ErgoArrowsPro Proto2を使ってみたよ
僭越ながら期待の新作キーボード ErgoArrowsPro の Proto2 を試用する機会をいただきまして、せっかくなのでこちらでも簡単に感想を書いてみたいと思います。
おそらくこちらに準じた形で製品化されることになると思いますので、購入を検討している皆様の参考になれば幸いです。
なお、最初に書いてしまうと私は今回このキーボードにかなりの衝撃を受けております。
その理由については後ほど詳しく。
ErgoArrowsProについて
ErgoArrowsPro については、Daihuku Keyboard さんの動画で大変詳しく紹介されているので、私がぐだぐだ書くよりもこちらを見ていただくのが早いと思います。まずは見てくれ。
以下、要点です。
サリチル酸さん(@Salicylic_acid3)が設計された分割エルゴノミクスキーボード ErgoArrows の高級版・発展版
デザインテーマは直線と塊感
カラバリは白と黒の二種類
組み立て済みの完成版と、自分で組み立てるキット版がある
オプションで無線接続にも対応
組み立て済み完成版には専用キーキャップ Acid Caps Ergo が付属
オプションで専用の木製パームレストとテントスタンドが用意されている
また、私が前回お借りしたProto 1 についての記事はこちらです。
Proto2になって変わった点
細かな改良点はたくさんあると思うのですが、まずパッと目につくのは以下の2点です。
ケースの厚みがちょっと増した
凸字キー周辺の形状が変わった
見た目的にはわずかな違いなのですが、実際に触ってみると想像以上に大きく変化した印象を受けます。試作の重要性というのが!「言葉」ではなく「心」で理解できた!という感じです。
ケースの厚みがちょっと増した
ほんの数ミリ単位ですがケースの厚みが増したことにより、横からのぞきこんでもキースイッチの根元の部分が見えなくなりました(上:Proto 1、下:Proto 2)。
その結果、無駄な情報量が減ってキーボードとしての一体感が増し、より洗練された印象が強くなったように思います。
高価なオーディオ機器にも通じる高級感のあるたたずまいというか、ある種の風格すら感じさせるデザインになっております。いやあ、かっこいい。
「塊感」というデザインコンセプトもより強調された、とても良い修正ではないでしょうか。
凸字キー周辺の形状が変わった
ケースの厚みが増したことにも関係しているのですが、ErgoArrowsProの特徴でもある左右の凸字キー周辺のケース形状が少しだけ変更されています。
Proto 1 では凸字キー(特に矢印キーの「↑」に相当するキー)を取り囲むケースのフチの部分がキートップとほぼ同じ高さだったのですが、Proto 2ではケースのフチの部分のほうがわずかに高くなりました。
つまり、凸字キーがケースに埋めこまれるような形状になっています。
実はキートップとケースのフチの高さがツライチだったProto 1 では、矢印キー「↑」を押すときに、たまに指がひっかかってしまうという事態が発生しておりました。
慣れれば気にならなくなるので実用上はたいした問題ではないのですが、快適なタイピングのリズムを損なう残念な体験だったのは事実です。
しかし、Proto 2 ではケース部の高さが増したことでケースとキーの境界が明確になり、誤ってケース部を叩いてしまうという事態は発生頻度が大きく低減しました(叩く前に気づくので)。
また少しくらい指がケースに引っかかっても、ケースのフチがなだらかな傾斜になっているため指先がキーの上に滑り落ち、リズムを損なうことなくタイピングの継続が可能です。
というわけで、私は今回の仕様変更を個人的に歓迎しています。
凸字キー周辺の使い心地については実際にどこかで触って自分で確かめていただくしかないのですが、Proto 1 よりも明らかに使い勝手が向上しているのは間違いないです。ご安心を。
Acid Caps Ergo について
画像はサリチル酸さんのDiscordチャンネルより。
Acid Caps Ergo はサリチル酸さんがデザインしたAcid Capsシリーズのひとつで、特にカラムスタッガードなどのエルゴノミクス系キーボード向けのキーキャップセットです。
(1u幅のキーキャップを大量に必要とするため)適合するキーキャップが少ないという、ErgoArrows シリーズの泣き所を解消する画期的な製品となっています。
このキーキャップセットが素晴らしいのは、数字行の上の記号(サブレジェンド)が日本語配列に対応しているということ。
ErgoArrowsシリーズで日本語配列を実現できるキーキャップセットは非常に少なく、あっても入手困難だったりするので、専用キーキャップが用意されているのは大変ありがたいです。
Acid Caps ErgoはCherryプロファイルでPBT製。個人販売のキーキャップとは思えない、しっかりとした品質です。
カラーのグラデーションで遊びを持たせつつも機能的な手堅いデザインになっているので、幅広いシチュエーションで使えるのではないかと思います。
当然ながらErgoArrowsProとの親和性もばっちりです。
打鍵感・打鍵音について
組み立て済み版のErgoArrowsProには、キースイッチとしてKailh Midnight Silent V2 Switch / Linearが同梱される予定だそうです。
こちらはとても評判の良いスイッチで、静音スイッチでありながらクセのない打鍵感で動作も滑らか。静音性も十分です。
