【翻訳】処分に対する wangid2021 の申し立て(追記あり)

この記事はグウェントのEsportsシーンで起きた事件についての当事者の反応とそれについての日本グウェン党の見解を書いたもので 2021年11月17日に Notion 上で公開されたものの移転記事です。

この記事は wangid2021 に対して行われた先般の処分に対して、 wangid2021 が Reddit に投稿した申し立て「wangid2021:A letter to the Gwent community and CD Projekt RED,」の日本語訳を主体とする解説記事です。また、申し立てに対しリプライされた kolemoen の投稿、コミュニティ・マネージャーの Burza さんの投稿についても翻訳しています。

前提知識

何が起きたのか

  • 2021年9月のシーズン・ドリアードのプロラダーにおいて「五花瞟」というプレイヤーが繰り返し無気力試合を行っていたため、アカウントBAN処分が行われた。(参考:公式サイト

  • 上記の調査が進み、中国の著名プレイヤーである wangid2021 の試合の 3.7% が不正なもの(対戦相手の無気力試合による勝利)であったと認定された。これにより wangid2021 がシーズン・ドリアードで獲得した MMR の一部が没収され、同様にシーズンの最終順位で得られるクラウンポイントも減少調整されるという処分となった。(参考:公式サイト

  • これに対し、wangid2021 は CDPR に対し異議申し立てを行った。CDPR からの回答がなかったため、Reddit 上で申し立ての内容を公開した。

wangid2021 の処分における CDPR の判断

  • wangid2021 自身に不正があったという証拠はない。(注:対戦相手に無気力試合を依頼した等の不正は確認されなかった)

  • 一方で、対戦相手の無気力試合によって利益を得ていたのに放置していた点を問題視。

論点

  • wangid2021 自身の不正は認定されていない。しかしながら、wangid2021 に対して対戦相手の不正の責任を取らせる形となった処分は、その程度も含めて妥当だったか。

wangid2021 による申し立て

以下は 2021年11月16日に Reddit に投稿された「wangid2021:A letter to the Gwent community and CD Projekt RED,」の日本語訳です。

今週の初めに CDPR に連絡を取りました。 CDPR にこれ以上プレッシャーをかけたくなかったので、申し立ては公開しないことを選択しました。しかし、2営業日の間、CDPR からの回答がなかったので、真実と自分が経験した感情を共有するためだけでなく、自分の評判と誠実さのためにも、事件についてコミュニティに公開することにしました。

強調しますが、私は自分の名誉を守りたいです。皆さんには、CDPR を含め、どの当事者に対しても盲目的に攻撃してほしくはありません。下記が私の申し立てです:

グウェントコミュニティならびに CDPR の担当者様へ

私の名前は ニ・リパオ です。Wangid2021 としてグウェントコミュニティに知られています。本日は、先週金曜日に発表された競技に関する GWENT Masters 当局の決定に対し、異議申し立てを行いたいと思います。

第一に、HUYA TV での私の配信は不正あるいは不正の機会を作ることとは無関係であることを明確にしたいと思います。私は4年前のベータ版からグウェントを配信しており、それ以来、グウェントは私の生活の一部となっています。私はグウェントがもたらした生活を楽しみ、多くの人がそれに続きました。2021年にプレイした試合のほとんどを配信しており、不正で批難を受けたものも含まれているでしょう。配信をフルタイムの仕事とし、すべての「証拠」をインターネット上に残している私のような人間にとって、配信と不正行為の間に関連性があると決めつけるのは、不当であり傷つきます。

第二に、シーズン・ドリアードの終盤に、私は確かに配信中に降参を含むいくつかの「異常な」試合があることに気づきました。しかし、シーズンを通してそのようなことはほとんどなかったので、わざわざユーザー名を覚えたり、疑わしい相手に連絡を取ったり、GWENT Masters 当局に報告する必要はないと考えました。3.7%という数字がどのように計算されたのかはわかりません。仮に根拠があって算出されているとすると、「異常」と判断されたのは合計25試合、100試合に4試合以下です。平均すると、6~7時間のゲーム中に1回の割合で起こったことになります。グウェントのプロの配信者として4年間活動してきた私としては、このわずかな試合数から利益を得るために、自分の誠実さを危機に晒す人がいるとは信じられません。さらに、プロラダーの試合では CDPR が相手のユーザー名を非表示にしているため、試合終了前に対戦相手が誰かを知る人はいません。もし私が不正を犯したと訴えられるなら、私は私自身の犯行と呼ばれるものの手段を知りたいと思います。

