一級建築士「設計製図の試験」R5本試験考察(TwitterXから再掲載)

R5本試験考察で18万インプレッションと500近いいいね💛、200近いBMをいただいたポストをnoteにて再掲載します。
このポストは唯のいち個人の考察ですが、ポスト内でも触れていますように、試験元の考え方をある程度浮き彫りに出来ているかなって自負はしています。
興味あればぜひご覧ください。
※👇このポストを再掲載しただけです👇※



R5本試験解いてみた
まず、受験生でこの課題が簡単とか言ってる人は、その考えは改めた方がいいと思う
いつも通り、周到に計算され尽くした、設計の根本を問うてくるような課題 初年度や学生は、申し訳ないけど太刀打ち出来なかったろうと推測する

敷地はX48のY35。X48もそうなんだけど、このYの「35」に、試験元の強烈な意志が込められている
HPは2台、歩道付き道路が西で駅に通じ、南は歩道無し道路で管理のが不要……この時点で既に誘導されている
そう、X40のY28へ

敷地を見れば北斜が出るのはわかる。北斜当てた人は、学校のせいにしてもいいんだろうけど、それで気が済むなら、すればってかんじ
図書館のお題で北斜の準備してないのは、明らかに自分が悪い
この試験は、自己責任の権化です

個人的に思うだけだからスルーしてもらって構わないんだけど、試験元のこともっと研究した方がいい
いまの理事長の現役時代の異名が、「建築基準法の鬼」だったらしい
「建築基準法の神様」と呼ぶ向きもあるけど
要は同じこと
法の整備をされてきた方
鬼でも神様でも意味は同じ

この方が理事長になられてから、試験で法令遵守が強烈に意識づけられてきた
それも👆でよくわかる
建築ってのは、安全で無いとダメなんだよ
そして責任。一級建築士が背負う責任は、余りにも重すぎるってこと
丸防ひとつ抜けただけで、亡くなる人がいる
だから簡単には受からせないよ? って、なる

課題に戻すと。
北斜と2Aかつ35mの道斜に気づいた人は、とりあえず階高4mで組み始めたかもしれない
ここにひとつエッセンスがあって、高天井をCH3.7で作れと
この3.7は、よくよく考えていくと、3.7CH+0.5単一ダクト+大梁0.8で階高5mが出る
キリのいい数字ってやつ

で、階高4m通しでいくと、一般(高天井)が3階に来た時に斜線を気にするようになる
あと、気付く人は「北斜が、塔屋ほか有無を言わさず当たる」のと「1/8設備で道斜に塔屋と設備当たる」が脳裏をよぎる
そこで、塔屋(コア)を南端と北端に組めないな、ってなる
つまり、プランの幅が狭まっていく

この試験のセオリーは、「試験始まったら要点用紙を読む」だから、ここに目を通した人はもしかして、「設備が建面の1/8超えるやんけ」と気づいたかもしれない
すると余計に👆踏まえて、コアが中に入ってくる
Y28で組むと、だ
気付くチャンスはあるにはあるが、ここで気付く人もそれほど多く無いだろう

気付くって、なにに?
そう。
Yが28は、危う過ぎるってことに。
Yが28が、自分本位すぎるってことに。
Yが28が、誘導されてるってことに。
Yが28は、躯体の中が、異様に余ることに。

あり得るのが、1階から上への階高が4-4-5で、5は高天井をみる。
あるいは4-4-4で2階に高天井があるスペースを配置して3階で内包することもできる(つまり3階に吹抜けの❌印が見えてくる)
これが最小総階高で、12だ

高天井があるスペースを3階にして(つまり一般が3階)、その部分を北から逃げてもいいけど、とりあえずRFLまで13、もしくは最小総階高で12
これにそれぞれパラペットと1FLの上がり0.7を足して、13.7もしくは12.7
北斜を逃げる離れは、それぞれ4と3

ここでもプランは誘導されている
そう、北の公園によって、だ
北に公園があるのだから、図書室は北に張り付くよう、強烈な意志で誘導されている
読書にとって最高の環境でもある

だから、北にコアが並ぶことはない
図書室が引っ張られるし、北斜が効いてるからそもそもコアを持ってこれないからだ
だから塔屋が屋上に上がって来ない。設備スペースだって、逃げれるだろう✅

