この記事は wangid2021 に対して行われた先般の処分に対して、 wangid2021 が Reddit に投稿した申し立て「wangid2021:A letter to the Gwent community and CD Projekt RED,」の日本語訳を主体とする解説記事です。また、申し立てに対しリプライされた kolemoen の投稿、コミュニティ・マネージャーの Burza さんの投稿についても翻訳しています。
前提知識
何が起きたのか
2021年9月のシーズン・ドリアードのプロラダーにおいて「五花瞟」というプレイヤーが繰り返し無気力試合を行っていたため、アカウントBAN処分が行われた。(参考:公式サイト)
上記の調査が進み、中国の著名プレイヤーである wangid2021 の試合の 3.7% が不正なもの(対戦相手の無気力試合による勝利)であったと認定された。これにより wangid2021 がシーズン・ドリアードで獲得した MMR の一部が没収され、同様にシーズンの最終順位で得られるクラウンポイントも減少調整されるという処分となった。(参考:公式サイト)
これに対し、wangid2021 は CDPR に対し異議申し立てを行った。CDPR からの回答がなかったため、Reddit 上で申し立ての内容を公開した。
wangid2021 の処分における CDPR の判断
論点
wangid2021 による申し立て
以下は 2021年11月16日に Reddit に投稿された「wangid2021:A letter to the Gwent community and CD Projekt RED,」の日本語訳です。
申し立て投稿に対する kolemoen のリプライ
以下は上記の投稿に対する kolemoen のリプライです。
【追記】今回の件についての Burza さんの投稿
以下は、上記の申し立てを受け、 reddit に投稿された CDPR のコミュニティ・マネージャー Burza さんの投稿「On the topic of the competitive ruling - WangID2021」です。
翻訳後記:日本グウェン党の見解として
私は wangid の説明がそのまま事実だと考えています。彼自身に悪意があったとは考えていません。一方で、 wangid に瑕疵がなかったとも考えていません。
プロラダーに限らず、不正が疑われるようなおかしなプレイがあった場合は注意深くなる必要があります。 wangid の瑕疵は、それを過小評価し、報告する必要はないと判断していたことだと考えています。
追記:結果的に CDPR としては、 wangid が不正に関与した証拠はないと判断しながらも、不正に関与した場合と同等の利益を得ていた事実を問題視し、wangid に対し厳しい処分を行わざるを得なくなったように見えます。 wangid の道義的誠実さを私は疑っていません。しかし、プロラダーの結果に影響を与えた事実は、事実としてとらえなければいけないと考えています。
グウェントに限らず、リアルスポーツを含め、すべてのゲーム、もっと広くとらえると社会契約は、お互いの信義という名の秩序を前提に成り立っています。秩序を維持するためには、お互いが信義を守っていることを確認しあう相互監視が必要になります。
わかりやすい例はゴルフです。ゴルフでは勝敗を決めるスコアは自己申告制です。それを同伴競技者に確認してもらい、大会の公式記録として提出します。そのため、ラウンド中は自分のスコアだけでなく、同伴競技者のスコアも記録していないといけません。
グウェントなどのカードゲームも、大会では運営管理の手間を軽減するため、試合結果をプレイヤー自身が自己申告しているものがあり、ゴルフと共通しています。
私たちが思うより多くのことがこうしたお互いの信義を前提にしており、それ自体は脆弱なものなので、意識していないとその脆弱な部分が偶然または何者かの悪意(当人が善意で行っている場合もある)によって壊されてしまいます。
また、プレイヤーだけでなく観客もゲームの秩序を維持する当事者です。配信者のファンであると、配信者に対して問題提起するのは難しいかもしれませんが、秩序を守るためには声を上げる必要があります。
そして同時に CDPR もゲームの秩序を維持する重要な当事者です。ただルールを適用し、処分を下す裁定者であればいいわけではありません。異常な頻度の降参に対し警告を与えるシステムを作るかどうかは別にして、事後になってから不正の処分を下して終わりというのでは他人事すぎます。
以前もプロラダーにおいて、「インテンショナルドロー」の問題がありました。そのときは CDPR からプロラダー参加者に内々に警告が出たようです。しかし、公にはされておらず、後々になって知られるようになりました。 CDPR には先見的で予防効果のある行動を求めたいと思います。
また、 CDPR が wangid に与えた処分が過大/不十分だったかどうかに関しては、私は妥当だったと考えます。wangid に過剰に不利な裁定となりましたが、CDPR がシーズンが終わってから不正を認知したという状況を勘案するに仕方がない部分があると考えています。こちらに関しては処分の妥当性よりも、繰り返しになりますが、wangid も CDPR も先んじて予防的に行動すべきだったとしかいいようがありません。もちろん wangid も CDPR も、不正プレイヤーの行為に巻き込まれ、気付いたときには遅かったという点で不幸であり、とくに wangid の場合、わずか数クラウンポイントの差で大会出場を逃したというのは痛手であり、個人的に同情します。しかしながら、ペナルティは大会出場権の有無に影響しないように手心を加えるものではありませんし、私は CDPR が大会出場権の有無を加味してペナルティの大きさを設定したとも考えていません。
やや一般的な議論になってしまいますが、テレビゲームの判定はゲームのプログラムによって完全に自動で行われているため、その判定が絶対であり、その範囲内では何をやってもよいと考えがちです。しかし、リアルスポーツでは、自分の反則や自分に有利な誤審に対して自己申告する文化があり、その行為は称賛されます。我々は誰しもが完璧ではないので、間違いは必ず起こります。そのため、そうした間違いに気付き、改善するような振る舞いが求められます。そのような自立し成熟した文化がグウェントでも根付くように私は希望します。
グウェントでも、GwentSlam 大会において、 FreddyBabes の敗戦が濃厚だった試合がありましたが、結果的に相手の回線落ちによって Freddy が勝利してしまいました。このとき Freddy は勝敗結果を自分の負けに訂正するように求めました。そういう行為がゲーム全体の秩序を作り出すと私は思います。
優れたプレイヤーである wangid がプレイ技術以外の面で足元を掬われてしまう結果になったのは不運であり残念です。競技者、観客、開発者、すべての関係者がゲーム全体の秩序を維持しなくてはいけない当事者であるということを再認識すべきだと思います。