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言うたやろ、オチはないって。

三猿ベイベー:Day 28

みなさんおはようございます。津込舞でございます。

ええ、キチモトのお笑い芸人の津込舞です。お馴染みのギャグは『話しながらネクタイが伸びる人』でございます。これはですね、なんぼ言っても野暮なんですけど、1人漫才とコントを融合させたとても高度な笑いですな。

その前は何をやってたかと言いますと、こうやって街頭に立って漫才をしてました。

毎朝というわけではないんですけど、気が向いたときに駅に向かってマイク一本で話しておりました。なかなかウケないもんでね。駅に向かって行く人を見て、虚しい気分になったりしましたよ。あいつら無表情で死んだような顔しやがって、とか心の中で見下してましたね。思えば私の心も荒れてたみたいですわ。はっはっはっ。

いま、笑ったんで思い出したわ。街頭漫才しとるとなぁ、なんだかわらけてくるんや。誰も見てないし、わろうてないのに自分1人でわろうてくるんや。

通り過ぎる人を見て、ちょっと日が傾くまでここに立っとる。色々な人が通り過ぎる。背後では車がビュンビュン通りすぎるやん。目の前ではほんま色んな人が通り過ぎる。音も空の色も。雲も。ぜーんぶ通り過ぎる。そんなかであたしだけが立ってる。

黄色いジャージの変な格好の売れない芸人が立っとる。それだけや。そしてそいつがつまらん芸をしとる。

なんかそうしてると、おかしなってきてな。笑いがとまらなくなってくんねん。たぶん、人間こんな状況になったら笑うしかないんやろなぁ。よくいうやろ。

昔だって、「ええじゃないか」いうて知らん人どうしで踊る騒ぎがあったゆうやろ。それと同じや。それの一人でやるみたいなもんやな。

ウケなくてもええじゃないか。誰もわろうてなくてもええじゃないか。車が通り過ぎてもええじゃないか。人が通り過ぎてもええじゃないか。人が駅の改札に通るときに、カードの金が足りんくてピコーンと弾かれる。それもええじゃないか。彼氏と待ち合わせしてるおめかしした女の子が歩いとる。それもええじゃないか。おっさんが電話しながら歩いとる。ええじゃないか。ええじゃないか。つまらん芸人がおっ立って話しとる。ええじゃないか。えじゃないか。ってな。はははっ!

すまん。あん時のことを思い出すとちょっと今でもわろけてくるわ。ははっ。はははっ。

わろたついでに思い出したわ。

あん時、アタシ、へんな奴らとつるんでてなぁ。おもろかったなぁ。はちゃめちゃで。

一言で言えんけど、おもろかった。いやぁ、ちゃうで。そういう意味ちゃうで。なんか成功したやつなんか言うやんけ。昔の自分の話を面白おかしく話したりするやろ。そういう意味ちゃうで。

あんな奴らとつるんでたころは、あたしの成功に一個も関係しとらん。あたしが成功したのは、別の話や。あの頃の話はあの頃の話として聞いとくれや。

ただ、なんの意味もないしょうもない時間やった。金にもならんし、賢くなったわけでもない。腹は減ったし、臭かったし、ガラクタまみれやった。変なやつばっかで、まともに会話できんし、あたしはずっとツッコんでたし。なんや天からナレーターみたいな変な声が降ってきたし。

まあ、でもそれでもおもろかったなぁ。

特にオチがあるわけでもあらへん。まあ、下手な関西弁でわかる思うけど、あたしは関西人じゃあらへんから、オチにこだわらないんやな。通り過ぎたら、通り過ぎた分だけ聞いとくれれば結構や。見かけたら見かけた分だけ見てくれれば結構や。座ったら、座り疲れるまでおってくれれば結構、結構。つまんなかったら早よ、やめや。あたしはつまらんくても漫才続けるからな。時間の無駄やで。はよ仕事せい。

まあ……最後まで聞いてもなんもないけどな。言うたやろ、オチはないって。

曖昧に終わらせようとしとるのわかるやろ。あたしは話したいから話す。それだけや。ホントはこの黄色いジャージもマイクもいらんのやで。お笑い芸人ちゅう肩書きもいらんのやで。話したいだけや。話してわろうていたいだけや。

なんの金にも、腹の足しにもならん。勉強にもならん。ただ、話したいだけや。

そや、あんた踊ったことある?

アタシの国はなあ、踊りの国でなあ。毎年夏になると踊るんや。どこもかしこも踊っとる。空に手ェあげて、足で地面を踏んで踊っとる。子供もじいちゃんも、男も女もみんな踊っとる。

初めて見た人は、「なんで踊ってはるの?」ってみんな聞くんや。踊ってる人には答えられへん。「ただ踊りたくて踊っとるんや。」そう言うから、聞いた人は余計わからなくなるさかいな。

そんな時には、踊るしかあらへん。そう、踊ったらわかる。

踊っとる人が本当に踊りたいだけで踊っとることがわかる。ええで、難しいことやないで、ただ手ェあげて足で踊ればええ。上手も下手もないで。ただ、踊っとるって思ってればええんや。

そしたらなぁ。何もかもがどうでも良くなってなぁ。わろけてくるのや。ふざけてるんじゃあらへんで。ただ、なんとなくわろけてくるのや。腹の底から、ぐつぐつと笑いがなぁ。はははっ。……てな感じでな。

真面目に踊ってるだけやで、ボケる必要はあらへん。隣見たら、踊っとる人がおる。どこにもかしこにも踊っとる人がおる。そして、自分の手ェ見たら手が踊っとる。足見たら、足が踊っとる。腹みたら腹が踊っとる。気がついたら心も踊っとる。知らんうちに体が動いてなぁ。もう止まらなくなってくるねん。おかしなぁ……ははは。

ほらぁ、わろけてくるやん。

まあ、そう言うことや。あんま難しくは言わん。あたしはしゃべっとるだけ。それが楽しくてやっとるだけ。あんたもつったってないで踊ればええねん。そしたら、分かる。それだけでええんや。

最後までお読みくださりありがとうございます。書くことについて書くこと、とても楽しいので毎日続けていきたいと思います!