『映画大好きポンポさん』感想(※ネタバレ注意)

6月4日公開のアニメ映画『映画大好きポンポさん』を観た。上映館が近くになかったためこの状況下で行けるかどうかかなり微妙だったが、偶然が重なった結果観に行くことができたので、感想と考えさせられたことを書き残しておこうという次第である。


本編の感想

さて、記事タイトルにもネタバレ注意の文字を入れたのでこれを読んでいる多くの人は既に本編を鑑賞済であると(勝手に)思っているが、一応内容について。

まず、公式サイトのリンクを貼っておく。

『映画大好きポンポさん』という作品は、一言で言うなら「映画オタクが映画を作る映画」だ。実際、わたしが観る前に仕入れていた前情報はこの程度で、原作に触れていないのはもちろん本予告すら見ることなく観に行った。その代わりというわけではないが、本作の監督を務める平尾隆之氏の前作である『魔女っこ姉妹のヨヨとネネ』は見た。こちらも素晴らしい作品だったので、この場でおすすめしておく。

さて、ここから本格的なネタバレとなっていくわけだが、その前に買ったものの話をさせてほしい。
今回わたしが買ったのはパンフレット、万年日めくりカレンダー、サントラの3つだが、このカレンダーがかなり良かった。映画本編の内容がかなり詰め込まれているためめくってるだけで質よく思い返せる。これは買えてよかった。買っていない人や売り切れて買えなかった人も買ってほしい。公式サイトのグッズページに公式通販のリンクがあるので、ぜひこちらから。

さて、まず最初にだが、中だるみすることがなかったのは素晴らしかった。各キャラにフォーカスを当てて多方面から作品世界を描く序盤、作品内作品が光る中盤、そして演出と挿入歌で最高な終盤……90分という限られた時間で描かれただけに内容が詰め込まれており、全編を通して「楽しい」と感じた。これは個人的にとても重要なところで、作中のセリフを引用するならば「2時間以上の集中を観客に求めるのは現代の娯楽としてやさしくない」というわけだ。まあわたしは楽しいものが続くのならば2時間でも余裕だが、やはりこのくらいがちょうどいい。

そして個人的に「好きだな……」と思ったのはジーンとナタリーの絡みだ。この2人はこの作品においてもっとも似た2人といってもいいだろう。共に“青春”には目も向けずに夢のために全てを捧げた2人だ。
ジーンは監督として、ナタリーは女優としてお互い新人の身である2人の、お互い影響し、され合う関係が非常に良い。わたしが18歳であり感情移入しやすかったということもあるかもしれないが、この2人のシーンはだいたい全部好きだな……と感じた。
特にナタリーはキャラクター単体としてもとても魅力的に見えて、作品内で一番お気に入りのキャラとなった。

そして、終盤である。ジーンがカットを“斬る”演出、そして立て続けに流れる挿入歌……ずっと興奮しっぱなしだった。
挿入歌が複数ある作品は『君の名は。』や『天気の子』、『HELLO WORLD』などがあるが、これらはまず中盤あたりで1曲流すスタイルだ。しかし、あえて終盤に立て続けに2曲。これには良い意味で裏切られた。
そしてラストで回収された「90分」。まさか本編まで合わせてくるとは……流石に驚いた。できることならこれを踏まえた上でもう一度観たいな……と思っている。


考えたこと

創作ではよく「生みの苦しみ」という言葉が使われるが、この作品におけるジーンについてはどちらかというと生んだものを切り捨てる苦しみで、さらにそこにナタリーの想いも加わり、創作における新しい一面を知ったような気がする。2人で押したあのデリートキーはかの有名なエンターキーに迫ることだろう。ちなみにわたしはサマーウォーズを見たことはない。

それから、これはこれまでも思い続けてきたことだが、やはり映画は映画館で観たいものだと改めて感じた。
というのも、作品内では何度かジーンが映画館や試写室に座っているシーンが描かれるが、わたしはこれらのシーンでスクリーンが鏡のように感じられた。これは映画館で観たからこそ感じられたことだろう。これまで感じた「映画館で観たい」は音響などの要因が主だったが、今回映画館で観たかどうかで演出の解釈が変わるという事例を知ってしまった。今後は映画館で観たいという気持ちが強まることだろう。


まとめ

改めてとなるが、10代である今このタイミングでこの素晴らしい作品に出会えて本当に良かった。パンフレットにも書いてあった気がするが、触れるタイミングによってどのようにも捉えられる作品だろう。現状況下では厳しいが上映館が増えて気軽に行けるようになったら何度でも観たいし、Blu-rayが発売されたらぜひ購入したい(できればコメンタリーがほしい。さらに欲を言うならジーン役清水尋也さん、ポンポさん役小原好美さん、ナタリー役大谷凜香さん、平尾隆之監督の4人でやってほしい)。

あと、観終わったあとに「映画を観ているとき、自分は一人の観客でしかない」ということを思った。なぜかはわからないが、そう思ったのだ。
その理由を知るためにも、またこの作品に触れたい。


余談

冒頭、「偶然が重なった結果観に行くことができた」と述べた。この「偶然」というのは、もともと父親が観に行く予定で同じく上映館が近くになかった映画『シドニアの騎士 あいつむぐほし』と上映館・公開日がキレイに重なったことにより、父親の運転する車に便乗することで公共交通機関を利用することなく行くことができたことである。この辺りの話を年表にすると、

2020.10.09
『映画大好きポンポさん』
2021年3月19日公開決定

2020.12.25
『映画大好きポンポさん』
2021年6月4日に公開延期

2021.01.15
『シドニアの騎士 あいつむぐほし』
2021年5月14日公開決定

2021.05.10
『シドニアの騎士 あいつむぐほし』
2021年6月4日に公開延期

といった具合だ。緊事宣言延長のタイミングでどちらかが公開再延期になった場合行けなかっただろう。非常に運が良かったというわけだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?