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【翻訳】Slavic Saturday:吸血鬼

この記事は「グウェントで学ぶスラヴ文化」をテーマに2021年9月21日に Notion 上で公開されたものの移転記事です。原則として当時のまま転載していますが、ほとんどの画像は転載していません。

著者:DrDenuz 翻訳:nippongwent
この記事は「Team Bandit Gang」の記事「Slavic Saturday: Vampires (EP5)」の日本語訳です。元記事のURLは既にリンク切れとなっています。
URL:https://teambanditgang.com/slavic-saturday-vampires-ep5/

導入

昔のスラヴ人たちにとって、森とその中にある沼はどこにでもあるものでした。農場や村の周り、山でさえ、森に囲まれていました。それらの森には精霊が棲んでいました。
スラヴの神話に登場する精霊は、ほとんどが友好的な存在ではありません。夜の影に潜む悪魔の話は、スラヴの部族や国中に広まっていましたが、その中でも最も恐ろしい話の一つが吸血鬼です。
吸血鬼の中でも、とりわけトランシルヴァニアを起源とするものは、ポップカルチャーの浸透や民間伝承への興味によってよく知られています。しかし、スラヴの吸血鬼についてはどうでしょうか。彼らはどのようにして生まれ、どのような存在だったのでしょうか。探っていきましょう。

訳注:「トランシルヴァニアを起源とするもの」は、ドラキュラ伯爵(ヴラド3世)のことを指します。

語源

吸血鬼(ヴァンパイア)という言葉はセルビア(вампир:ラテン文字では vampir)、もしくはハンガリー(vámpír)を起源としています。
そのほかの言語では……

  • ボスニア – Lampir

  • チェコとスロヴァキア – Upír

  • ポーランド – wąpierz, upiór

  • ロシア – упырь:ラテン文字では upyr

などなど。

訳注:「Vampire」を日本語で「吸血鬼」としたのは、1915年の南方熊楠(博物学者)の「詛言について」という記事が初めてだったというのが定説でしたが、19世紀末には「吸血鬼」が「Vampire」の訳語として存在していたことが確かめられています。

吸血鬼の誕生

スラヴの信仰では、吸血鬼になる主な原因の一つは自殺などの「不自然な」死を迎えることとされています。他にも、生まれた日が悪かったり、歯や尻尾を持っていたり、卵膜(胎児を包む羊膜のこと)を被って生まれたり、子供の頃に適切な宗教的儀式を受けなかったり、魔法や黒魔術で殺されたりすることも夜の魔物になってしまう原因とされています。吸血鬼になるもう一つの理由として考えられるのは、ずさんな埋葬や無礼な埋葬をしたために、亡くなった人が墓から蘇ってしまうものです。
生きている人間であっても、病気にかかったり、体が変形したり、罪を犯したりすると吸血鬼になるという説もあります。

吸血鬼に対する予防策

埋葬時に、吸血鬼にならないための予防策としては、棺に十字架を入れ、あごの下にレンガを置き、遺体が埋葬布(遺体を包んでいる長さの布や包帯)や自分自身を食べてしまわないようにしましました(蘇るためにはそうする必要があるため)。衣服を棺に釘付けしたり(同様の理由)、棺におがくずを詰めたり(吸血鬼は夜になると目を覚まし、おがくずの粒を一粒ずつ数えなければならず、一晩中かかってしまうと夜明けに墓から出るころには死んでしまう)、体に棘や杭を刺したりもしました。また、頭を切り落として何も食べられないようにしたり、直接首を切るのではなく、鎌の刃を首にあてて、墓から起き上がったときに自ずから首が切れてしまうようにすることもありました。
当時の人々は墓の上に石を置いたり、遺体を腹ばいにして埋葬したり、口に石を詰めて自分自身を食べないようにしていたという説もあります。

訳注:ここで提示されているのは強引な埋葬例ですが、埋葬時に死者が蘇らない(現世に未練を残さない)ように行われる何らかの儀式は現代日本でも残っています。出棺前の「釘打ち」、故人の使っていた食器を割る「一膳飯と茶碗割り」などが該当します。

吸血鬼のイメージ

吸血鬼のイメージは、地域によって様々です。しかしながら、その多くは顔色の悪い男性として描かれています。女性が吸血鬼になった場合は、並外れて美しく、男性と同様に白い肌をしていると言われています。
多くの国では、吸血鬼は簡単に人中に溶け込める生き物と考えられており、違うところといえば、吸血鬼は日光を避けて夜の時間帯に活動することでした。吸血鬼は人間の血を吸うとされていますが、動物の血からも養分を得ることができると言われていました。しかし、この方法は体力を消耗するので吸血鬼にとっては避けるべきとも言われていました。
吸血鬼が村にやってくると、犬は暴れ、牛は落ち着かなくなります。この夜の魔物の兆候は、付近で家畜や親戚、隣人の死体が見つかることが挙げられます。また、新しく生えた爪や髪の毛、ドラム缶のように膨らんだ体、口に付いた血に血色の良い顔色など、生き生きとした状態で掘り起こされた遺体が見つかった場合は、夜の怪物が徘徊していることを強く示唆します。

そうです、ニンニクが嫌いです

結語

これは「Slavic Saturday」の5番目の記事です。ファンのみなさん、このほかにも多くの生き物たちについて語る予定です。これまでの記事はこちらで読めます。来週の土曜日に皆さんにお会いできることを楽しみにしています。
DrDenuz は Bandit Gang のゲストライターです。 彼についての情報はこちら:TwitterTwitchYouTube

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※「日本グウェン党」の記事は「CDPRファンコンテンツガイドライン」に従って作成された非公式のファン作品であり、CD PROJEKT REDによって承認されたものではありません

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