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ロータリーエンコーダー搭載 左右分割キーボードRe64_Rev2を使ってみた

先日のErgoArrows紹介記事を見てくださった電脳甲板工廠の九嶋 八さん(@kushima8)から、「うちのキーボードも使ってみませんか?」というありがたいお言葉をいただきまして、『Re64_Rev2』と『Re42』の2台をお借りすることができました。

このところ密かに盛り上がっている自作キーボード界隈ですが、実物にさわれる機会はまだまだ少なく、ましてや長期間がっつり試用させてもらえるのは滅多にない貴重な体験です。なのでこの喜びを少しでも皆様と分かち合うべく、使用感をレポートしてみたいと思います。
(とはいえ私自身はハードウェアに詳しいわけでもなんでもないので、やや偏った使用者目線になってしまうのをご承知おきください…!)。

Re64_Rev2とは

Re64_Rev2は、60%サイズ(64キー)の左右分割キーボード自作キット。親指で操作可能な二つのロータリーエンコーダーを搭載しているのが特徴です。Re64_Rev2をイメージしたキャラクターステッカーも付属。かわええ。

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Re64_rev2(OLED[液晶]+LED付き)
Switch: Zilent V2 62g
KeyCap: PBT XDA PBT KEYCAPS

Re42とは

Re42は、同じく二つのロータリーエンコーダーを備えた左右分離型のキーボード自作キット。こちらは40%サイズ(40キー)で格子配列を採用した、非常にコンパクトなキーボードです。Re42ちゃんはクール系っぽい。

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Re42
Switch: Novelkeys X kailh Blueberry
KeyCap: Big Bang MDA Ortholinear Keyca

忙しい人向けの3行でわかる結論

・プロの要求に応える実用性と趣味性の両立
・大人しそうな見た目に反してゴリゴリの高機能キーボード
・ロータリーエンコーダーの中毒性がヤバい

Re64_Rev2の印象

Re64_Rev2に触れてみて最初に思い浮かんだのが「(良い意味で)思ってたのと全然違う!」という感想でした。それほどまでに写真で見るのと、実際に使ってみた印象が異なるキーボードです。

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Re64_Rev2の外観はこんな感じ。キーキャップの影響もあると思うのですが、ドイツ製の文房具のような、高品質で実用性重視の工業製品というたたずまいです。このキーボードをオフィスで見かけたら、渋い道具を使ってるなーという感想を抱くのではないでしょうか。

実際その印象自体は間違いではなくて、Re64_Rev2は細かい点まで道具としての魅力に溢れた質感を持っています。どことなくレトロな印象を受けるロータリーエンコーダーのノブや、ボトムプレート越しに見える美しい基板など、その外見だけでも所有欲を満足させてくれます。

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ですが、実際にPCにつないで見ると印象は一変します。

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めっちゃ光るよ。

レトロな機械式腕時計のようだったスケルトンな見た目が、突然サイバーな印象に。なまじ基板の一部が剥き出しになってるぶん、生半可な市販ゲーミングキーボード以上に強烈なメカメカしさを醸し出してくれます。
イメージキャラクターのRe64ちゃんがメカバレした姿を連想してしまってゾクゾクしますね…

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もちろんキー操作でLEDのオンオフや発光色の調整も自由自在。OLEDの画面には現在使用中のキーマップのレイヤーや、LEDの輝度が表示されています。カッコいい上に実用的とか最高かよ……

プロに人気の例のキー配列

もちろん見た目だけでなく、Re64_Rev2は純粋にキーボードとしても高い実用性を持っています。その裏付けとなっているのがこちらのキー配列。プロフェッショナルの方々に愛用者の多い例のハッピーな配列です。

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キーボードに求める機能は人それぞれなので、万人が認める理想のキーボードというものは存在しないわけですが、比較的多くの人間が共有している理想として、「左右分離型のHappy Hacking Keyboard」というものがあると思います。

自作キーボード界隈でも左右分離型HHKBの需要は多く、7sProChoco60など、多くのキーボードがHHKBに準拠した配列を採用しています。

Re64_Rev2も同じくHHKB配列を踏襲。普段からHHKBを使っている方であれば、新たにショートカットなどを覚えることなく移行できるのが強みです。生産性を落とすことなく、分離型キーボードならではの自然な姿勢でタイピングできるようになるのは大きなメリットかと。

そして見比べるとわかるのですが、実はRe64_Rev2の場合、本家のHHKBよりキーボード最下段のキー数が多いのです(スペースキーの右側が1コ、左側が2コ多い)。
たかが1個の違いではあるのですが、日本語文章書きにとってはこの1個が生産性を左右する大きな差となります。これについて詳しくは後ほど。

ロータリーエンコーダーの中毒性

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本機の最大の特徴といえるのが、スペースキーの横に搭載されたロータリーエンコーダーです。Re64_Rev2で使えるロータリーエンコーダーには何種類かあるのですが、今回は回した際にカチカチとクリック感があるタイプのものを取り付けてもらいました(ノブのサイズや取付位置も選べるので、使用目的や手の大きさに合わせて設置できるそうです)。

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当然「キーボードにダイヤルみたいなのをくっつけて何に使うのか」という疑問が出ると思うのですが(私も最初そう思っていましたが)、結論から言うと「使いみちがメチャメチャあって迷う」というのが答えになります。

DTMや動画編集をする方であればロータリーエンコーダーのありがたみはよくご存じでしょうし、イラストを描く方であれば作業中の画像の拡大縮小に、大量の写真を扱う方であれば写真のブラウズに、あとはマウスホイールの代わりに画面スクロールしたり、スピーカーの音量調節や画面の輝度調節に、とアホほどたくさん使いみちがあります。特に用がなくても暇なときにグリグリ回してるだけで楽しいという噂も。

