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ベルリンフィルのデジタル戦略について考える

こんにちは。ozkといいます。

私はキャリア10年超の勤め人で、こちらのnoteでは言語・旅行・海外調査などをテーマに発信しています。

今回は、音楽業界におけるデジタライゼーションに関連したテーマで投稿します。

ベルリンフィル「デジタル・コンサートホール」

ベルリン・フィルハーモニーは、1882年に創立され年間動員数20万人超を誇る有名な管弦楽団です。ベルリン・フィルの映像配信サービス「デジタル・コンサートホール(DCH)」では、ベルリン・フィルのコンサート映像をライブ中継やオンデマンド再生でテレビ、パソコン、スマホといった各種機器で視聴することができます。

ベルリン・フィルはコンサート以外に、各種メディアを通じて演奏を発信していますが、テレビ放送やCD売上げが減る中で、メディアの変化を感じ取り、10年以上前の2008年に、ディストリビューターを介さずに自ら発信者としてメディア事業を展開する子会社「ベルリン・フィル・メディア」を設立しました。同社は、収録、編集からWEBサイトでの配信まで自らコントロールできる仕組みを確立しています。

当時はストリーミングというメディア自体がクオリティが低く、まだメジャーな存在ではなかった頃、より多くの人に音楽を届けたいという信念と先見性をもとに、新しい技術に積極的に取り組んできました。

クラシック音楽の伝統的な先進地域である欧州も例外ではなく若者のクラシック離れが進む中で、今は興味を抱いていない潜在顧客層にリーチするために、わかりやすく情報を提供して、人々が自ら情報を求めて能動的にコンテンツを探し始めるように、クラシック音楽の啓蒙活動を進めてきました。

マーケティングのフレームワークAIDMAで捉えると認知段階のAttention(注意)からInterest(関心)へ引き上げるための活動に注力してきたものと言えると思います。そして、この10年間で100万人の登録者、40,000人の有料登録者を得ており、ダイレクトにリーチできるようになっています。一人あたり月額20ドルと想定すると日本円で年間約10億円を超える収益につながっています。

デジタル投資戦略のひとつの在り方

DCHは、10年前の取り組み当初は、周囲から「クレイジーだ」と言われており、ビジネス的にサステナブルな状態になるまでに6年もかかりました。同社のトップによると「そもそもDCHは利益を追求するためのものではなく、クラシックという芸術を広めたいという芸術家による活動」であると強調しています。

増えた収入はコンテンツの制作に投入していくという考えであり、黒字経営は保ちつつもDCH自体で収益を稼いでいくというスタンスではありません。
投資対効果よりも、社会貢献ブランディング、そして顧客との接点の獲得に重きを置いた姿勢だったのではないかと思います。

デジタル投資を決めるうえでは、「なぜこの投資が必要なのか」という観点で理屈を構築していくと思い切った投資に踏み切りにくいのではないかと考えます。むしろ自社のパーパス(存在意義)やビジョンに照らし合わせて「なぜこの投資をしないのか」と自らに問いかけてみることも有効なのではないでしょうか。

おわりに

コロナ禍で日本におけるデジタル化の遅れが露わになっていますが、こうした海外の音楽業界におけるデジタル化の取り組みがひとつの参考になりうるように感じます。ベルリンフィルのように、常に新たなことに取り組んでいくというスタンスが求められるように思います。

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#オーケストラ #デジタル化

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