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冬のトラウトたちはドコへ?

科学論文を釣り情報へ還元する第33回目の投稿です。

ニジマスやブラウントラウト、イワナなどの河川に住むトラウトたちの冬の生活ってどんな状況なのでしょうか?

そもそも、あまり釣りには出ずらい時期ですから、意外と知られていないことが多いですよね。

そんなトラウトたちの河川における冬の行動について調べてみました。

今回は、フィンランドの河川に住む大型のブラウントラウト(60cmオーバー)の冬の行動に関して報告した論文をご紹介したいと思います。
Roper, B. B., Scarnecchia, D. L., & La Marr, T. J. (1994). Summer distribution of and habitat use by chinook salmon and steelhead within a major basin of the South Umpqua River, Oregon. Transactions of the American Fisheries Society, 123(3), 298-308.

この論文では、フィンランド北部の川に住むブラウントラウトについて、夏から翌年の春までの行動と河川のどこを利用しているのか?を調べています。

今回の研究の結果から、冬の行動は大きく分けて2パターン存在していることがわかりました。

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①淵や落ち込みなど”プール”を冬までに見つけ、そこで越冬する。

②プールまで結氷してしまう場合は、冬場でも長距離移動することがある。

まず、今回のブラウントラウトは、夏場よりも冬場の方がより深く流れも緩い場所に定住していたそうです。

行動のプロセスとしては、夏から秋は急流と流れの緩い場所をまたぐように利用しながら、冬に近づくと徐々に分散していき、最終的に淵や落ち込みなどの深く、流れの緩い場所へ落ち着いたそうです。

つまり、秋までのブラウントラウトは積極的にエサを確保するため流れの速い場所も利用するし、休憩のためプールも利用したりと躍動感のある活発な動きをみせます。

その一方で、越冬の際はエサも限られているため、エネルギー消費を抑えるため、深く流れも緩い場所に定住するというわけですね。

ただし、そういった状況が叶わない場合はどうなるのでしょうか?

寒い地域であれば、河川が結氷し、越冬場所と決めたプールでさえ凍ってしまう場合があります。
(今回のフィンランドの調査地ではマイナス35℃まで達するそうです・・・)

そういった場合は、越冬可能な場所を求め長距離を移動する可能性があり、それもちょっとした流量の増加や気温(水温)の上昇を機会に一気に動き出す可能性があるそうです。

今回はフィンランドのブラウントラウトのお話でしたが、これはサケ科魚類の仲間では共通した行動とも指摘されています。

そうなると、日本国内でも東北以北のトラウトが住む河川でも似たようなことが起きているかもしれませんね。

北海道の友人でも「冬場こそ川に釣り行く!」という方がおり、なかなか良い釣果を上げています。

聞いたところでは、雪のため河川へのアプローチは大変な分、あまり人がいないことや、同じポイントで多少粘っても釣果が期待できる点が良いのだそうです。

冬場は夏場よりプールを丹念にアプローチするのは定石だそうで、あまり活性が高くないトラウトでも、目の前にルアーやエサを通せば必ず食いつくと話していました。この点は今回の研究結果にも合致します。

今回の研究結果のように、ちょっとした気温の上昇や流量の増加が期待できそうなときは、サカナの活性は高まるでしょうから、さらに狙い目になるかもしれませんね。

それではまた次回お会いしましょう。

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