明治、大正、昭和の時代。今でも人気の絶えない作品を残した文士達が生きていた。名を上げるとすれば「芥川龍之介」や「太宰治」。誰もが一度は聞いた事があると思われる名前だ。波乱万丈の人生を辿り、その中で数多の作品を残し、命を全うした。苦悩の末に歴史に名を残す作品を生み出してきた才能のある人間。その文士達を私は愛する。文士達本人も、文士達が残した作品も、私は全てを愛する。この文章は、言わば「文士達へ捧ぐ愛の詩」である。 私も文章を書く人間である。ただ、昔からそれが好きだった訳で
一、悪魔の蝶 カチ、カチ、と時計の音が鳴り響く深夜三時。窓の外は月すら浮かばない泥濘の空。気持ちの悪い夜である。こんな夜には、アノ女が夜明けと共にやってくる。艶やかな黒髪に赤い蝶々結びを飾った、「蝶子」と名乗る女が。 硝子戸を叩く音で立ち上がり、特に急ぐ事も無く玄関までフラフラ歩く。鍵を開けると、こちらが扉を開けるのさえ待たずに、蝶子は扉を開けた。真っ赤な口紅が薄ら笑いを浮かべている。 「今日も鍵を開けて下さるのね。」 嬉しそうな上目遣いに吐き気がする。拒否する理由も無い