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渋谷書店万引対策共同プロジェクト、2書店で被害が大幅に減少。1年間の取り組みを総括

東京・渋谷の3書店において、全国で初めて顔認証システムを導入した万引き防止に取り組む渋谷書店万引対策共同プロジェクトの事務局はこのほど、2019年7月30日から1年間の取り組みを総括した。

それによると、参加3書店のうち、1店で万引き被害によるロス率が前年比で半減し、1店では被害金額が約6割に減少するなど、万引き防止の効果が得られたことがわかった。

従業員の意識向上で被害が減少

万引き被害が減少した理由について、参加書店は「メディアに取り上げられ、スタッフがこれまで以上に万引を警戒した」「従業員の理解により、お客様へのお声がけが徹底できた」「目線を送るだけでも抑止力となりえた」などと分析している。

同プロジェクトは、東京・渋谷の啓文堂書店渋谷店、大盛堂書店、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店の3書店が顔認証システムと連動する防犯カメラを導入し、万引き犯の可能性のある人物を特定して画像を共有。特定した人物が来店した際には現場書店員に注意を促し、未然に万引きを防ぐという取り組み。

3書店と全国万引犯罪防止機構の関係者で組織。個人情報やプライバシー保護の観点から、外部の専門的知識を有する消費者団体、学者、弁護士などで構成する「プロジェクト運用検証委員会」を設置して、運営にあたっている。

渋谷プロジェクト組織図(消費者団体・法学部教授版)190623 190707

画像登録人数は1年で40人

3店が1年間で万引き犯と特定して登録・共有した人数は40人。当該人物による万引き行為を確認した件数は53件だった。53件のうち、51件が単独犯。残りが2人組による犯行と推測している。また、53件中、13件は同一人物が登録当該店やそれ以外の店舗に再来店していた。53件のうち、万引き抑止につながったのは7件、万引き犯として捕捉したのは7件だった。

総括期間中には、新型コロナウイルス感染症拡大防止のためマスクの着用が常態化したため、顔認識システムで検知できなかったケースが数件あったという。また、登録者が来店したのを確認していたが、万引きを防止できなかったこともあった。

再来店時の犯行抑止など取り組み強化へ

こうした課題を踏まえて、2年目はシステム面ではマスク着用の対象者の感知能力向上のための認証機能を改善していく。参加店では①ビデオカメラ登録映像のチェック方式の研究によって登録数を増やし、敢行者を対象として再来店時の犯行を抑止する、②レジ清算済商品を手に持ったまま退店せず店内に残っているお客様の動向に注視し、誤認を防ぐため一定の方法を構築する等、スタッフ間で購入済の旨を伝達することを徹底する、③在庫調査の範囲を拡大し、被害の早期発見を期す、④社員間のコミュニケーションを深め、入店時の接客のレベルアップを図る――に取り組む。

 同プロジェクト事務局は「各参加店は、今回のプロジェクトに参加したことで、万引きの実態が詳細に把握でき、また、従業員の万引対策の意識向上が見られることなどから、万引対策に手ごたえを感じている。また、心配していた様々な抗議や嫌がらせもほとんどなかったこともあり、より一層、社会一般の理解を得ながら、このプロジェクトに継続して参加し、より多くの成果を得たいと考えている。当プロジェクトはその意向に沿って、2 年目も参画者全員が今後も最大限の努力を惜しまず活動していきたい」とコメントしている。

同プロジェクト事務局が発表したリリースは次の通り。
渋谷書店万引対策共同プロジェクトの開始後1年間のご報告

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