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作家は定規を使わない

漫画家アシスタント業を始めてから今まで
ヘルプを含め幾数人の作家さんのお手伝いをしてきた。

そんな作家さんたちを見て感じたことがある。
それは、あまり定規を使わないということ。

背景を描く時、枠線を引く時、集中線を引く時、
漫画を描く上で外せないアイテム定規
フリーハンド線を味としている作家さんは別として
殆どの作画で使われている。はず。

でも、それはアシスタントの話。
漫画家という地位を得た作家さんが
定規を自ら使うところは
たまたまかも知れないけど、あまり見ない。

中でも特筆したい、こんな人がいた。
長年のアシスタントを経て初連載を取った
とある新人作家さん。

まずは枠線を引いて欲しいと、
フリーハンドで描かれた枠線の下書きを渡された。
そのやり方は他の作家さんでもよくいる。

着目したのは、そのフリーハンドの下書きの
描き方だった。
定規こそ当ててないものの、
カッターを浮かせそれをガイドに引いていた。
何を言ってるかわからねーと思うが
俺も何をしているかわからな以下略。

直線的な線をフリーハンドで引く自信がないのか
直線的な物体をガイドにする。
でも定規は使わない

長年アシスタントをしてたらしいので
定規の使い方は慣れ親しんだものだろうに

作家になったからには定規は断固使わない!

そんな心意気が、矜持が感じられる所業だった。

ボクのような小市民からすれば
定規を使う手間を惜しまなければ
その先の作画は楽になり
アシも不必要なホワイトがけが減りと
良いことしかないと思ってしまう。

でもその人には効率には換えられない
狂気じみたプライド
そこにはあったんだと思う。

定規を使わない身分をモチベに
頑張ってきたのだとしたら
実現できたことはとても誇らしいことだし
何者かになるってそういうもんだなって思う。


一方でボクがアシで行ったことのある中で
一番の大御所作家さんは
自分で定規を使って枠線の下書きを引き
自分で集中線を引いている。
そういったところが売れている理由のひとつだとも
感じるし、自分もそうありたいと思う。

なお定規を使わないことに矜持を持つ新人作家さんは
5話で終了しその後姿を見ていない。

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