分割エルゴノミクスキーボードErgoArrowsを組み立てたので自慢したい
ここしばらくErgoArrowsという自作キーボード2セットを、設計者であるサリチル酸さん@Salicylic_acid3 からお借りして試用させてもらってました。
ErgoArrowsについては以前に試用レポを上げているのですが、このキーボード、長時間使ったときの指への負担が尋常ではなく少ないです。
それでいて特殊な形状のキーボードにありがちなクセが少なく、一般的なキーボードから比較的ラクに移行することができます。
そしてなにより日本語文章の入力が非常にやりやすい。指の動きが最適化されて、たまに自分の手が文章を打つ機械の一部になったような錯覚に襲われるほどです。やばい。
そんなわけで、借り物ではなく好きなように使い倒せる自分のErgoArrowsがどうしても欲しくなり、ついに自分用に1セット組み立てることにしました。
そんなわけで完成した
いきなりですみません。組み立てるだけでいっぱいいっぱいで、途中経過の写真を撮る余裕がありませんでした。
ErgoArrowsの組み立て工程に関してはこちらの動画で詳しく解説されているので、気になる方はご覧になってみてください。
いちおう少しだけ撮っておいたやつ。
ErgoArrowの組み立てでいちばん大変なのはオプション部品であるLED76個のはんだ付けで、べつにキーボードは光らなくていい、という場合はだいぶ難易度が下がります。私の体感としてはHGのガンプラ組むのと大差ない印象です。一方、LEDを装着すると難易度が三倍くらいに跳ね上がります。
ただ、このキーボードに関しては、どうせなら光らないより光ったほうがよいと思います。というのは、ErgoArrowsは使えるキーキャップの種類がかなり限定されていて、希望した色が選べない可能性があるからです。
そんなときにLEDの色でキーボードの印象を変えられるのは、愛着や満足感に与える影響が大きいのではないかな、という個人的な実体験。
幸い「足付き」と呼ばれるタイプのマイコン内蔵RGB LED(SK6812MINI-E)は、足のないやつに比べるとだいぶはんだ付けがやりやすいですし、76個もはんだ付けしてたらイヤでも途中で上達します。
私も最初に作った左手側は38カ所くらいはんだ付けをやり直しましたが、その後で作った右手側は一発でフル点灯でした。
完成するとめっちゃ綺麗です。光属性のキーボードにこだわる人たちの気持ちがわかった気がする。
キースイッチの選択について
ErgoArrowsはキースイッチをPCBに直接はんだ付けするタイプのキットなので、組み立て後のキースイッチの変更はできません。
ですが今回はMill-Maxソケットというものを埋めこんで、あとからでもキースイッチを交換できるように(いわゆるホットスワップ対応に)してあります。これで気軽に様々なキースイッチを試せるようになりました。
今回はTTCの青白軸ことBluish White Switchを選びました。
押下圧42±5gということで、タクタイルスイッチとしてはかなり軽量の部類。HHKB(45g)とほぼ同等です。また、スイッチ内部に緩衝材が仕込まれており、キーを底打ちしたときの音を軽減するようになっています。
今回初めて使ったのですが、通常のスイッチとサイレント系のスイッチのいいとこ取りみたいな感じで個人的には大変気に入りました。ただしお値段はちょっとお高めです。
またErgoArrows左右のカーソルキー部分は、ほかのキーとは違う背の低いタイプの(ロープロファイル)スイッチを使用します。
こちらには白軸(クリッキー)を選択しました。
ロープロファイルスイッチはストロークが短いせいで、通常のキースイッチと併用すると違和感が残ってしまうのですが、押下圧を重くして(50g)さらにクリック音を鳴らすことで、打鍵時の物足りなさをなくしています。
カーソルキーを押すたびにカチカチ音が出て、とても楽しい。静かなオフィスなどではちょっと迷惑かもですが。
キーキャップの選択について
ErgoArrowsというキーボードに欠点があるとすれば、それはキーキャップの選択肢が限られることです。ビルドガイドにもこのように書かれています。
ErgoArrowsはすべてのキーが一番小さい単位の1uというサイズのキーで構成されるため、一般的なキーキャップセットでは印字を一致させることは出来ません。
この問題はErgoArrowsを日本語配列で使おうとするとより深刻になります。市販されている日本語配列のキーキャップセットというのは、そもそも絶対数が少ないからです。
US配列で組み立てれば問題はだいぶ改善されますが、私はどうしても日本語配列のErgoArrowsが欲しかった…!
