ThinkPad X1 Yoga(1st Gen/2nd Gen)をOLED化したりアップグレードする(1)

今更2016, 2017年モデルの話です。OLED(有機ELディスプレイ)はよく知られている通り色再現域が広く正しくキャリブレーションすればHDR以外は最強です。発表当時のお値段も30万円近くと高額で予約までしたけれども同じ時期に物入りがあって出費がかさんだため、諦めて見送りました。
ここしばらくはXiaomi Notebook Air 2018という小米のMacbook Airもどきを使用していたのですが、このモデルに使用されている世代のIntel i7-8550Uが失敗作なために発熱が多く、少しの負荷でファンも爆音で回り始めるし、バッテリーも持たないわでそろそろなんとかしたいと考えていました。2019年終わりころにネットで探し物をしていたところ、なぜかX1 Yogaの再生品が目に留まりまして。以前のこともあって気になり調べるとOLEDモデルも同じように出回っていて値段も当時の1/3くらい。

ThinkPadはメインテナンスマニュアルが公開されていてコンポーネントレベルまで部品入手することができます。オプションもベースモデルから全部入りまであるわけで、メーカー保証は当然なくなりますが故障しても自分で修理対応可能だし、消さないでねと念押ししていたのに修理担当者が誤ってストレージデバイスの記録内容を初期化されてしまう心配もないし、その気になれば勝手にフルオプション全部入りモデルへ闇アップグレードできます。
そこで思いついたのがパーツ入れ替えてしまえばOLED化できるやんと。OLEDモデル復活した現行機種買えばええやんという話もありますが、この時期のプロセッサとメモリ空間16GBあれば人権は確保できるし完成品を買ってくるだけでは知見何も得られないですし弄り倒すの好きですし、なにより自己満だいじ。
eBayでは潤沢にX1 Yogaの中古品が出回っていて値段も日本より安価に入手することができました。最初にGen1のディスプレイはフルHD, CPU i7-6600U, RAM 16GBのモデルが手元に来ました。お値段400USD。これをベースに‥まずどうやってOLEDパネルを入手するかです。調べてみたら、すでに同じことを実践した人がいました。ということでこのnoteは完全オリジナルではなく、何を入手して交換するべきかを明らかにしてくれたこの記事にかなり依存しています。先人に感謝です。

必要なもの
本体
X1 Yogaの1st Genまたは2nd Genならばなんでもいいです。元がフルHD LCDでもWQHD LCDモデルでも。RAM 8GBモデルならば2万円でお釣り来るかもしれません。注意することは電源端子がGen1は独自の角形ACアダプター入力、Gen2はUSB PD対応なUSB Type-C コネクタとなっています。プロセッサもGen2は世代が一つ進んでいますが、ディスプレイパネル周りに関してはほとんど差異がないと考えても差し支えありません。各種インターフェースをType-Cで統一できるほうが便利ですからこれから入手するならGen2がおすすめですが、Gen1のほうが安く入手できます。しかしGen2には罠があってUSB Type-Cドライバファームウェアに欠陥があり、故障するとファームウェアがアップデートできなくなります。入手したGen2マザーボードはこれに該当してしまい、OS上でエラーが頻繁に出るけれど何も対処できない状態です。この状態になったらボード交換してねとThinkPadのフォーラムで回答されてました。それでええんかいな。
OLEDパネル
最重要部品。Gen1では01AW977, Gen2は01AX899です。Gen1でもGen2でもインターフェースは変わっていませんが、Gen2に使われているパネルは若干ピーク輝度や色再現性が改良されているという情報もあります。どちらでも大丈夫です。この部品番号でタッチパネルと保護ガラスまるごと付いているアッセンブリーとなっています。
ディスプレイバックカバー
OLEDとLCDモデルでは設定されているパーツ番号が違います。OLED用はGen1は01AW978, Gen2は01HY964です。どう違うかは確認できていませんがDC-DCコンバータ取り付けスペースを設けたとかそのあたりかと思われます。
ディスプレイケーブル
フルHDモデルですとケーブルアッセンブリーは1本なのですがWQHDでは伝送帯域が足りないため2本になっています。Gen1では01AW979, 01AW980, Gen2では 01HY983, 01HY984の2本が必要です。各ペアの後者はカメラと輝度センサーの信号もまとめられていて少し複雑な形状をしています。
DC-DCコンバータ基板
上のリンク先でu/bobbysteel氏のコメントでは入手困難という話でしたけれど(Lenovoでも供給終了になっていた)、中古部品がAliexpressで見つかります。部品番号はGen1/Gen2共通で00NY439です。OLEDパネルは+10数Vの電源電圧が必要なために設けられたようですが、そんなに複雑な回路構成でもなさそうですし解析してみようかと思いながらも実使用していると再分解が面倒くさくてまだやっていません。分解するまではこの基板を押し込められる空き場所がどこにあるんやと思っていたのですが、ディスプレイ下部の隙間へスペースが確保されていました。設計担当の人悩んだのだろうな‥