で、北のヘリアキが3または4なら、南は4または3になる
12.7だとすると南端に塔屋こないとして、ヘリアキ3mでかわせる
低層階にあり得ない「片コア」という言葉を使って、南端に塔屋が来るなら12+3.5で15.5
これだとヘリアキは4

13.7とするなら南ヘリアキは3。13に3.5塔屋でみるなら16.5で南ヘリアキは4
だから、南北のヘリアキ合計が7、すなわちY35に対して28で躯体を組むと、この南北のヘリアキ余りの7を取り合うことになる
たぶん、北斜逃げ最小値で南を決めていくだろう

Yを28で組みたい気持ちはよくわかる。だって学校がそう教えるんだもの
で、気付く人は気づいていたはずだ
片コアでY28で組むと、ほぼほぼ重複がアウトになることに
24ならまだ話は分かる。でもそれって、危うい重複の分け方をしているはずだ
室内からとか、ホールでのあり得ない分け方とか

というわけで、Yを28で組もうとする人は、ここから中にいく
要求室に少しトラップはあるけど、めちゃくちゃ簡単
少し前にポストしたけど、組むだけなら15分でいける人もいるだろう
組むだけなら、ね
Xが8m×5=40で誘導されていて、Yが7m×4つなんだから、100㎡超の室がいとも簡単におさまる…

中のプランにいったら、すぐに気付くだろう。あらゆる室がいとも簡単におさまってしまうことに
ここは、試験元は、どうでもいいって考えてると思ってる
300㎡だ、600㎡だ、200㎡の高天井だ、100㎡が4つだ、、、
8m×5=40と7m×4=28なら、いくらだって入るし

管理が要求されてないのがサプライズだって言う人もたくさんいるけど、そんなの読み落としてたら勝てないよ
だって当たり前でしょう、事務員不在の図書館なんか存在しないんだもの
配本スペースだってそう
車の寸法がわかってないと、計画できない。車って2.5×5じゃ無いんだよ

で、前置き長くなったけど、ここからが本題

Yを28で組むと、階高がほぼ、4mになる
一部、高天井が決まる階を5にして、一般を全て3.7の高天井から少し下がった、例えばCH3を組んではいけるけど…

つまり、設計条件のトップにある、

『「特に」(2)読書空間は、自然採光を活用する』 をどう考えるのか

今年はこれが本筋と読む

どういうことかと言うと、

「我々(=試験元)は高天井をCH3.7とした。ではあなた方(受験生)は、特に自然採光を活用せよ、とお願いした、読書空間のCHを、どのように考えるのか、提示してください」

と問うてると、読む
つまり、法規から一気に、意匠の試験になる

で、斜線をギリッギリでかわす躯体として平面がY28、階高が4m通し(一部5mだとしても)だと、法規をかわすためだけに躯体を設定したのか? となるわけですよ
そう取られてもおかしく無い
だって読書空間への自然採光の活用っていうのは、実際に図書館に行ってみないと、まず分からないんだから

試験元はここをふんわりさせている
減点もできるし、見逃すこともできる
去年の事務所ビルの最上階直下の件と同じ
屋上庭園部分の矩計を要点で書かせなかったのは、どっちにも転べるようにしたから、で間違いない
あそこを詳細に書かせると、無思慮&思考停止の階高4mを、強制的に減点できてしまうから

すると、セットバックがもっと必要になってくる
たぶん感覚だと、北が5~6、南が4くらい。でもそうなると、Xの40に対してYが25~26になるから、中が苦しくなる

だけどね、、、

ここを乗り越えると、全て上手くいくようになってる
僕はXを8m×5=40、Yを北から7-6-6-6の25で組んだけど、斜線から解放されて、階高を5m取れるようになった
するとCHが楽に3m以上取れる
冒頭書いたけど、高天井もおさまる
なんなら、3階に吹き抜ける

つまり、無駄な空間・躯体が出現しない

セットバックさせるということは、圧迫感を低減するということ
そしてセットバックするということは、 自分本位で無くなるということ
利他とも言う
自分というのは、設計者のこと
中を苦しむということは、設計思想が利用者へと向くということ
だから、よい建物ができる

