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バーブでもバーブレスでも魚へのダメージは変わらない!?

今回のテーマ:バーブの有無と魚へのダメージ

科学論文を釣り情報へ還元する第4回目の投稿です。

今回ご紹介するのは、下記の論文です。
DuBois, R. B., & Dubielzig, R. R. (2004). Effect of hook type on mortality, trauma, and capture efficiency of wild stream trout caught by angling with spinners. North American Journal of Fisheries Management, 24(2), 609-616.
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1577/M02-171.1

今回はルアーのフック(釣り針)と魚へのダメージに関する研究です。
この論文は、一般的なルアーの一種「スピナー」でマス釣りをした際に、針の種類によって魚へのダメージや釣果が異なるのか?を調べた論文です。

日本のルアーフィッシングでもおなじみで、アメリカ発祥の老舗のルアー、meppsスピナーを使っています。
https://www.mepps.com/products/lures/
このルアーに、シングルフックかトリプルフック、はたまた、バーブ(反し付き)かバーブレス(反しなし)の釣り針をそれぞれ使って、
魚へのダメージ細かく分析し、フッキング率やフッキング後にキャッチできた率(釣果効率)なども調べています。

結論を一言でまとめると、
釣り針に掛かけたニジマス、ブラウントラウト、ブルックトラウトに対して、釣り針の種類によってダメージは変わらないといことでした。
(この3種のマスの2日以内の死亡率は4%未満)
また、バーブレスフックよりもバーブフック、シングルフックよりもトレブルフックの方が釣果効率は高いことがわかりました。

フッキング部位に死亡率は変わる?

針の掛かった部位によって傷が重症化しやすいこともわかっており、
目へフッキングされた場合のマスは54~76%の死亡率とかなり深刻な結果が過去にわかっています。
今回はルアーのフッキングによって目を損傷した個体が全体の10%程度で、このうち半分はもしかすると死亡する可能性あるかもしれません。
(ただし、鰓へのフッキング率は2~10%と低いものの、その後の死亡率は38%とやや高い傾向があります)

針の種類と「フッキング」「バラし」の関係は?

釣果効率に関してもなかなか面白いです(是非、この論文Table5を参照してください)。
以下の2つの指標を確認してみます。
フッキング率=魚のアタック回数(当たりがあった回数)当たりのフッキング回数
釣果効率=魚のアタック回数当たりのキャッチできた(ランディング)回数

フッキング率は、バーブ&トリプルフック>バーブレス&トリプルフック>バーブ&シングルフック>バーブレス&シングルフック
ですが、
釣果効率は、バーブ&トリプルフック>バーブ&シングルフック>バーブレス&トリプルフック≒バーブレス&シングルフック
になりました。

つまり、フッキング後にバラす率が大きく変化することが言えます。
反しがあった方が、バラす率(フッキング後に逃げられる率)は当然低下しますが、
特にバーブレス&トリプルフックの場合、約50%がフッキング後にバラす可能性があることを示しています。

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キャッチからリリースまでの効率は?**

この研究(過去の研究結果でも)で、魚をキャッチした後針を外し終わるまでの時間は約20秒が平均とわかったそうです。
バーブレス&シングルフックが最短で平均15秒、バーブ&シングルフックが最長で平均22秒ということで、さほど変わりません。
筆者も過去研究結果から考えると、どのフックを使っても死亡率を高めるほどの時間ではないと考察しています。
ただ、これって慣れ不慣れの問題もありますから、初心者ほど針を外すのに時間がかかりますよね。

今回のお話は「まさに釣り情報」な科学論文でした。
意外と死亡率が低くて安心した、というのが私の感想です。
私は基本的にどんな釣りでもキャッチ&リリースすることが多いのですが、
釣り上げてからリリースする際に傷つかないように心掛けていても、一抹の不安が残ります。
魚を針にかけて、一瞬でも空気中へ上げるわけですから、そのダメージは仕方ないにしても、
せっかく楽しませてくれた相手ですから、元気に戻ってほしいわけです(まぁ人間のエゴですけどね)。

それでは、また次回お会いしましょう。

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