第三に、シーズン・ドリアード終了時の私の総MMRは基本MMRの9600を含めて10805です。プロラダーの675試合で1205ポイントを獲得しています。もし、私の対戦の3.7%に問題があるのであれば、他の競技者との公平性のために対応するMMRが差し引かれても構いません。しかし、それは400ポイントではなく、125~150ポイントであるべきです。400ポイントという数字がどのように計算されているのか、私にはよくわかりませんし、提起された減点によって私のクラウンポイントが240点になり、World Masters S3 への招待基準を2~4点下回ったというのも信じがたいことです。繰り返しになりますが、私は自分のものではないクラウンポイントの減点は受け入れますが、問題のある対戦を計画したわけでも、誰かと共謀したわけでもないので、私は過剰に罰せられたと考えています。

第四に、競技ルールの決定によると、私は「GWENT Masters 当局にこの状況を明らかにしなかった」と批難されています。私は、GWENT Masters 当局や CDPR の誰もがこの事件に関して私に詳細な連絡をせず、調査を求めなかったことに驚いています。そして今、私はコミュニケーションを怠ったと批難されています。これは私にとっても、この事件に関わる全ての人にとっても屈辱でした。

備忘として、私はゲームの競技性を守るという行動に大きな敬意を抱いています。そして、CDPR が確かな証拠を提供することに基づいて、その行為を継続することを望みます。私は、「他者と共謀し、GWENT Masters を構成するいずれかの要素の結果を変更または妨害することを意図した行動をとった」と批難されています。しかし、共謀した「他者」は存在しません。確認された不正の手段もありません。妥当な動機もありません。そして、私が自分自身について説明し、弁護する機会もまったくありませんでした。

誰かを批難するのに、憶測は決して有効ではありません。誰かの罪を宣告するためには、証拠を提示する必要があります。私は、故意に行ったことのない証拠のない「犯罪」により、フォロワーや友人の前で、「不誠実なプレイヤー」というレッテルをグウェントコミュニティで一生貼られることになります。このことは私の競技ランキングに関するどのような罰よりも私を苦しめます。歴史上、人々は正当な理由なく他人の運命を決めてきました。ポーランドでも中国でもそのようなことがありました。

私は今日、真実を主張するためだけではなく、私の失望と憤りの気持ちを共有してくれる皆さんに心から感謝の気持ちを伝えるために書きました。私は、これからもフォロワーの皆さんやグウェントというゲームに対する熱意を持ち続けますが、それは不正者としてではありません。

申し立て投稿に対する kolemoen のリプライ

以下は上記の投稿に対する kolemoen のリプライです。

wangid が実際に不正をしたかどうかはわかりませんが、CDPRの今回の対応には多くの点で疑問があります。

CDPR の状況説明から、wangid は本当に不正をしていたわけではないものの、不公平な利益を得ていたのでそれを正したいと考えているような印象を受けます。wangid が得た利益がどれだけ大きかったとしても、ラダーの高順位を気にしていたプレイヤーは5名だったので彼は最終的にトップ8に入っていたのは確実でしょう。

wangid をトップ8より下に置くというのは、彼の得た利益を正すというより、積極的に罰したことになり、それは彼自身を不正者だと見なしていることになります。しかしながら、そうであるなら、罰が寛大すぎますし、そのシーズンのすべてのクラウンポイントの没収や、一時的なBANさえもすべきです。

私からすれば、CDPR がその中間を行ったというのが理解できません。

また、私は不相応な降参が起こったときに配信者がどのように行動すべきかの公式なガイドラインのようなものを CDPR が明らかにすべきだと考えます。私の意見では、もし自分が負けるはずだった試合で何度も相手に降参された場合、降参したプレイヤーは報告され、BANされるべきだと思います(あるいは警告を与えられ、次のときにBANされるべきでしょう)。

【追記】今回の件についての Burza さんの投稿

以下は、上記の申し立てを受け、 reddit に投稿された CDPR のコミュニティ・マネージャー Burza さんの投稿「On the topic of the competitive ruling - WangID2021」です。

先週、WangID2021 に関する競技ルールの決定を発表して以来、皆様からご意見やご感想をいただいております。そこで、この問題についてさらに明確にしたいと考えています。

WangID2021 がコミュニティでいかに尊敬されているかは承知しており、彼の過去の成績を考慮して、我々はこの件を軽くは扱いませんでした。最終的な判断が正当なものであることを確かめるために、試合履歴やリプレイの分析を採用し、その他多くの要因や統計的な数値を考慮し、違反行為の判定をしました。また、他のプロラダーのプレイヤーについても全く同じ方法で完全な調査を行いましたが、違反はありませんでした。

各プレイヤーの現在の MMR は、そのシーズンの順位を表す最も直接的なものであるため、MMR/クラウンポイントを減少させることが最適であると考えています。今後も同じ方法を採用したいと考えていますが、完璧な方法がないことも理解していますので、この種の制裁に関するご意見やご心配をお寄せいただき、感謝いたします。