👆これを証明するのが、40×28で組むと1,120㎡を3層で3,360㎡、仮に高天井を吹き抜いたとして−200≒3,160㎡という事実
これだと余りにも無駄なスペースが海のようにできるはず
しかも塔屋を気にするから、プランの幅が狭くなる

逆に40×25~26くらいで組むと、斜線を気にしないでいいから、コアがどこへでも動く
プランは極めて有機的になる
余計な庭園なんか、出現しない
要求されてもいない庭園なんか、「僕はプランが下手です」って言ってるようなもの

何より、重複の心配をしないで良いところにコアが置ける
そして今年、気付く人は気付いていただろうけど、コアが動くと、裏動線が自然に取れる

あのね、考えてみてほしい
広大な公園に対して、たとえばヘリアキ2mだとして、公園と課題計画敷地の敷地境界線から1.65mでRCの柱が8mとかの高さで聳え立つさまを
恐怖でしかないと、僕は思うけど

設計製図に正解なんて無い
ここまで長々書いてきたけど、個人の考察を述べたまで
でもね こういう考え方が、いまの試験元、ひいては理事長の考え方なんだろうと、個人的には確信してる

個人的には、階高4m勢に減点があって然るべきだと思っているけど、たぶんそうはならない
その高い意匠レベルの競争になる前に、相当数が

北斜
道斜
重複
防火抜け
階段不成立

で脱落していく
だって理事長が「建築基準法の神様」なんだもの
法規で落とされるさ

特に片コアで組んで、学校の課題の重複の分け方に慣れた図面は、ものすごく厳しくみられても仕方ないかなとは思う

片コアはね、もう一つ。

去年の事務所ビルをそのまま引きずってると思われても仕方ない
組み易いんだもの、あれ
そもそも低層階に、「~コア」なんて言葉は、存在しないんじゃ無いかな

試験元は、3年連続の基準階(高齢者施設もそう言って良いかと思う)を経て、久しぶりのゾーニングタイプで、一級建築士の王道である図書館を低層階で持ってきて、斜線を当てにきた
その斜線を、苦しみながらかわしたのちは、「意匠とはなにか」という強烈な問いに直面する

その意匠の問いかけは、とてもとても、学校の勉強だけでは回答できないような、だけれども、自分の頭で「建築とはなにか」を考えることのできる人には、容易い問いかけでもあったと思う
容易い問いかけだけれども、だからこそ組むのは難しい

「600㎡、300㎡の図書室が、事務所ビルのCHと同じで良いわけが無いんじゃなかろうか」と思える人には、簡単で、そして難しい課題だったと思う

そう思えない人には、ひたすら簡単な課題だったと思います
一瞬で解けたはず
そして感想は、こうだ
「今年やけに簡単だな」

課題発表の時に僕は
「図書館なんて全く関係なくて、動線とゾーニングを見てくるだろう」って書いたけど、訂正・撤回します

こんなにまでよく考えられた、まるで思考の斜め上をいく課題がくるとは思わなかった

蔵書数についても、学科を合格した知識をそのまんま持って来ないと答えられない、えげつないものだった
試験元は、学科の知識を製図に活かしてね、ってずーっと投げかけてる
それは汲んであげないと、いまのこの設計製図の試験に合格するのは、なかなか難しいと思う

最後に。
試験元は、やっぱり、建築を愛する人に、一級建築士になってほしいと思ってると思う
「法規の鬼」が理事長として居る組織が作る課題には、一見鬼だけれども、「建築を愛してくれよ」ってメッセージがそこかしこに散りばめられている

僕はR1延期組の合格者なので、現理事長の最初の試験でもある
ここまで書いてきて、別に現理事長を好きだとかそういうことを言うつもりはないけれども、R1で「運良く」合格できて、よかったと思ってる
ああ、一級建築士になったんだな、って

解いてて感動すら覚えた課題だった
難しいけど簡単で、簡単だけど難しい
こういう課題を、よく作れるよなって心底思う
試験元は本当に、すごいなって思う
つらつら長々と書いてきたけど、R5本試験の個人的考察でした

※2023年10月11日午前2:33にX(旧Twitter)にポストしたものを掲載しました。


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