双子の王様(四阿シキ)

まだ双子が禁忌とされていた頃のお話。

王妃は生まれてきた双子を見て青ざめた。
「陛下には知られないようにしないと」
すぐさま一人を市井に隠し、何食わぬ顔をして王様に残ったひとりを会わせた。このことを知っているのは王妃、王妃の護衛1人、女中3人、そして王様の6人。そう、王様は知っていた。

6年後。もう王子の教育は始まっている。聡明な王子は様々なことを吸収し、次期王様ともてはやされていた。ある日彼は聞く。自分に双子のきょうだいがいるらしい。その人は市井にいるという。彼は見てみたくなった。彼は母親である王妃に言った。

「自分のきょうだいに会わせてください」
王妃は言った。
「陛下に知られたら私の愛する子が殺されてしまう。そのようなことにならぬよう、私は会わずに耐えてきた。あなたは自分のきょうだいが殺されても良いのか」
彼は言った。
「本当に父上は知らないのですか? かつて禁忌とされていた双子は、今では禁忌ではないのだと言います。それは父上が知っていたからではないのですか?」
「それは宰相が推し進めたこと。聞くところによると陛下は渋々だったというご様子。何よりまだ禁忌だった頃に生まれた我が子を許すでしょうか」

平行線である。彼は密かに探すことを決めた。

3年後、彼は見つけた。自分のきょうだいに当たる人を。比較的裕福な商家の子供として育てられており、学業優秀、周りからの評価も大変良かった。
実は本人は自分が王家の人間だと知っていた。だからこそ、人一倍努力を惜しまず、人格者となるべくしてなったのだ。

そのまた6年後、王子は成人した。この国は成人が15である。王はその時初めて、自分が知っていたことを話す。王妃はショックのあまり腰を抜かした。

かくして迎えられたもう一人の王族は、王子に引けを取らない聡明な人間として有名となった。王族としての気品やマナーなどはまだまだであるが、何より市井の人間をよく理解しているのだと。しかし、王子には王子の、15年間王族として過ごしてきた別の強みがある。

7年後、22歳となった我が子に、王は王位を譲る。

その後大層栄えたこの王国で、双子は「国の王たる王」と「市井の女王」として語り継がれることになる。

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