結論から言えば、ErgoArrowsで日本語配列ふうのレイアウトを実現できるキーキャップ(Ortholinearキットが選べるやつ)はいちおう存在します。
ひとつはePBT SimpleJA R2。もうひとつはDrop + Matt3o /dev/tty です。
ただしSimpleJA R2は共同購入の受付中で、今注文しても実際に発送されてくるのは来年の春以降とのこと。したがってErgoArrowsを日本語配列ふうに使えるキーキャップは、現状 /dev/ttyが唯一の選択肢となります。
(どなたか、もしほかのキーキャップをご存じでしたら教えてください)
幸いなことに /dev/ttyは白とグレーを基調にした地味ながらクセのないキーキャップなので、ErgoArrowsにもよく似合います。
もうちょい派手なキーキャップが欲しいという場合は、LEDで自分好みにライトアップすればいいと思う。たぶんそのためのLED。
日本語配列ふうのレイアウトについて
苦労の末、完成したErgoArrows(JP?)です。
一見すると中央部にごちゃごちゃと記号が集まった変なレイアウトに見えますが、実は右手小指側からはみ出た記号キーが一周して中央に移動しただけです。そのため従来型のキーボードに慣れていれば、記号キーの移動先を直感的に理解することができるはず。左右それぞれの指の移動距離も均等になりますし、不器用な小指ではなく人差し指で打鍵できるので、むしろ合理的だと思います。
左右のスペースキーの両隣(外側)には変換・無変換キーが配置されており、常に1キーで日本語入力と英字入力の切り替えが可能です。
またスペースキーの両隣(内側)は右手側がEnter、左手側がBSになっていて、両手をホームポジションに置いたまま、漢字変換の確定と入力の取消ができます。
もちろんErgoArrows最大の特徴である左右の矢印キーによって、漢字変換候補の選択も簡単。
左手側スペースキーの上にある「赤いenterキー」の正体は、「うっかり誤変換したまま確定してしまった文字を確定前の状態に戻すキー」です。これ、メチャメチャ便利なんですよ。
このように特化したキーマップのおかげで、うちのErgoArrowsは日本語入力が非常に快適です。自作キーボードならではの醍醐味だと思います。
レイヤー機能について
そのままでも潤沢なキー数を持つErgoArrowsですが、更にレイヤー機能にも対応しており、複数のキーマップを切り替えながら使うことが可能です。
うちの子の場合、右端最下段のRAISEキーでレイヤー1、左端最下段のLOWERキーでレイヤー2に切り替わるようになってます。
私のオススメ設定は、RAISE+W・A・S・Dに矢印キーの上・右・下・左を割り当てるやつ。
ただでさえ矢印キーが左右についているErgoArrowsにさらに矢印キーを増やすんかい!ってなりそうですが、これでホームポジションに手を置いたままカーソル移動や漢字変換候補の変更が可能になり、日本語入力の効率アップが見込めます。すべては快適な日本語入力のために!
そのほかLOWER+789の列に数字キーを割り振ってテンキーっぽく使うのもオススメです。
カラムスタッガードのErgoArrowsはキーの横の列がズレていないので、代用テンキーとしての実用性も高いのです。
エルゴノミクスキーボードって実際どうなん?
私は数年前に日常生活に支障が出るレベルの腱鞘炎になったことがあり、それ以来、入力デバイスにはそれなりに気を遣っているつもりでした。
ただエルゴノミクスキーボードというのは馬鹿でかかったり、変な配列だったり、日本語入力に向いてなかったりするものが多く、使えない!という印象が強かったんですよね…(個人の感想です)。
そんな中でErgoArrowsだけは借りてきたその日からノーストレスで日本語入力が出来たので(むしろほかのキーボードより快適だったので)、私の中ではめちゃめちゃ評価が高いです。このキットのおかげで、エルゴノミクスキーボードに対する認識を完全に改めました。
指の関節は、握ったり開いたりする方向の力には比較的強いのですが、左右の横方向やひねりの力に弱いらしいです。
その点、カラムスタッガードのキーボードは打鍵時に横方向の動きをあまり必要としないので、私がErgoArrowsに対して感じた指が楽という感覚は、それが原因なのかなと思います。
自作キーボード界隈ではほかにも様々なキー配列が考案されていて、機能性だけでなく、見た目の奇抜さでもワクワクするような作品がたくさんあります。これからもいろいろ試してみたいと思っています。楽しみ。
ErgoArrowsの製作にかかった費用とか
最後に気になるお値段です。
・ErgoArrowsキット本体 12,100円
・TTC Bluish White Switch 70個 6,930円
・Kailhロープロファイルスイッチ 10個 440円
・MBK Choc Low-Profile Keycaps 10個 550円
・TRRSケーブル 550円
・Drop + Matt3o /dev/tty MT3 Custom Keycap Set
・Ortholinear Kit 約8,500円($75)
・JAPAN KIT 約4,200円($37)
小計 33,270円
・SK6812MINI-E 80個(オプション)3,080円
合計 36,350円
また、これ以外に配送料や工具代などが別途かかっています。
市販の最高級キーボードであるHHKB HYBRID Type-Sが35,200円なので、ちょうど同じくらいのお値段ですね。
まとめ
自分の手で組み立ててみて、あらためてErgoArrowsは随所に工夫とこだわりが詰まった良いキーボードだと思いました。あと組み立てるの楽しかった。
最高のキーボードを設計してくださったサリチル酸さんにはあらためて感謝いたします!