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2010年代アニメの総括、そして観ておくべき10年代アニメの話

『鉄腕アトム』が放送を開始してテレビアニメの歴史が始まった1960年代。

『宇宙戦艦ヤマト』が日本にSFブームをもたらしたと言われる1970年代。

 ジブリが誕生したり、『機動戦士ガンダム』でロボットモノのアニメが大量に作られたり“おたく”という言葉も生まれた1980年代。

『新世紀エヴァンゲリオン』が世紀末の暗い雰囲気とマッチしセカイ系ブームが巻き起こった1990年代。

 ネット文化の普及に『涼宮ハルヒの憂鬱』が乗っかる形でバズり、オタク界隈に新たな流れを生み出した2000年代。

 …という風に、アニメ業界というのはだいたい10年毎に大ブレイクする作品が生まれ流れを変えるという感じでここまで来ております。

 しかし00年代ですら既に一昔。10年代どころかもう20年代に突入している。

 って考えた時に、「果たして2010年代のアニメ業界ってどんな流れだったんだろう?」とふと思ったんですよね。

・アニメにとっての2010年代とは?

 今日はそういった事をつらつら書いていこうと思っています。

 まず2010年代の代表作ってなんじゃろな?と思って考えてみたんですが、多分10年代の潮目を変えたのはこの作品なんですよ。


君の名は。


 まあ多分これは間違いなくて、まずジブリでもない作品が社会現象になるほどの大ヒットを飛ばし、その後『君の名は。』と似たようなボーイミーツガール的なアニメ映画が大量に作られた。

 更に監督の新海誠さんが40代と若かった事もあり、いよいよ宮崎駿監督の後継者が現れたみたいな空気にもなった。

 アニメ業界の世代交代がはっきりと見えてきたのが10年代なんですよね。

 一方でテレビアニメはどうだったのか?と考えると、1つの作品が大バズりする代わりに多様化してきた時代だったのではないかと、僕はそう感じます。

 2010年代って、大きく分けて3つのジャンルのアニメが流行った年代だと思ってるんですよね。

 まず1つ目はこちら。

①きらら系アニメ

 きらら系というのはマンガ雑誌まんがタイムきららに載ってるような、女の子達の日常とか何かしらをやってる様を作品にしたアニメの事です。まあ僕の造語なんですが(笑)

 きらら原作でなくても。2010年代って女の子が4~5人で何かをやるアニメがめちゃくちゃ作られましたよね。男物の趣味を女の子達にやらせてみたり、美少女版サザエさんみたいに女の子達の何でもない日常をアニメにしてみたり…。

 元々日常系アニメというのは2000年代からありまして、2002年に放送された『あずまんが大王』がその走りになるのかな?あときららに連載されていた作品で言えば『ひだまりスケッチ』とか、別に2010年代から流行ったというわけではないのですが。

 ただ10年代に入ってから女の子達にやらせる事の幅が格段に広がっていったと思ってまして。先程も書きましたが男物の趣味を女の子にやらせるアニメが多かった事(笑)例えば女の子達を選手に乗せた『ガールズアンドパンツァー』は2012年の作品ですし、サムネにもした『宇宙よりも遠い場所』(2018年)は女の子達が南極に行く話。

 アニメの女の子達にやれない事は何もない時代に突入したわけです(笑)

宇宙よりも遠い場所



 僕が観ておくべき10年代のアニメと感じる最初の作品はこちらですね。きらら系アニメを最大限進化させた作品だと思っておりまして。

 何か大きい事をしたいが勇気がなく実行できない主人公・玉木マリがある日、同級生の小淵沢報瀬が落とした現金100万円を拾うところから物語が始まります。

 報瀬は数年前に南極で行方不明になった母親に会いに行くため、友達も作らずバイトで金を貯めたり母が所属していた民間の南極調査隊に連れていって貰おうとする。

 その行動に感銘を受けたマリが行動を共にする…というお話なんですが、この話、とにかくキャラクターの陰をエンタメぎりぎりのところで描くのが上手いんですよね。

 きらら系アニメの弱点ってのがとにかくキャラクターの掘り下げが少ないところだと思ってまして。個人的にはあんまり好きではないジャンルなのですが、『宇宙よりも遠い場所』はオリジナルアニメであり監督がいしづかあつこという女性の方というのもあるのか、キャラクターのドロドロした部分も臆することなく描いている。

