『はだしのゲン』を今読むべき理由
今『はだしのゲン』を読んでいる。今読むと分かるのだが、この作品はルポルタージュに近い。そもそもが作者の自伝的作品ではあるが、同時に他者の身に起こったできごとも掛け合わせて一つの物語として編み上げている。ゲンの一家に起こったことは、フィクションではあるけれどもノンフィクションでもある。
だから、なおさら胸に迫るところがある。この本の素晴らしいのは、そういう「虚実皮膜」なところだ。これは単なるフィクションでも、あるいは単なるノンフィクションでも、ここまでの力を持たなかっただろう。虚実のブレンド具合が絶妙で、それが独特の価値を生み出しているのだ。その意味で、この作品は日本のコンテンツ史上に残る名作であるといえよう。数百年後も読み継がれるに違いない。みなさんも、ぜひこの機会に今一度読むことをおすすめしたい。
さて、ここからは『はだしのゲン』を今読むべき理由について考えてみたい。結論からいうと、それは「パニックに際して人間がどのように振る舞うかが分かる」ということだ。
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