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【朗読後記】『幼蟲』を再読してみた

 桜の花の季節になりました。私は桜の花が大好きなのですが、そうは思わない人もいるんですね。本作の作者江戸川乱歩もその1人のようです。
 友人が私の朗読を聞いてくれました。自分も桜の花が苦手なんだが、同じように感じる人がいて安心したという感想でした。おしべのやくが集合体に見えてくるそうです。江戸川乱歩も『無数の白い蝶が羽を重ねて』とか『千万の蜂の巣が、空を隠してぶら下がっている様に』などと集合体として見ていますよね。
 満開の桜の花をよく雲として例えることがありますが、あまりの美しさにこの世のものではないものと感じる。江戸川乱歩はそれを妖術の美しさと言っています。そういう怪しい何かを感じるところには別の世界がすぐ近くに迫っているような気がします。

 さて朗読のマニアックな話です。
 この話は2年前にも録音しました。久しぶりに聞き返してみました。
あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーー
……自分が進化したと捉えましょう。

 私は話ししているように聞こえる朗読を目指しています。それが一番聞いた時に理解しやすいと思うからです。2年前にはまだ知らなかったポイントのひとつが顕著に出ていました。それは助詞の処理の違いです。
 例えば「〇〇は△△な××だ。」という文の場合、「〇〇は(⤵︎)△△な(⤵︎)××だ。(⤵︎) 」と句読点や文末に向かって下がっていくように読んでいます。
 以前はこういう読みばかりしていて、これでいいと思っていました。むしろこのような朗読指導が主流だと思います。アナウンサーもニュースを読む時にこうします。
 でも文章のつながりとして、助詞ごとに音を下げているとそこで切れ目ができてしまい、結果つながりのない文章に聞こえてしまいます。そのせいで、どんどん音が下がりがちになります。私たちは普段そのようには話していません。

 そこで「○○は」と「△△な」が「××だ。」につながっていく音を意識しています。
○○は××だ。
△△な××だ。
という二つの意味のまとまりがわかるためには、アクセント辞典にある高低差と息の切れ目のほかにもう少し工夫が必要になります。この場合は子音が次の音につながるように意識します。そしてもっと長い文章の場合は、単語やフレーズごとに音の高低差をはっきりさせることで意味のまとまりがわかるようにしています。

 まだ未熟なところも多く修練が足りませんが、だいぶ体に馴染んできました。その結果、使う音域が広がり、表現に幅ができたような気がします。(聞いた人がどう感じるかは分かりませんが)

 下に2年前のものと今回のものを置きます。興味のある方はどうぞ。

↓2021年収録

2023年収録↓

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