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ぬい語講座 (にんげん向け)

にんげんのみなさんこんにちは。みなさんはぬいぐるみと一緒に暮らしていますか?
今日は、ぬいぐるみが理解しやすい文章を書くための方法を教えます。しかし、そう身構えることはありません。日本のぬい語は日本語とほとんど同じですし、基本のルールはたったの6つ。これであなたも、ぬい語マスター!


①ひらがなの多用

ぬい語の一歩目は、漢字をひらがなにすることです。ぬいぐるみは、多くのばあい学校に行っていないため難しい漢字・熟語はあまり知らないからです。また、ひらがなは丸くて柔らかい印象があるため、文章をひらがなに直すと文の見た目がぬいぐるみに近づきます。


私は仁良瀬です。ぬい語を学んでいます。
→ わたしはにらせです。ぬい語をまなんでいます。

このように、ひらがなに直すだけで文章全体がふんわりとした空気感をまとい、ぬい語っぽくなりましたね。ひらがなに直せるようになれば、ぬい語習得は80%終わりです。

スピーキングのばあいでも、ひらがなっぽいふんわりとした発音を意識しましょう。

②和語を中心に使用

①では、ぬい語の大きなルールであるひらがなを多く使用することを学びました。ひらがなにした場合にも意味が分かりやすい和語を多く使用すると、ぬい語がぐんと読みやすく、伝わりやすくなります。
漢語を和語にするだけではなく、カタカナの外来語も和語に直しましょう。

例えば、このように直すことができます。

頭痛      →あたまいたい、あたまのぐあいわるい
自己紹介    →はじめまして、はじめましてのあいさつ
トーンポリシング→いいかたけーさつ、ろんてんずらしま

このように、ぬい語への変換は無数のバリエーションがあります。ぜひあなたなりに素敵なぬい語訳を考えてみましょう。


みなみちゃんに好意を持っているのは、更衣室に忘れたものを持ってきてくれたり、優しい行為をしてくれるからだ。
→みなみちゃんがすきなのは、きがえるとこでわすれたものをもってきてくれたり、やさしいことをしてくれるから。

③口語的な表現を使う

前述したように、ぬいぐるみはだいたい部屋にいて、学校の教育を受けておらず、外部との交流があまりありません。そのため、ぬいぐるみ文化はにんげんほど激しい上下関係は発生しずらいようです。したがって、ぬい語は敬語のような上下関係をあらわす語彙が制限されています。

具体的には次のようなルールがあります。
①文体のルール
・文字に起こす場合にも文語的な文体にはせず、口語で書く。
・論文や新聞のようなである調は避ける。
・敬語表現は避け、友達と話すような平常語を使用する
・ですます調を使う場合は、ですます調が2文以上続かないようにする

②文末のルール
・語末に「だよ」「よ」「なんだ」などを使用する
・語末に伸ばし棒をつける

③単語のルール
・敬語はより直接的な語彙へ変換する。
 例 お手洗い→おしっこ ~はご遠慮ください→~しないでね


私は午前8時に起き、目玉焼きを食べることが毎日のルーティンである。
→ わたしはあさの8時におきて、めだまやきをたべるのが、まいにちのおきまりだよー。

④簡易発音での表記

ぬいぐるみはにんげんに比べると口や舌、のどの構造が簡単です。そのためぬい語は、より簡易的に発音できるように省略された発音体系を持っています。

・語頭以外の母音(特にウ)の欠落
 例 大丈夫→だいじょぶ そうだね→そだね 楽しそう→たのしそ
   語頭の母音が欠落する例外 いや→や 

・語頭以外の母音を伸ばし棒で表記
 例 東京→とーきょー

・母音が二つ続いた場合、二重母音へ変化
 例 そういう→そゆう、そゆ 

・ら→んへの変換
 例 分からない→わかんない

・促音の省略
 例 がんばってね→がんばてね 間違えちゃった→まちがえちゃた

・語頭以外で同じ音が続く場合、一つ省略
 例 あたたかい→あったかい

この簡易発音に基づく表記をマスターすると、ぬい語のレベルがぐっとあがります。


うさぎは長い耳で、不都合な真実を聞いてしまった。こういうことはもう嫌だとうさぎは思った。
→ うさぎさんはながいみみで、よくないことをきいちゃた。こゆうのはもやだって、うさぎさんはおもた。

⑤句読点の多用

ぬい語では、句読点を通常の日本語の倍くらいの頻度で打ちます。これには、ひらがなを多用しているために読みやすくするという理由と、ゆっくりと話すことが想定されているからという理由があります。


