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【ガフ】Hello? Hello? Anybody home? Huh? ←この台詞はガフではなくビフ

ビフと言うのは映画バック・トゥ・ザ・フューチャーのトランプがモデルとされる悪役キャラ(まさかこの30数年後に本当にトランプが大統領になるとはね)、この話はそれとは関係無くて自艇の帆の艤装、ガフ(Gaff)の話。

■ガフリグとは

ウチのヨットは純然たるFRP製で、間違ってもハルがチーク材だったりするようなクラシックヨットではありませんが、セーリングクルーザーの殆どを占めるであろうバミューダリグでは無く、「君のヨットはもう半世紀くらい経つの? なんなら大航海時代かな?」的なガフスループ艇です。
いや、東欧諸国のデイセイラーとかには今も結構あるんですよ!
多くの方は帆装(帆走じゃなくて帆装の方)に興味が無いと思うので説明を省きますが、下図のようにマストトップよりもセイルのピークがずっと高いところにあって、ブームと並行にあるガフ スパーを持ち上げる事でセイルを高いところに掲げてくれるようになっています。

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とは言ってもネットで拾ってきた下図のような普通のガフリグは、ガフ ジョー(ガフ スパーの根元)を持ち上げるスロートハリヤードとガフ スパーの傾きを調整するピークハリヤードの2本でマストを掲げるわけですが、

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自艇はピークハリヤード(テークルも組んでない)のみで持ち上げる簡易型(名前があるのかは知りません)。
つまりガフスパーの角度を微妙に調整してのセイルのトリミングは出来ません。上げたら動かさない”漢”仕様です。
本来なら強めの風を受けるようなコンディションで少しスロートハリヤードを引いてアッパーキャンバー(とヨットで言うのかは知りませんが飛行機ではそう言います)を大きく、コードレングスを短めにしてやったりとトリミングしたいところです。
しかしそこはへっぽこヨットの自艇、よく言えばおおらかに、悪く言えば適当に帆走するだけでどちらかと言うとガフリグというかマストを延長する手段、言うなればマストエクステンダー的なマスト高(≒アスペクトレシオ)稼ぎ的な意味合いです。

その他諸々、帆走性能はバミューダリグ艇に比べて(同じセイル面積だと)落ちますが、それでもこのような形式にしたのは恐らく自艇のようなポケットクルーザーは欧州ではトレーラーに載せられてヴァカンスの時なんかには湖なり川なりクリークやキャナルなりに下ろして楽しむような使い方をする人も一定数いるからじゃないかと確信しております。
トレーラーに載せる場合は必然的にマストを抜くなり倒すなりするわけですが(そうしないと最初の信号でマストが壊れる運命に)、抜くにはクレーンなどの外部設備等が必要になるので、「ちょっと乗るか」みたいに、思い立ったら即乗艇なんて使い方は出来ません。
デンマークのDragonfly28のように、

こんな感じでトレーラーに積んでいるであろう治具を使ってマストを外して収納する方法もありますが、1人ではちょっとキツイ感じですし、フルマストは非常に長くてステムラインより大きくオーバーハングしたマストを見るに「帆走の鬼!」みたいなトリマランとウチみたいな「これヨット?」なんて港で見知らぬおじさんに悪気無く屈辱の声をかけられるへっぽこセイルボートと比較するのは大きな間違いだったと気付かされます。

簡便性を考慮し可倒式マストしか選択肢が無くなり、その際に倒したマストが大きくスターンから後ろにはみ出ると、いくら牽引に寛容でインフラが整った欧州諸国と言えども問題になりそうですし、(牽引車の)運転者としても扱い難い物となってしまいます。
そこで可搬性を考慮した結果マストを(ほぼ)二段折り畳み式にするため、つまりセイル面積を大きく損なわず、かつマストを倒しても船体より大きくはみ出ないためにガフリグと言う選択肢になったんじゃないですかなぁ? いや、実際のところはわかりませんが。

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↑マストを倒しても大きく船体からはみ出ないウチのヨット。

実際、ウチのヨットはマストを倒すのが簡単で、昨年の台風上陸前日に予防的措置としてマストを倒した時は、

これノーカットですが、工具を使わず8分くらいで倒しています(これは初めて倒した時なので今はもっと早くできます)。おそらくF1のピットクルーがやったら10秒くらいで倒れるのでは? いやそりゃ無理か。


■メリット

普段はこんな台風対策の時くらいしか私にはガフリグのメリットが無いわけですが、それでもマストトップの停泊灯が切れた(だいたい船検の前に切れる)とか風見が壊れたなんて時も、重い気分でヘルメットやらボースンチェアやらハーネスを出したり、誰か下で引っ張ってくれない?なんて頼める人を探したり、落ちた時の事を考えて身辺整理をする事もありません。

しかし塞翁が馬ですか?YAMAHA 21SとかNora 21、Gib'Sea 234みたいな同クラスのヨットにぶっちぎられても「ああ、こっちはガフリグですからねぇ」なんて言い訳を自分にしてヘラヘラできるという小さな志の大きなメリットなんかもあったりますね、ふふふー。

あとはマストトップよりもガフスパーの方が高くなるわけで、そこにカメラなんかを付けたりすると、

こんな感じに撮れたりするメリットはありますが、まぁこれは何かの役に立つわけじゃないですからね。 

さて、そんな感じのガフリグの話でした。 
メールでウチのヨットのガフリグについて質問があったので書いてみました。