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配管接合のプロ

 2012年3月の日記です。
 
 当社はライフライン用資材のメーカーで、
全国の販売店網を通じて工事現場に資材を届けているが、
稀に、地方自治体から直接工事込みで受注する事がある。
今年度は千葉の某自治体から配管工事を受注し、
3月中に完工する予定で進めている。
 
 現場の施工状況は、頭では理解しているが、
実作業を見たことはないから、百聞は一見にしかず、
いい機会だから見に行こうと、先日千葉の工事現場に行ってきた。
 
 現場は交通量の多い往復4車線の道路、
両側は空き地が続いており、田舎の幹線道路と言った様相だ。
工事は片側の1車線を使って行われている。
車道の端に幅1.3メートル、深さ2メートルの溝を掘り進め、
溝の底に長さ6メートルの鉄管を埋めていく。
一日に鉄管2本を埋めるから12メートルの配管延長となる。
工事は既に2カ月ほど続き、既に数百メートル終えており、
残りは数日で今年度の予定分を終了、更なる延長は来年度に行われる。
 
 現場は寒風が吹きすさび、じっと見ていると、
防寒衣を着込んでいてもかなり寒い。
おまけに体を動かさないから、異様に肩が凝るが、
そしらぬ顔をしていかにも興味ありそうに眺める。
 
 工事は、ショベルカーの運転、交通整理や資機材の運搬、
スコップで細かく土砂を掻いたり掘りあげたりする人等、土木屋が6名、
鉄管の接合が2名、それに当社の(口だけの)監督者1名が加わり、
合計9人の陣容だ。
 
 幅1.3メートルの溝に直径60センチの鉄管を下ろすから
パイプの両側、土壁との間は35センチしかなく、
人が作業するにはかなり窮屈だ。
降ろされた鉄管の端を前日に埋められた鉄管の端に接合する。
鉄管の水平位置と高さを正確に決め、
専用工具を使って抜止めのリングをセットし、
ゴム製の漏れ止めを全周にわたって均等にボルトで押し込める。
ボルトは鉄管の外周にそって20本ほどあるから、
下側のボルトを締めるには、
体を穴の壁と鉄管の間、35センチの隙間に押し込め、
鉄管の下側に手を伸ばして
手探りでボルトをセットして締めなければならない。
全周のボルトを少しずつ均等に締めるから
何度も何度も鉄管の下に手を伸ばす。
最後にトルクレンチで所定の強さで一様に締め付ける。
一連の作業は、当社がいつも依頼するその道のプロが1人で行う。
ボルトの締め付けが終わると、各部の締め付け量を測定して、
データを記録し、接合作業は30分ほどで完了。
 
 直ちに次の鉄管が降ろされ、先ほどと同じ作業を行い、
2本、12メートルの配管延長が完了したのが昼の12時。
この後道路を埋め戻し、アスファルト舗装をして一日が終わる。
 
 接合を終えて上に上がってきたプロ氏は40歳前後、
濃紺のウインドブレーカーもズボンも泥で汚れ
体が小さく、やや細身、無精ひげを薄っすらと生やし、
貧相に見えるが、腕力はありそうだ。
でないと、あの作業は出来ないなと、改めて納得する。
お疲れ様でしたと、声を掛けたら驚いた顔をして、
何も言わずに最敬礼してくれたが、
こちらが最敬礼したいくらいだった。

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