フィンランド3

フィンランドのこと。

 きのう、近所の大学で開かれた
 「フィンランドのこと」
 という講演を聞きにいった。

 フィンランドは、行ったことがないのにずっと親しみを感じていた国で、元をたどれば、小学生のとき、早朝放送されていた『ムーミン』にハマったことに端を発する。

 好きなキャラクターはスナフキン。
 一時期は、携帯ケースもホーム画面もスナフキンだったし「スナフキンのように生きたい」と周りに言っていたこともある。(そして、それは現在ある程度かなっていると思う。)

 で、講演会の話に戻ると、スピーカーは森下圭子さん。

 ヘルシンキの森から風が吹いてくるようなお話のしかたで、聞いているだけで気持ちがよかった。

 つかう言葉も詩的で、「刺さる」ことはないけれど、きれいな落ち葉を拾うようについ書き留めたくなるものばかり。

 気づけば、ぼくのノートはこんな落書きとメモでいっぱいになっていた。

 その講演の中で何度も言っていたし、印象にも残ったのが

自分が「いい」と思うことをする。

という言葉。

 フィンランドのこどもたちは幼い頃から「あなたはどうしたい?」と尋ねられて育つ。

 学校の先生たちも「あなたにとって一番いいと思う教え方をしてください」と言われる。

 そのような風土に育まれることで、フィンランドのひとたちは「自分が自分であること」にプライドをもつ。

 そして、自分が「いい」と思うことをずんずん深化させていく。

 だから、まわりと自分を比較して落ち込んだりすることが驚くほど少ないのだとか。

 『ムーミン』という物語にも、そんな雰囲気がにじみ出ているという。

 このお話にヒーローはいない。
 登場するなかまたちは、みなどこか欠けているが、そういう自分に対して真摯だ。

 森下さんは、そのことを木にもたとえていた。

 木はまっすぐ伸びようとするが、雨風にさらされてぐにゃりと曲がってしまう。

 どうしてもこのようになってしまう、私。でも、それはそれで愛おしいのだと。

 そんなムーミン谷のなかまたちの冒険の中に、なにかを勝ち取るお話は少ない。

 彼らの冒険は、いつも自分が自分であることのこっけいさに満ちていて、けれど最後はなんとなく、みんながしあわせになっているという。

 お金があってもなくても、能力があってもなくても、なにがあってもなくても自分が「いい」と思った道を進む。

 その旅はこっけいだけど愛おしくて、最後はなんとなくしあわせになる。

 そんな人生の歩み方がまわりから了解され、尊重されているフィンランドって、いいなあ。と心から思った。

 行ったことがないからいい方に思い過ぎかもしれないけれど、お話を聞きながらフィンランドに行きたい、住みたいという気持ちがことん、と揺り動かされた。

 決して「いくぞー!」とガッツがふつふつ湧いたりはしない。

 フィンランドの、そういう押し方をしないところが、ぼくはすきだ。

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