被爆者二世の医療券
私の両親と姉は広島原爆の被爆者だが、両親はそれなりに長生きしたし、姉は79歳の現在でも元気だが、被爆者援護法により、医療費が無料で、その他健康管理手当などが支給され、それなりの援護を受けている。私は戦後の昭和22年1月の生まれだから被爆者ではないが、いわゆる被爆者二世で、東京都の被爆者二世支援制度の対象者になっている。
東京都では、被爆者二世は、健康診断とがん検診が無料で受けられるのと、一部の医療費が無料になる。(健康保険の自己負担分が補填される。)一部の医療費とはいいながら、大部分の成人病を含み、勿論全てのがんも含まれている。
2年前の3月、食道癌が発覚した時、東京都に申請して、食道癌の医療券を発行してもらった。以降、国立癌研究センター東病院で検査、治療を受けているが、通常の医療費の支払いは全くない。私の健康保険自己負担割合は3割だから、本来は結構な額になるだろうが、支払いがないので、幾らだったのかもわからない。勿論、健康保険対象外の先進治療や入院時の個室料などは自費だが、これはやむを得ない。
先日、医療券の有効期限2年が迫ったので、必要なら更新しなさいと、東京都から通知が来た。癌研東病院に診断書を書いてもらい、所定の申請書とともに、本日、中央区の保健センターに提出して延長手続きを終えた。
東京都のように、被爆者二世に対する医療費の補填が制度化されている自治体は少なく、私としては有難い限りだが、そもそも親の被爆が子供の健康に影響して、癌を発症する可能性があるかと言えば、極めて怪しい。しかしながら逆に影響しないことを証明することは難しい。国としては被爆者二世に対しては健康診断を勧め、その費用は負担してはいるが、東京都のように医療費の負担まではせず、中途半端な態度だ。
かつて、わが両親は、被爆者であることを世間に知られたくなかったらしく、被爆者手帳の申請をずっと控えていた。無用な伝聞により、姉と私の結婚などへの影響を懸念していたらしい。姉も私も無事に結婚し、子供が生まれるころ、父はもうよかろうと被爆手帳を申請して、母も姉も含めて手帳を交付され、被爆者の諸々の手当てを受けるようになった。両親が亡くなった時は所定の埋葬料も支給され、成程、これが手切れ金かと思ったものだ。
私の結婚後、今の監視人殿から、両親の被爆の話は結婚前にして欲しかったと言われたことがあるが、もし事前に話していたら結婚しなかったのか?・・・・とは聞けなかった。被爆者二世への支援制度は、諸々の迷惑料と理解している。