私たちの目標は GWENT Masters の競技性を守ることであり、すべてのプレイヤーを平等かつ公平に扱うことに尽力しておりますことをご理解ください。

翻訳後記:日本グウェン党の見解として

私は wangid の説明がそのまま事実だと考えています。彼自身に悪意があったとは考えていません。一方で、 wangid に瑕疵がなかったとも考えていません。

プロラダーに限らず、不正が疑われるようなおかしなプレイがあった場合は注意深くなる必要があります。 wangid の瑕疵は、それを過小評価し、報告する必要はないと判断していたことだと考えています。

追記:結果的に CDPR としては、 wangid が不正に関与した証拠はないと判断しながらも、不正に関与した場合と同等の利益を得ていた事実を問題視し、wangid に対し厳しい処分を行わざるを得なくなったように見えます。 wangid の道義的誠実さを私は疑っていません。しかし、プロラダーの結果に影響を与えた事実は、事実としてとらえなければいけないと考えています。

グウェントに限らず、リアルスポーツを含め、すべてのゲーム、もっと広くとらえると社会契約は、お互いの信義という名の秩序を前提に成り立っています。秩序を維持するためには、お互いが信義を守っていることを確認しあう相互監視が必要になります。

わかりやすい例はゴルフです。ゴルフでは勝敗を決めるスコアは自己申告制です。それを同伴競技者に確認してもらい、大会の公式記録として提出します。そのため、ラウンド中は自分のスコアだけでなく、同伴競技者のスコアも記録していないといけません。

グウェントなどのカードゲームも、大会では運営管理の手間を軽減するため、試合結果をプレイヤー自身が自己申告しているものがあり、ゴルフと共通しています。

私たちが思うより多くのことがこうしたお互いの信義を前提にしており、それ自体は脆弱なものなので、意識していないとその脆弱な部分が偶然または何者かの悪意(当人が善意で行っている場合もある)によって壊されてしまいます。

また、プレイヤーだけでなく観客もゲームの秩序を維持する当事者です。配信者のファンであると、配信者に対して問題提起するのは難しいかもしれませんが、秩序を守るためには声を上げる必要があります。

そして同時に CDPR もゲームの秩序を維持する重要な当事者です。ただルールを適用し、処分を下す裁定者であればいいわけではありません。異常な頻度の降参に対し警告を与えるシステムを作るかどうかは別にして、事後になってから不正の処分を下して終わりというのでは他人事すぎます。

以前もプロラダーにおいて、「インテンショナルドロー」の問題がありました。そのときは CDPR からプロラダー参加者に内々に警告が出たようです。しかし、公にはされておらず、後々になって知られるようになりました。 CDPR には先見的で予防効果のある行動を求めたいと思います。

また、 CDPR が wangid に与えた処分が過大/不十分だったかどうかに関しては、私は妥当だったと考えます。wangid に過剰に不利な裁定となりましたが、CDPR がシーズンが終わってから不正を認知したという状況を勘案するに仕方がない部分があると考えています。こちらに関しては処分の妥当性よりも、繰り返しになりますが、wangid も CDPR も先んじて予防的に行動すべきだったとしかいいようがありません。もちろん wangid も CDPR も、不正プレイヤーの行為に巻き込まれ、気付いたときには遅かったという点で不幸であり、とくに wangid の場合、わずか数クラウンポイントの差で大会出場を逃したというのは痛手であり、個人的に同情します。しかしながら、ペナルティは大会出場権の有無に影響しないように手心を加えるものではありませんし、私は CDPR が大会出場権の有無を加味してペナルティの大きさを設定したとも考えていません。

やや一般的な議論になってしまいますが、テレビゲームの判定はゲームのプログラムによって完全に自動で行われているため、その判定が絶対であり、その範囲内では何をやってもよいと考えがちです。しかし、リアルスポーツでは、自分の反則や自分に有利な誤審に対して自己申告する文化があり、その行為は称賛されます。我々は誰しもが完璧ではないので、間違いは必ず起こります。そのため、そうした間違いに気付き、改善するような振る舞いが求められます。そのような自立し成熟した文化がグウェントでも根付くように私は希望します。

グウェントでも、GwentSlam 大会において、 FreddyBabes の敗戦が濃厚だった試合がありましたが、結果的に相手の回線落ちによって Freddy が勝利してしまいました。このとき Freddy は勝敗結果を自分の負けに訂正するように求めました。そういう行為がゲーム全体の秩序を作り出すと私は思います。

優れたプレイヤーである wangid がプレイ技術以外の面で足元を掬われてしまう結果になったのは不運であり残念です。競技者、観客、開発者、すべての関係者がゲーム全体の秩序を維持しなくてはいけない当事者であるということを再認識すべきだと思います。

※カード情報は https://gwent.one/jp/cards/ の Export 機能を使用しています
※「日本グウェン党」の記事は「CDPRファンコンテンツガイドライン」に従って作成された非公式のファン作品であり、CD PROJEKT REDによって承認されたものではありません

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