でも、そんなわけはなくて、声がなくても私はちゃんと「にらせかんな」であるはずなのだ。声なんかどうだっていいから、もっと別のところに自分の一番大事な軸があるようになりたい。

というようなことを、のどが痛くて考えていました。なんでもいいのでお願いだから早く治ってください。

書いたの:にらせかんな

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