荒川区における公契約条例制定に向けて


1.東京都の各区・各市の状況


(1) 2024.7.31現在、東京都において、賃金条項の入った公契約条例が制定されているのは、23区の中では13区。また、23区以外では多摩市・国分寺市・日野市の3市となっている。
(2) 直近の動きとしては、文京区が今年の6月27日に条例を制定し、令和7年4月1日施行予定となっており、また立川市では公契約条例検討委員会を9月に設置する予定となっている。
(3) 荒川区においても、連合荒川地区協議会主催の学習会が昨年(2023年)10月、本年(2024年)2月に開催された。
(4) 西川太一郎荒川区長の勇退に伴いまして、11月の区長選では新しい区長が誕生することになる。新区長の下で、荒川区においても公契約条例制定に向けて進んでいきたい。

2.公契約条例とは


(1) 公契約とは、広義においては、「公契約に係る手続きを通じて、その自治体における何らかの政策を実現するために必要な事項を定める条例」とされるが、狭義においては、「公契約に係る業務に従事する労働者等に受注者等が支払うべき賃金の下限額に関する規定(賃金条項)を有するもの」とされる。本稿でいう公契約は後者を指す。
(2) 建設業においては、重層的な下請構造の下で、下へ行くほど労働者の賃金が下がっていく傾向になりますが、下請け企業の労働者の賃金についても、元請企業に連帯責任を負わせるものであります。

3.公契約条例の目的・効果


ここでは、公契約条例の先進自治体である多摩市の『多摩市公契約制度についての手引き(令和6年1月)』から引用する。

(1)概略

①公共工事・公共サービスの質の向上に資すること
②労働者、事業者、地域のそれぞれがメリットを享受すること

(2) 事業者のメリット


①公正な競争機会の確保
②不当なダンピング受注防止
③賃金水準の確保による質の高い従業員の雇用
④従業員の離職防止
⑤適正な利潤の確保

(3) 労働者のメリット


①適正な賃金
②適正な労働条件
③生活の安定

(4) 地域のメリット


①地域経済の発展
②地域社会の活性化

4.公契約条例の運用イメージ


(1) 毎年の労務報酬下限額を決める(区長・市長)
(2) 翌年度に締結する請負契約・業務委託契約等で公契約条例適用対象のものの労務報酬下限額に適用する。
(3) 受注した元請企業は労務台帳を作成し、契約期間の初月・中間月・終了後の3回、区・市に提出する。
(4) 受注した元請企業は、職種ごとの労務報酬下限額を労働者に周知する。
(5) 労働者は、労務報酬下限額以上の賃金が支払われていないことが疑われるときは、元請企業や区・市に申出をすることができる。区・市は必要なら立ち入り調査を行う。
(6) 公契約条例の施行状況を検証するための審議会を設置する。審議会は、区長・市長の諮問に応じ、また区長・市長への提言を行う。

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