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答えのない問いには答えなくていい

はじめに

 この学校で皆さんが取り組んできたのは「答えのある問い」でしたが、社会に出ると「答えのない問い」に直面することになります。

詠み人知らず

 これは卒業式の祝辞などに登場する常套句ですが、なぜ学校生活の最後にこんなことを言うのか理解できません。仮に高校だとして「この学校では3年かけて社会に出ても役に立たないことを教えました」と宣言しているのでしょうか。そういうことは後出しではなく入試案内の時に教えて欲しいものです。
 というのは冗談で、こういうものは一種の言葉遊びですから、揚げ足を取るというのは野暮でしょう。実際には、その後に続いて「学校で学んだことを卒業後の生活でどのように生かしていけばよいか」ということがきっと述べられているのですが、いかんせん「答えのない問い」というワードが強いので、その後の話は記憶から抜けてしまいます。
 さて、去る者としては祝辞の中から、覚えている部分だけでもいいので真に伝えようとしているメッセージを正しく受け取り、これからの人生に活かすことで学び舎の恩に報いたいところです。
 ということでその真意について考えてみました。

答えのない問いとは何か

まず「問い」を「問題」と言いかえ、問題とは望ましい状態と実際の状態の差異(want got gap)のことであるという定義を採用します。答えとは望ましい状態のことであり、望ましい状態にたどり着く道筋が解法であり、その道筋を通って望ましい状態にたどり着くことが問題を解くことだといえます。
 したがって答えのない問いとは「望ましい状態がない問題」ということになりますが、「問題」の定義からすれば、望ましい状態がないということは問題の構成要件を満たしていませんから、矛盾が生じます。
 この矛盾を解消するために前提を見直してみましょう。つまり、「実は望ましい状態が存在するのだが、それが認識されていない」と考えます。これなら要件が満たされます。
 以上により、答えのない問いを「望ましい状態が存在するが、それが認識されていない問題」と言い換えることができました。

答えのある問いとは何か

 次に答えのある問いについて考えますが、答えのない問いのときと同様に考えれば「望ましい状態が存在し、それが認識されている問題」と言い換えることができます。私たちはこれの解法を学校で身につけたのです。

まとめ:「答えのない問い」の真意

 上の議論を踏まえて、冒頭の祝辞を通して真に伝えたかったメッセージについて考えます。
・学校では「望ましい状態が存在し、それが認識されている問題」を身につけた
・社会では「望ましい状態が存在するが、それが認識されていない問題」に直面することになる
 この2つを総合したメッセージを祝辞風に書くと以下のようになります。

社会に出ると学校とは異なり、「望ましい状態」が与えられないので、どんな問いに答えるべきなのかが自明ではありません。望ましい状態を自ら考え、現実と見比べることで問いを立てましょう。そうすれば皆さんがこれまでの学校生活でやってきたように問題を解決することができるのです。

 意味のある文章になったのではないでしょうか。祝辞の「答えのない問い」のくだりの後にはきっとこのようなメッセージが語られていたのだと思います。覚えてないけど。

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