運命の人_真実の愛_

運命の人。真実の愛。

昨日、Amazonプライムの『バチェラー・ジャパン シーズン3』最終回を観た。

その晩は、なかなか寝付けなかった。

消化不良のまま、今日も引っかかっているあの結末について、なるべく中身に触れずに書いてみたい(内容をご覧になりたい方は、こちらからどうぞ。お勧めはしないですが)。

まずはじめに、バチェラーのした選択について、僕自身は肯定も否定もできない(そもそも他人の話だ)。

また、結果自体は、番組をはじめから観続けてきた者として納得のいくものだった。バチェラー同様、僕も二人の間に「運命」と言いたくなるような特別ななにかを観ていたからだ(だから応援していた)。

にもかかわらず、僕は寝付けない夜を過ごしたし、あの結末で気持ちよく終われた人は、誰一人としていないんじゃないかと想像する。

気になってたどった SNS には、バチェラーとお相手への批判があふれていた。

なぜ、こんなことになってしまったのか。

それは「筋が通っていなかったから」ではないかと僕は思う。

バチェラーの最後の選択は、これまで番組を観てきた視聴者や、いっしょに作ってきたスタッフ、なにより、旅を共にした女性たちとの間で築いてきた人間関係をないがしろにしたのだと思う。

具体的には、番組を通じて強調されてきた、渡すバラの重みと渡されなかった女性たちの痛みが軽く扱われたように見えた。その向こうにあるご家族の心情も。

その結果、バチェラーがこれまで繰り返してきた「覚悟」や「真実の愛」といった言葉が、最終回では驚くほど薄っぺらなものに感じられてしまった。

そして、バチェラー自身が大事にしてきたはずの正直さも、女性たちへの誠実さも、最後に選んだお相手をも守れない状況にしてしまったのだと思う。

僕は今回のバチェラーを真摯な人だと思っていたし、いまでもそう思っている。

シーズン全般にわたって、彼の行き届いた配慮や要所要所での発言は女性たちの心をやわらげてきたし、ホストとして素晴らしいと思った。一方、女性たちも過度にバラエティに寄らず、理知的で好ましかった。

それが最後の、たった一つの選択で反転してしまった。

「やっていいことと悪いことがある」というスジを、バチェラーは逸脱したのだと思う。それが、周囲からの強い批判を招くことになった。

でも、冒頭書いたように、僕自身はそのことをもってバチェラーやお相手を批判する気にはとてもなれないし、批判している人たちに落ち着いてほしいとすら思っている。

なぜなら、その逸脱をさせたのは「好きという気持ち」だったからだ。

MCの今田耕司さんが「だって好きなんやもん!」と叫んだけれど、そういう逸脱をさせるのが「好きという気持ち」なのだと思う。

「好きという気持ち」に乗っかって人を傷つけたり、どうしょうもないことをしたりせずにいられた人がどれほどいるだろう。誰にとっても「恋は盲目」のはずだ。

ましてこの番組では、二十人の女性と共同生活をして、それぞれと心を通わせながら、毎回、誰かとお別れをしなければならない。

豪華すぎるデートも、旅の中での女性たちのせめぎ合いも、強制的に決断を迫られるバチェラーの葛藤も、日常にはないものだ。不自然といってもいい。バラエティとしては面白く観られるけれど、実際体験したら、とてつもないストレスではないかと思う。

そのような極限状態において「好きという気持ち」が見えなくなったり、暴発したりしたとして、誰がその人たちを責められよう。

でも、だからといって、バチェラーの行動が放免されるわけでもない。
スジを違えたことの代償は、本人が背負っていかなければならない。

ただ、それだけのことだ。

「運命」というのは、誰かと苦労を共にして「命を運ぶこと」ではないかと個人的には思う。

それは番組本編のようにドラマチックなことばかりではないし、どちらかというと地味な日常の繰り返しかもしれない。

でも、その中で育まれていくものが確実にある。

その意味で、最終回のあの最低な場所からバチェラーとお相手は「命を運ぶこと」をはじめられたのではないかと思う。大変な道だが、その道をゆく意味ではぴったりのお相手だとも思う。

ぜひ、よい関係を築いていってほしい。
赤の他人ではあるが、心から応援している。

そして、「運命」とともに番組のもう一つのキーワードであった「真実の愛」は、この逸脱を犯した二人を見守ったMCのみなさんや旅を共にした女性たちの中にあったのではないかと思う。

特に、誰もが納得するであろう一人の女性の中に、それは確かに輝いていた。

たぶん、あれはたくさんの痛みを知る人がもつ光だ。

それに気づけなかったことが、バチェラーの「真実の愛」を探す「運命」のはじまりだったのかもしれない。

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