入手先
可能ならばLenovoから直接購入するのが安全かつ確実ですが最近は機種名とシリアルから紐づいた形で注文しか出来なくなっているため闇アップグレードはその他のルートを使うことになります。
一部はAmazon Japanでも入手できますが圧倒的に見つかりやすいのはTaobaoやAliexpressです。ものによっては流出品と思われる新品も見つかります。ほとんどの場合、値段はTaobaoのほうで購入すれば最も安く上がります。しかし、取引に中国語スキルが必要であり中国からの輸出時に謎理由で止められ国外発送できないことに何度か直面して物流センター担当から直接中国語の電話が掛かってきたりしたこともありました。そうなると片言会話が限界の普通話スキルでは詰んでしまったことを経験して以来、Aliexpressに日和っています‥

分解交換
Lenovoのサイトによいビデオがありますからリンクで紹介しておきます。初めて分解を行うとき一番不安に思うのはケースを開ける作業だと思います。無茶な力さえ加えなければまず壊れることはありませんが、インストラクションビデオのようにスクレイパーなど工具を差し込む位置を合わせれば大丈夫です。パネルを裏蓋へ取り付けるとき周囲のノッチ部分を一箇所ずつ押し込んでパチっという感触を確認しながら作業します。少しでもずれているとうまく嵌め込めませんし、パネルが割れてしまいますから慎重に作業を行ってください(LCDパネルでやってしまいました‥)。


1. 本体裏蓋を開ける
http://download.lenovo.com/lts/RTPW1470/FOF/RTPW1470-X1Yoga_REM_FRU_17_LCDPanel.mp4
2. バッテリー接続を外す
安全な作業のためには先にBIOSでバッテリーを無効にしておくとよいらしいです。
3. ディスプレイ部分を取り外す
http://download.lenovo.com/lts/RTPW1470/FOF/RTPW1470-X1Yoga_REM_FRU_17_LCDPanel.mp4
4. ディスプレイ部の裏蓋を外す
5. ケーブルやカメラモジュールを外す
6. ケーブルやカメラもジュールを新しい裏蓋へ移植する
8. OLEDパネルを新しい裏蓋へ取り付ける
9. DC-DCコンバータ基板を取り付ける
10.ディスプレイ部からのケーブルをマザーボードへ取り付ける
11. 取り外したマザーボード部のねじなどを元に戻す
12. バッテリーを接続する
13. 動作確認する
14. 裏蓋を閉める

ソフトウェア側の対応
交換作業完了したら電源を入れてみて正常に表示されるかを確認します。最初に電源投入したとき、Lenovoロゴバナーのバックグラウンド赤が鮮明で感動しました。明らかにLCDとは違います。このままではソフトウェアによるOLEDパネル固有の制御が全くないため、輝度も最大でぎらぎらな表示です。OSが起動したら今度はOLEDに関連したドライバをインストールします。IntelなOLEDビデオドライバではディスプレイγ設定や長時間表示している場合の高輝度部分の焼き付きを低減する制御を行っているようです。ドライバーは必須ですがINFファイルも最新を入れています。こうして並べると表記ぶれがあって興味深いですね。なぜかGen1のINFファイルは2020年になって更新が掛かっていますがGen2は当時のままです。下記は2021年8月現在です。

1st Gen
Intel 有機EL ディスプレイパネル ドライバー (Windows 10 64bit) - ThinkPad X1 Yoga (マシンタイプ 20FQ, 20FR)
https://pcsupport.lenovo.com/uu/ja/products/laptops-and-netbooks/thinkpad-x-series-laptops/thinkpad-x1-yoga-type-20fq-20fr/downloads/ds113141

ThinkPad モニター INF ファイル (Windows 10 64bit) - ThinkPad
https://pcsupport.lenovo.com/us/ja/products/laptops-and-netbooks/thinkpad-x-series-laptops/thinkpad-x1-yoga-type-20fq-20fr/downloads/DS105265

2nd Gen
Intel OLED パネル ドライバー (Windows 10 64bit) - ThinkPad X1 Yoga (マシンタイプ 20JD, 20JE, 20JF, 20JG)
https://pcsupport.lenovo.com/us/ja/products/laptops-and-netbooks/thinkpad-x-series-laptops/thinkpad-x1-yoga-type-20jd-20je-20jf-20jg/20jd/20jd0003jp/downloads/DS120875

ThinkPad モニター ファイル (Windows 10 64bit) - ThinkPad
https://pcsupport.lenovo.com/us/ja/products/laptops-and-netbooks/thinkpad-x-series-laptops/thinkpad-x1-yoga-type-20jd-20je-20jf-20jg/20jd/20jd0003jp/downloads/DS120314

画質評価
厳密な計測器を持ち合わせていないため色再現域の違いを数値化はできませんがLCDだとある程度以上の濃い色、特に赤など暖色系ではすぐに飽和していた部分は明らかに高彩色部分でもしっかり諧調表示が出来るようになりました。携帯画像編集/確認にはとてもよい端末になりました。

まとめ
こんな物好きが世の中にそれほどたくさんいるとは思えませんが、参考になれば幸いです。延長保証していなければすでにメーカー保証も切れている時期ですから影響のある人はいないかもしれませんが、ユーザー側で構成を変更するとメーカー保証は効かなくなりますし多分修理拒否されます。また、この記事で言及できていない部品ロットによっては同じ結果が得られない可能性もあることを留意してください。この記事を読んであなたが行う作業はあなたの責任であり、その結果についての責任は負えません(この責任回避の宣言がなければ他人のせいにしてしまえという浅ましい風潮は嫌いなのですが、そのような人たちの目に留まってしまったときのために一応表記しておきます)。