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観光客誘致策の提案①:自動車と鉄道では圧倒的な差

日本人観光客を誘致したい旅行関連の皆さん、自動車と鉄道ではどちらが集客に有利かご存じですか?答えは圧倒的に鉄道が有利となります。特に、自動車旅行に頼らざるを得ない地方観光について、問題提起とその解決策を提案したいと思います。

以下、相関係数を用いて、分析してみます。相関係数とは、二つの変数間の関連の強さを数値で表したものです。この数値が-1に近ければ近いほど、一方が増えるともう一方が減るという強い逆の関係があることを示しています。その逆で、1に近い場合は、一方が増えるともう一方も増えるという強い関係があります。

2007年からコロナ前の2019年までの12年間の日本人宿泊数伸び率と旅行時の交通手段を都道府県別に比較してみました(出所:国土交通省、JTB)。その結果、自動車旅行(自家用車とレンタカーの合計)の割合が高いと宿泊数は減少傾向(相関係数はマイナス0.69)、鉄道の割合が高いと増加傾向(相関係数はプラス0.67)となりました。

注:鉄道網がない沖縄県を除く46都道府県のデータ、宿泊者数伸び率は2007年から2019年までの伸び率(年率)
出所:国土交通省「宿泊旅行統計調査」、JTB旅行年報2020(2019年の旅行データ)


注:鉄道網がない沖縄県を除く46都道府県のデータ、宿泊者数伸び率は2007年から2019年までの伸び率(年率) 出
所:国土交通省「宿泊旅行統計調査」、JTB旅行年報2020(2019年の旅行データ)

自動車旅行は観光地へのアクセスのしやすさ、大人数の旅行や重い荷物の移動の便利さ、などのプラス面と交通渋滞や運転による疲労、環境への悪影響などのマイナス面があります。一方、鉄道旅行は定時性と快適な座席、環境への配慮などのプラス面と地方での運行本数などの少なさ、駅などの施設での段差の多さ、などのマイナス面があります。双方に、プラス面、マイナス面がありますが、日本人の観光客の伸び率のデータからは鉄道旅行の魅力が自動車旅行を圧倒していると言えそうです。

特に、鉄道路線の廃線が続き、自動車に観光客誘致を頼らざるを得ない地方の旅行関係者にはショッキングなデータではないでしょうか。自動車旅行比率が高い都道府県は鉄道網がない沖縄県がトップですが、他に宮崎県、福島県、大分県、熊本県、福井県、栃木県、群馬県、三重県、鳥取県、山形県などが上位となります。なお、自動車旅行のイメージが強い北海道は意外にも自動車利用率が低い都道府県の一つです。

出所:JTB旅行年報2020(2019年の旅行データ)

自動車旅行と鉄道旅行の相関係数はマイナス0.90とほぼ完全に逆相関関係にあります。自動車旅行による観光客が減少している傾向にあることから、鉄道網が整備されていないため、鉄道旅行ができない人が仕方なく自動車旅行をしているという構図となっていると言えそうです。

注:鉄道網がない沖縄県を除く46都道府県のデータ
出所:JTB旅行年報2020(2019年の旅行データ)

また、鉄道旅行と「駅の段差解消率(バリアフリー化率)」の相関関係は0.81と極めて高い関係にあります。これはバリアフリー化が進まないため、鉄道旅行をしないのか、鉄道旅行をしないからバリアフリー化が進まないという両面があると思います。

注:鉄道網がない沖縄県を除く46都道府県のデータ
出所:国土交通省「令和3年度末 都道府県別の段差解消への対応状況について」、JTB旅行年報2020(2019年の旅行データ)

次回、駅のバリアフリー化が進まない背景とその解決策を提示したいと思います。

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