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奥さんのすなるアルコールインクアートを夫の僕もしてみむとてすなり。

男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてすなり

と書いたのは、『土佐日記』の紀貫之だが、最近の僕はそんなノリで奥さんのしているアルコールインクアートというのをしている。

アルコールインクアートというのは、コピックというペンのインクに高濃度のアルコールを混ぜて、その液体をドライヤーなどで飛ばしてつくるアートのことだ。

インクの色の出かたもドライヤーで吹き飛ばしたときの液の流れ方もコントロールしきれないがゆえに、そこで起きるハプニングが意外な表現を生み出す。

これが一番はじめにできた一枚。タイトルは「魚もおよぐ天国風呂」。
黒のベースに色のついたインクを垂らすときれいなマーブル模様ができて面白かった。面白がっているうちに、熱帯魚の水槽のような一枚に仕上がっていった。

翌日はこんなのができた。タイトルは「アタック25」。
もともとは黒いバックに金色をふんだんに使った作品にしたかったが、まったくコントロールが効かず、仕方がないので他の色を入れたらば、アタック25のように次々と色が変わってしまった。藤城清治の影絵のような感じも出てきて、いよいよ収拾がつかなくなったが、これはこれでよしとした。

三日目になると、いよいよゲージュツがバクハツしはじめて、こんなのが現れた。タイトルは「駆けつけるセーラー戦士たち」。霊魂のように飛び散っている水色は、ドライヤーをしたまま、アルコールを垂らしたときにできたもの。その飛び散りが面白く、色の出かたがセーラームーンに似ていたので、この名前になった。

やればやるほど、他の人のアルコールインクアートとは全然違うものになっていて面白い。毎回ハプニングについていきながら作っているので、自分の中のなにが表現されているのかもよくわからない。

でも、やってみてよかった。奥さんのすなるなにがしを夫の僕もしてみむとてすなりは、発見が多くていい。そして、横で嬉々としてやっている様子をみて、奥さんも自由に創作ができたのだとか。

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澤 祐典
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