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新潟時代5.NO2

 親会社の都合で、土地の現物出資を受け入れて資本金を40億円に増資した。
 
 当社の敷地はかつての電気炉工場を引きずって10万坪余りあり、今の事業には明らかに過大だ。特に管理センターのある北地区は、溶融シリカを止めたので、原料置き場が不要になり、3万坪ほどが草ぼうぼうの空き地になっていた。しかもその北地区に限り、(何故かは不明だが)土地の名義上の所有者が親会社のままになっている。
 
 ある日突然、親会社が北地区の土地を時価評価して、その分をそっくり当社に現物出資したいと言ってきた。親会社が見かけ上の純資産を増やして、数字上の財務体質を改善するのが目的だ。更に北地区の道路沿いの一帯を某パチンコ屋のチェーンに貸与すべく交渉中であり、それを引き継いでくれとのこと。会社の規模を考えれば過大資本にはなるが、土地の賃貸収入がついてくるから会社収益に寄与する。悪い話ではない。
 
 話は順調に進み、当社の資本金は40億円に増資され、パチンコ屋チェーンと土地の賃貸契約を締結した。パチンコ屋は全国に30店舗以上を展開し、業界では1,2を争う大手、経営者は朝鮮系の方だが、会って話してみるとそれなりの見識があり、普通の日本人経営者と何ら変わらない。
 
 ところが、パチンコ店の建設が始まると、連日右翼の街宣車が来て、なんだかんだ不穏なことをがなり立てる。煩いし、社員の不安を煽りかねないので警察に相談すると、あの団体は右翼のなかでも、かなり危険な団体で暴力沙汰が多いが、今回の件では今のところ特に違法なことをしているわけではなく、直ぐに動くわけにはいかないと言う、頼りには出来そうもない。
 
 街宣車が、がなり立てている文言をよく聞くと、親会社に対して、朝鮮人に土地を貸すとは何事だ、と言っており、非難の的は当社ではなく、親会社と判明、ただちに親会社に経緯を伝え、何とかしてくれと申し入れた。その後1週間程たつと、パタッと街宣車が来なくなった。親会社が右翼団体と何を話したのか、何を約束したのかは、何もわからないが、当社にとってはともかく結果オーライだった。
 
 ここまでの親会社との交渉と、パチンコ屋との契約等の全てを当社NO2の常務が担当した。彼は的確に遅滞なく話を進め、大事なところでは私に報告、相談してくれるので安心して任すことが出来た。その後も、営業と経理などの管理部門を統括して、時として私が暴走しそうな時のブレーキ役も果たし、最後まで私を支えてくれた。
 
 話は脱線するが、この頃(2002年の春)、神戸の次男から電話があり、話しがあるので次の土日に横浜の家に来て欲しいと言う。多分あの話だろうと思いつつ、土曜日に監視人殿とともに横浜の家に戻った。次男は彼女を連れて現れ、結婚するとのこと。彼女は学生時代からの付き合いで次男より1学年上、相談でも許可を求めるわけでもなく、結婚しますとの宣言だから、嫌も応もない。その後、二人で入籍して社宅に住み始め、いとも簡単に一件落着だ。

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