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【朗読後記】夢十夜を読む

久しぶりの朗読後記です。今回は夏目漱石の「夢十夜」の「第一夜」を再読したことについてです。前回読んだのは2022年の2月ですから約2年ぶりですね。この間、自分は朗読の何を学び、何を聞き分け、何ができるようになったのか検証したいと思います。

(以下、マニアックな話です)
全体でみると、前回は今よりも起伏がないフラットな読み方でした。読んでいた当時はもっと起伏をつけたつもりでいたのですが、実際はほとんどありませんでしたね。思い切りが悪いというか、変化に乏しく聞こえます。音のつくり方も甘く、特に文末は力なく抜けている音が多数。音を小さくして息の量を増やした音がいい雰囲気であると思っていた節もあり、今はそれが良くないなと気がつくことができました。

自論ではありますが、朗読はやはり音がはっきり聞こえてなんぼ。現実の会話(セリフ)であるなら音の力が抜けたり、音が消えることもありますが、朗読はテキストを読む(話し言葉に近づけるけれども)ことなので、日常会話と異なるものであると考えています。
そして、力を抜くことと音が小さいことは別。たとえば「ささやき」であっても、ささやき声で朗読するのはちょっと違うんじゃないかなと思って
います。一つ一つの音がはっきりとしており、声量を保ちつつ、でもささやいているかのように聞こえる(表現する)のが目指すところです。
前回の読みに関していえば、普通の場面で語尾が消えているところが今は気になります。柔らかく読む術を知らなかったんでしょうね。

また、前回の表現とは大きく変えたところがあります。
主人公と女性との会話の部分の前半と後半で、登場人数を変えました。
ここでテキストを見ていただきのですが、会話の前半部分の女性のセリフには鉤括弧がありません。会話の後半では鉤括弧がつきます。その読み替えをしたのです。

鉤括弧のない前半部分も女性と男性の声を使い分けて朗読する人がほとんどだと思います。今回私は、男性が「女がこう言っていたよ」というように平坦な読みにしました。
次に会話の後半部分は鉤括弧になりますから、そこではじめて女性を登場させます。そして逆に男性のセリフを平坦な読みに替えました。
この男女をねっとりとした関係にしたくなかったのでこうしました。他の朗読者と違うアプローチで表現を構成し、前半と後半で違いを出せたのは自分では気に入っています。

全体の構成は、男が夢を思い出しながら語るようにしたつもりです。『あーだったたな、こうだったな』みたいな。
前半に比べて後半の語り口は良くなっているなと感じます。完全に1人語りだったので入りやすかったんでしょう。
会話のある部分はまだまだ研鑽の余地が結構ありそうです。女性の語り口に課題がありました。

夢十夜は夢のお話。ストーリーがあるようなないような、意味があるようなないような、どうにでも受け取れる話です。読み手によって如何様にも解釈できるのが面白いところであり、難しいところです。自分はどう読みたいのか考え、構成をしてやってみるのはいい力試しになると思います。

また何年後かに読んでみます。
聴いていただけると嬉しいです。

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