日本語文章書きがRe64_Rev2を使ってみた

本家のHHKB(US配列)には独立したカーソルキーがありません。カーソルキーを使うためにはホームポジションから手を動かさなければならないため、「ならばカーソルキーなどいらぬ!」ってなったんだと思います。まあ、理屈はわからないでもない。

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ですが日本語文章書きにとって、これはかなり恨めしい決断です。
なぜかというと日本語は難しいからです……。
特にフィクションの場合はありもしない妄想を文章にしなければならないわけですが、そんなあやふやなイメージを保持しつつ言葉を選んで文字をタイプして同音異義語とかに気をつけつつ漢字に変換するという作業を同時並行で行うので、脳の処理能力とメモリ容量が常にカツカツです。
その状態でIMEの入力モードがどちらか判断したり、機能キーを組み合わせてカーソルを動かすような余裕はありません。少なくとも私には無理。

というわけで(毎回書いてる気がしますが)、私がキーボード選びの際に重視するのはスペースキーの両隣にそれぞれ「英数(無変換)」「かな(変換)」キーを割り当てられることと、独立したカーソルキーが存在することです。

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ここで問題のRe64_Rev2ですが、このキーボードには本家のHHKBにはないキーがスペースキーの横に複数追加されているため、余裕で「英数(無変換)」「かな(変換)」キーを割り当てることができます。ありがたい。

一方、厄介なのがカーソルキーで、残念ながらRe64_Rev2には独立したカーソルキーがありません。ほかに割り当てられそうなキーもないので、本家のHHKB同様、機能キーで切り替えて使うしかない。普通のHHKB準拠のキーボードならここで詰んでしまうのですが、Re64_Rev2は違います。
そう、Re64_Rev2にはロータリーエンコーダーがあるのです。

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そんなこんなで私は左右のロータリーエンコーダーに、それぞれ上下と左右のカーソルキーを割り当てて使ってました。これが意外に、というか実は予想以上に素晴らしかった。

カーソルを何文字分かまとめて動かすのにカーソルキーだとひたすら連打しなければなりませんが、ロータリーエンコーダーの場合はノブを回す角度と移動距離がリンクしているので、感覚的にとらえられるのがすごく新鮮で快適です。

Re64_Rev2の場合はホームポジションから手を動かさずにロータリーエンコーダーが使えるという設計上の優位性もあります。

逆に一文字だけ動かしたいときはロータリーエンコーダーを無理に使わず、機能キーとの組み合わせでいけるので、ロータリーエンコーダーに慣れるまで生産性が落ちるという問題もありませんでした。

というわけで、HHKBライクな左右分離型キーボードが使いたいがUS配列はちょっと…という方にも、Re64_Rev2は比較的オススメできるキーボードです。特に自作キーボードの場合、US配列だと選べるキーキャップの種類が豊富というメリットも大きいので。

ほかにもあるすごい機能

二週間ほどお仕事でがっつり使わせてもらったRe64_Rev2ですが、実はほかにも多くの機能があり、すべて使いこなすことができませんでした。

たとえばレイヤー機能はほとんど利用していませんし、ロータリーエンコーダーのプッシュスイッチは上手く使えばメチャメチャ便利そう。
また、右手側キーボードの端子を使ってPCに接続することで、キーマップを左右反転させることができ、それによって右手側キーボードを左手用デバイスとして使うという変則的な使い方ができるのかなと思いました。

さらにPCBソケット対応ということで、用途や慣れに合わせてキースイッチを交換することも可能です。今回はZilent V2 62gを取り付けていただいたのですが、Re64_Rev2との相性がよかったのか、本当に素晴らしい打鍵感でびっくりしました。手持ちのキーボード全部このスイッチに変えたいと思ったくらい。

Re42の印象

めちゃめちゃ長い記事になってしまったのですが、一緒に送ってもらったRe42についても、簡単に紹介したいと思います。

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とにかくコンパクト。あとはやはり見た目がカッコいい。Re64_Rev2と同様、ロータリーエンコーダーを二つ搭載しているので、単に省スペースなキーボードというだけでなく、いろいろ応用が利きそうです。

こちらの記事によれば、Re42が採用している格子配列(オーソリニア)は、
・四角いキーを平面に配置する以上、キーを最密に配置できるレイアウト。
・最密故に指の移動距離が最短になり、疲労が少なくなる。
・また、密度を上げられるのでコンパクトなキーボードに仕上げられる。
とのこと。

ただ、やはりキー数が少ないため(慣れればどうかわかりませんが)、日本語入力や数字入力に向かず、使いどころが限られる印象があります。
一方、英文入力に関しては、ほとんど不自由を感じることはなく、むしろ格子配列のメリットを強く感じました。プログラマーや英語圏の方々に人気があるのはわかる気がします。

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コンパクトなので、デスクを広く使えるのが良いです。キーボードの真ん中にスマホを置いたり、オーソリニアの欠点であるキー数の不足を補うカーソルパッドやテンキーパッドを併用するのもアリだと思います。

個人的には、がっつり文字入力に使うというより、動画編集やDTMの際に入力補助デバイス的な使い方をしたいと思いました。もしかしたらイラストレーターさんや漫画家さんにも便利かもしれない。ロータリーエンコーダーも有効活用できそうだし(わからないけど)。

まとめ

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という感じで、Re64_Rev2(とRe42)は高い実用性を備えつつ、機械としての魅力にあふれた奥深いキーボードでした。本体の完成度が高いので、そのまま組み立てるだけでも十分楽しめると思いますが、自分好みにアレンジを加えて改造するのも良さそうです(プレートのデータが公開されています)。

このような素晴らしいキーボードにふれる機会を与えてくださった九嶋さんにはあらためて感謝いたします。ありがとうございました。楽しかったです!


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