 例えばマリの親友の高橋めぐみという眼鏡っ娘キャラがいるのですが、少しおバカなマリのツッコミ役だと一見そう思える立場で最初登場するんですよ。

 幼稚園からの幼馴染みで、何をやるにもダメなマリにやれやれといった様子でずっと付き合ってあげていためぐみ。

 1話の最初のシーンで学校をサボって東京へ行こうとするマリに協力してやったり、その計画にビビって学校に来てしまったマリに呆れてやったりと、常にマリより上の立場、コントロールする立場で出てくる。

 ダメなマリがしっかり者のめぐみに依存しているように思えるシーンをちゃんと描いているわけです。

 しかしマリが報瀬と出会い、南極へ行く決意を固め本格的に動き出すと、なぜかめぐみはマリの決意とは反対方向に誘導しようとする。この行動おかしいんですよ。「何か大きい事をしたい」という漠然とした決意を応援してやるような素振りを1話ではしていたはずなのに、回が進むごとに「怪しい」「騙されてるんじゃないの?」とマリを止めるような発言をしきりにする。

 しかもそれを「親友を心配しているんだろう」と思えるくらいさりげなく入れてくるので、最初観ていると気付かない。5話で南極へ行くとなったところで今度はマリに「悪い噂が流れている」事を伝えるんですが、そこへ合流した報瀬と三宅日向の耳に入り、激怒する報瀬にめぐみは動揺する。

 その後4人でカラオケに行くことになるのですが、そこでめぐみはマリに自分とは別の居場所がある事を認識してしまうんですね。

 5話までマリにはめぐみ以外にも報瀬などいろんなキャラと何かやるシーンがあるのですが、めぐみは決まってマリとしかいないんですよ。

 5話の冒頭でめぐみが1人で喫茶店にいるシーンが描かれてるのですが、本来そんなものを描く必要のないシーンをあえて入れている。

 つまりマリがめぐみに依存していたのではなく、めぐみがマリに依存していたのだというのが徐々にわかってくる。

 そして南極出発当日の早朝、家を出たマリを待ち構えていためぐみが絶交宣言をするのですが--そこから先は自分の目で確かめてください(笑)

 あとメインキャラの1人で民間調査隊のリポーターとして船に乗る事になった子役女優の白石結月が子供の頃から芸能界の仕事ばかりしていて友達の作り方がわからず突飛な行動に出てしまったり、昔の友人を許さなければいけないのかと悩む日向の葛藤であったり、母親はもういないんだと心のどこかでわかっていながらそれでも追い求めてしまう報瀬であったりと、キャラ1人1人の掘り下げが本当に凄いんですよね。

 こういう名作を生み出しただけでもきらら系の価値はあったと思います。

 続いて2つ目。

②アイドル系アニメ

 2010年代はアイドル系アニメの戦国時代といっても過言ではありませんでした。

 これも昔からあった美少女アニメ、ハーレムアニメの派生系だと思ってるのですが、男を主人公にして何人もの女の子を出す形から恋愛要素を抜いてアイドルアニメへと進化していったという認識を持ってます。

 アニメというよりソシャゲといってもいいかもしれませんが、代表的なのが『THE IDOLM@STER』と『ラブライブ!』ですかね。女性向けでも『うたのプリンスさまっ』とかが流行って、男女どちらの層にもウケるコンテンツとして重宝された印象があります。

 また『艦隊これくしょん』や今流行りの『ウマ娘』みたいな、何かを擬人化させて美少女にした作品もこれに含まれるのかなと。

 美少女キャラクターを大量に出して、それぞれ推しを選んでもらう。恋愛要素を省く代わりに二次創作でオタクに物語とは関係ない形で勝手に恋愛話を作ってもらう。

 こうした流れが生まれたのも2010年代の特徴だったのかなと感じますね。

 アイドル系アニメでオススメなのはこちらの作品です。

THE IDOLM@STER


 断っておきますが、僕はアイマスオタクというわけではございません。

 ゲームもソシャゲの方も遊んだ事はありますがあんまりアイドル育成ゲームみたいなものにあんまりハマれず投げ出してしまいましたし、特に推しというのもいない。

 この作品の良いところは、原作にあまりストーリーらしいストーリーがないのを良いことにところどころで実験的な作りになっている点です。

 まず最初の1話でいきなり偽ドキュメンタリーから始まります。主人公であるプロデューサーは一切出てこず、カメラに向かってキャラクターが1人1人喋っていく事で話が進行していく。