今日は夜更かしをしてしまったが、明日は早起きして松屋の朝定食を食べてから大学に行きたい気分だ。
→ きょうはよふかししちゃたけど、あしたは、はやくおきて、まつやのあさていしょくをたべてから、がっこーいきたいなぁ。

⑥~さん用法

ぬい語には、独自の語彙に対する用法があります。~さんや~やさんといった、より和らげるための用法です。

・さん付け用法 (動物などに使用)
 例 うさぎ→うさぎさん 

・やさん付け用法 (店や設備に関する一般名詞に使用)
 例 ライブハウス→ライブやさん 警察→けいさつやさん

・お~さん用法 (法則不明、古い言葉に使用?)
 例 店→おみせやさん 魚→おさかなさん

きつねは商店で手袋を購入した。
→きつねさんは、おみせやさんにいっててぶくろをかったよ。

⑦応用ルール

①?用法
 難しい言葉で、和語に直しにくい名詞、あるいは難しい固有名詞などは語末には?をつけます


マンスプレイニングは迷惑だ。
→まんすぷれいにんぐ?ってやだー。

・禁忌に当たる語彙
 ぬい語では禁忌に当たり、決して使わない語彙が2つあります。どんな文脈であっても、これらの語彙を使用すると、ぬいぐるみに対してとても激しい敵意があるとみなされるため、絶対に使ってはいけません。次の二つです。

破ける、ちぎれる

言い換え表現としては、けがをする、とれるなどがあります。

・絵文字の多用
 インターネット上のぬい語では、かわいい絵文字を多用します。これは、パッと見ただけでも楽しい気持ちになれるように、というおもてなしの心のあらわれです。使い方に規則性はなく、思うままにデコレーションの気持ちでつけてみましょう。

よく使われる絵文字

動物系
🧸🐈🦊🐹🐟🪼🐣 

顔文字系
🙇‍♂️🧐🫠😡👻

ハート系
💕💞💌💛🤍🩵

その他
🎈👗💃🧚‍♂️👯‍♀️👯‍♂️🚃 など


ドリル

では、ここからは問題を解いてぬい語の理解をさらに高めましょう。

①ライティング
次の日本にんげん語を日本ぬい語に訳してください。答えは一例です。

①書店で筆記用具を購入した

→ほんやさんでぺんとかをかった。

②カレーに入っている人参を取り除いてほしい。

→カレーにはいってるにんじんさんをよけてよー。

入っているを「はいてる」と訳してもよい。

③明石家さんまは日本のコメディアンです。

→あかしやさんまさんは、にほんのお笑いのひとなんだー。

④携帯電話はマナーモードに設定し、通話はご遠慮ください。

→でんわさんはしずかせっていにして、おしゃべりはしないでね。

⑤ラランドとラ・ラ・ランドにはどのような関係があるのだろうか。

→ラランド?てラ・ラ・ランドのことどうおもてるのかなぁ。

②リーディング
ライティング問題はいかがでしたでしょうか。
では、リーディングもやってみましょう。以下の文は、日本のとある作品をぬい語に訳したものです。なんという作品か当ててみてください。

〇〇ていうひとはすごくおこった😡
ぜったいあの、こわいおおさまをたおさなきゃてきめた🪼 〇〇にはせいじ?がわかんない。〇〇は、むらのまきばのひとだよー。ふえをふいて、ひつじさんとあそんで、のんきにくらしてた🐑🐑 でもね、よくないことをだれよりもきにするの❣️ きょうのまだくらいころ、〇〇はむらをでて、はらっぱやおやま🧗‍♀️をこえて、すうごいとおいこのシラクスのまちに、きたんだよ💪

答えは分かりましたか。ぬい語リーディングはぬい語ライティングの基礎を作るために重要です。たくさんのぬい語文献を読みましょう。また、ぬい語ライティングの上達のために、有名作品をぬい語に訳してみるのもよいでしょう。


終わりに

いかがでしたでしょうか。ぬい語をマスターし、ぬいぐるみとより仲良くなれそうでしょうか。たくさん書いて、話して、練習することがぬい語上達への近道です。
また、美しいぬい語を操るにはルールを守るだけではなく、イマジネーションとユーモアをもって、若干の逸脱を恐れない心が大切です。ぜひ、あなたらしい美しいぬい語を開拓していってください。

かいたの:ぬい語研究会


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