このスイッチはErgoArrowsProとものすごく相性が良く、内蔵されている吸音フォームの効果もあって、静かで上質な打鍵音を実現しています。
また、キースイッチの影響かどうかはわかりませんが、Proto1 で指摘されていたという底打ちの硬さも劇的に改善された印象を受けました。これならば長時間のタイピングでもまったく苦にならないと思います。
上のDaihukuさんの動画の9分25秒あたりから実際の打鍵音が聞けますので、ぜひ確認してみてください。
テントスタンドについて
ErgoArrowsPro Proto 2 では専用の木製パームレストに加えて、10度の傾斜角を持つ3Dプリント製のテントスタンドが公開されました。
内側から外側に向かってキーボードを傾斜させることで、より自然な角度でタイピングすることが可能になり、手首や肩への負担軽減につながるというオプションです。
まあ理屈はわかるけど傾斜がついてるといっても10度程度だし、ないよりあったほうがいい程度のものだろう、というのが事前の私の予想でした。
パームレストだってあれば手首が楽だけど、必要ないという人も少なくないし、パームレストの有無でキーボードの性質がガラッと変わるようなことはないですからね。
ところがどっこい。
このテントスタンドがあるとないとでは、ErgoArrowsPro はまったくの別物になります。
どれくらい違うかというと、だいたいシナンジュとネオ・ジオングくらい違います。やばいです。
たとえば電子マネーのタッチ決済とかYoutubeプレミアムとか温水洗浄便座とか、ちょっと贅沢だけど一度味わってしまったら、それ以前には戻れない快適な体験というものが世の中には存在するじゃないですか。
このテントスタンドはそのたぐいの代物です。ユーザーを駄目にするキーボードです。
私は自分で組んだ無印ErgoArrowsをとても気に入っており、ErgoArrowsProが来ても無印を使い続けるつもりだったのですが、このテントスタンド付きを知ってしまうと「あ、無理」ってなりました。それくらいテントスタンドが圧倒的すぎる。
具体的になにがそんなにすごいのかというと、まずは姿勢の自然さです。
左右それぞれ10度ずつの傾斜により、インタビューでろくろを回す有名人の如きナチュラルな姿勢でタイピングを続けることができます。この姿勢がハマるというか実に快適なのです。
さらに副次的な効果として、叩きつけるようなタイピングが減って、必要以上の負荷が指にかかることがなくなりました。
これに関しては理由がよくわからないのですが、垂直ではなく斜め方向にタイプすることで、いわゆる「撫で打ち」に近いタイピングが無意識に身についたのかもしれません。
ただこれは私の個人的なクセの問題という可能性もあるので、本当に効果があるのかどうかは要検証だと思います。でもやはり上から下に打ち下ろすよりは、無駄な力が抜けてる気がします。
最後に心理的な満足感。パームレストとテントスタンドを取り付けたErgoArrowsProは物理的にかなりの体積と質量があるのですが、上述の自然な打鍵姿勢と相まって、単にキーボードに手を置くというよりも、キーボードと一体化したような謎のフィット感が得られます。お気に入りのぬいぐるみを抱いているかのような安心感です。
高級スポーツカーの運転席にいるような感覚が味わえる…というのは、さすがに言い過ぎかもですが、私の気分的にはそんな感じです。自分でもなにを言っているのかわからなくなってきましたが、とにかくそれくらい気に入っているということです。いやもう本当にすごい。最高です。
とはいえ、欠点がないわけではない。
テントスタンド付きErgoArrowsProの唯一最大の欠点は、とにかくデカいことです。
天板の広いデスクが使える環境であれば問題ありませんが、机上のスペースが限られているオフィスなどの環境でフルオプションのErgoArrowsProを使うのはかなり厳しいと思われます。ましてやノートPCの上に載っけて使うような使い方はほぼ不可能です。
また、キーボード自体の高さもかなり高くなるため、場合によっては机や椅子などの調整も必要になるかと思われます。
その意味でテントスタンド付きErgoArrowsProは、使い手やシチュエーションを選ぶ非常にピーキーなキーボードといえるかもしれません。
ただそういうマニアックな製品だからこそ自作キーボードとしての需要があったりするわけで、商品開発におけるコンセプトの重要性というものをいろいろ考えさせられますね。万人向けではないかもですが、私は完璧に惚れこんでおります。最悪、机を買い換えてでもこれを使う覚悟がある…!
まとめ
そんなわけで、ErgoArrowsPro Proto 2の紹介…というよりも、私がいかにProto 2を気に入ったか、という記事でした。
ErgoArrowsProはProto 1 の時点で十分に魅力的だったのですが、専用のキーキャップや豊富なオプション類によって商品力を底上げしたProto 2は、本当に満足度の高い優れた製品になったと思います。
これまでさんざん使い倒してきたErgoArrowsを試してみて、ここまで驚かされるとは正直思っていませんでした。本当にびっくりです。
最後になりましたが、貴重な試作品を貸与してくださったサリチル酸さんにあらためてお礼を申し上げます。
販売開始、楽しみにしています!
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