 そうする事で余計な情報をシャットアウトしつつ面白くキャラクターの紹介ができていて、とても有能なんですよ。

 更に僕の一番好きな回が15話の『みんな揃って、生放送ですよ生放送!』。この回ではなんとキャラクター達の冠番組のそのままアニメにするという、なんともおかしな事をしてるんですよね(笑)

 ストーリーはなく、本当に普通のバラエティーのようにいろんなコーナーをやっていく。しかもそれがちゃんと面白いんですよ。

 アイマスって、 まあ原作があってないようなものじゃないですか。設定があって、キャラクターがいるんですがちゃんとしたストーリーはない。つまりほぼほぼオリジナルストーリーで作れちゃうんですよね。

 その原作はあってないようなものというのを上手く利用して実験的な回を作り、それだけではなくちゃんとメインストーリーも作りつつ感動させるとこではさせ、最後はちゃんと大団円で終わらせている。

 2010年代の隠れた名作なんじゃないかと僕は思っております。

 最後はまあこれでしょう。

③なろう系アニメ

 小説家になろうという投稿サイトから生まれた異世界転生モノの作品の数々が“なろう系”と呼ばれております。

 内容はだいたい主人公が死んで、異世界に転生する。そこでチート能力を使ったり現実世界の技術を駆使して活躍するというのがおおざっぱなストーリー展開ですね。

 これもまた派生みたいなもんで、元々は90年代にファンタジーブームみたいなのが起きていた。その頃には転生モノというのはほとんどなかった。

 元祖と言えるのが『ゼロの使い魔』ですかね。2000年代にヒットした作品の1つでありまして、声優の釘宮理恵さんはこの作品がきっかけでツンデレキャラの代表的な声優になりました。

  またこの作品も原作は小説であり、まさになろう系の元祖と言えるでしょう。

ゼロの使い魔



 2010年代になって異世界転生ブームが起こり、各クール1本くらいは常時作られる状態になったわけですが、個人的にこれという作品はないんですよね。

 ブームのきっかけになった『ソードアート・オンライン』の1話とかは本当にアニメ史に残るべき神回ですし、あと以前noteで『盾の勇者の成り上がり』というアニメを紹介させていただいたのですが、絶対これを観ろ!と思えるものは正直ないですね。

『盾の勇者の成り上がり』を観て思い出したファンタジーアニメへの憧れの話|二岡せきぬ 

 ただ盾の勇者でもそうですし、『Re:ゼロから始まる異世界生活』であるとか、『この素晴らしき世界に祝福を!』とか面白い作品はいくつもあるので、個人個人で気になったのを観てみるのがなろう系を楽しむ最適解なのかなとも思います。

 まあつまり2010年代はきらら系、アイドル系、なろう系などのブームが細分化していくつも起こり、社会現象になったのは映画である『君の名は。』だけだった印象。あと『けものフレンズ』が一時期かなり話題になりましたが、制作側のやらかしで覚めさせてしまったのが残念でしたね。

 で2020年には『鬼滅の刃』が大流行したわけですが、流行り方がネットでの評判からだったということで、今の時代はネットによってファンがブームの導き手となりブレイクさせる時代が本格的に来たと言えますね。

 もちろんガンダムでもエヴァでもハルヒでも、ファンに見つかる事でブレイクに繋がるという形は同じなのですが、口コミでの流行りからネットを通してよりそれが表面化されていくのではないかと予想します。

 こうして僕みたいに作品を語る人というのも爆発的に増えましたし、これまでの時代よりも一層ファン1人1人の声というか、推すという行為自体がカルチャーみたいになっていくのかなあ。

 時代の流れというのは前時代にすでに仕込まれているものなので、この細分化した流れに次世代のヒントはあるんでしょうね。

 今回は以上になります。本当はまだまだオススメしたい作品がいっぱいあったのですが(笑)話が長くなってしまいそうなのでまた今度書かせていただこうと思います。

 今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!









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