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バリ島ウブドを歩く⑩【ウブドで路線バスに乗る】

バリ島は交通が不便である。ウブドに来た観光客はタクシーを使うか、レンタルバイクが多いだろう。

私の下調べが甘かったので、ウブド地域では路線バスはないものだと思い込んでいた。しかし、通りを歩いていると赤いバスをよく目にした。ウブド王宮の前では学生たちが乗り降りしている。もしかしたら、このバスに乗れるのかしら。

ウブド地域を走る赤バス

私が、セテイア・ダルマ仮面と人形博物館へ行くためのルートを検索していると、バスを利用すれば歩くよりはずいぶん楽に行けることがわかった。ウブド王宮前のバス停で乗ればいい。

昨日の朝、私はウブド王宮前でこの赤バスに乗ろうとした。しかし、困ったことに現金では乗れないと言う。どうしようかと思いながら歩いていると、マンデイリ銀行の前で昨日会ったガードマンに話しかけられた。

ウブド王宮近く、マンデイリ銀行

このマンデイリ銀行のガードマンは非常に気さくで、馴れ馴れしいくらいの男性。なぜ、私が彼について詳しいかといえば、前日この銀行の前の階段に座り、向かいに並ぶ店などを描いていた。

彼は、私の描いた絵の写真を撮っていいかと尋ね、私自身も撮りたいと言うからOKしたという経緯があった。だから、彼は私のことをすっかり覚えていて、話しかけてきたのだ。

私はついつい、現金じゃバスに乗れなかった、とぼやいた。すると彼は、私にとって素晴らしいことを提案するというふうに、
“ここでカードをつくれるよ”と。
“そのカードでバスに乗れるの?” と聞くと、そうだと言う。

彼に案内されて銀行の奥まったカウンターに案内された。この時点で、まだ私は半信半疑だったが、どうやら本当に作れるらしい。ここはインドネシアの四大銀行の一つ、マンデイリ銀行だ。騙されることもないだろうと思われた。

カウンターの女性は、インドネシアの衣装も化粧もスキがない。対応はものすごく丁寧だった。Suicaのようなカードを一枚作るために、こんなVIP対応してくれなくてもいいのにと私は内心思っていた。

私の完璧ではない英語と、彼女のインドネシア訛りの英語でのやりとり。私はカード作りのシステムを理解していないので、繰り返し聞き返すことが何度もあったが、その度に丁寧に説明してくれた。

カードを作るのに、500000ルピア(500円くらい)かかるということ。そのうち22500ルピア(225円)はバスやコンビニで使えるということ。つまり、カード単体では27500ルピア(275円)。一回のバスの乗車代は、4400ルピア(44円)なので4回は乗れる。タクシーなら少なくとも1000円はかかるので、断然安い。

発行されたマンデイリカード

そこでカードを作ることを決め、手続きが始まった。書類に名前、宿泊先、電話番号を記入して、サインをする。最後に私とこの受付の女性は一緒に写真を撮った。この写真は先ほどの気のいいガードマンのお兄さんが撮ってくれた。

私は達成感いっぱいで、そのカードを使ってバスに乗り込んだ。行き先はセテイア・ダルマ仮面と人形の博物館。そこへ行くにはウブド王宮の前で乗り、5つめのバス停 Raya Mas 1 で降りて、そこから歩いて25分。私は 存分にこの博物館を楽しんだ。あんまり、気に入ったのでもう一度来ようと決めた。なにしろ、カード内に課金されたお金は余っている。往復しても100円分も使わない。

赤バスの中
赤バスの後部座席
Raya Mas 1 バス停

今日は銀行へ行ってカードを作るという冒険もしたし、そのおかげで博物館に行くこともできた。私は満足感に浸っていた。

セテイア.ダルマ 仮面と人形の博物館

しかし夜になって、ふと不安になってきた。ものすごく、どうしようもなく。このカードは安全なんだろうか、と。私が与えた情報は、電話番号と名前。それは問題ないだろう。でも写真を撮られた。写真を悪用されることはないだろうか。ネットで調べてみた。この銀行について、このカードについて。しかし、ネットに書かれているのは、インドネシア語をアルファベットにした文章なので理解できない。翻訳アプリを使ってみたが、当たり障りのないことしか書かれていない。明日、この宿の若旦那さんに聞いてみよう。

そう思いながら、日本語でも検索してみることにした。なぜ、もっと早く日本語のサイトで調べなかったのか。

私は 日本語の方が断然得意なくせにずっと英語で検索していたのだ。たぶんそれは、現在バリという環境の中で外に出ると日本語は通じないので、なんとなく日本語が使えないモードになっていたのだろう。

日本語で検索すると、“とりいただし” さんという、バリに関する正確な情報を発信している方がいた。あった、バスの乗り方、カードの作り方などが説明されていた。私の中でもくもくと立ち込めていた黒い闇が消えていった。

マンデイリ銀行でカードを作って路線バスを使うというのは適切だったのだ。ああ、良かった。私は騙されわけでもないし、写真を悪用される心配もない。手続き上必要なことだったのだ。

信頼できる情報というものが いかに安心を与えてくれるか。勝手の知らない海外に来てそれがいかに大事なことか。個人旅行をする場合には、念入りな下調べが必要だと改めて思った。

私は、行き当たりばったりでハプニングを楽しむという性格ではないし、年齢的にもそういうバカなことはやりたくないと思っている。今回の教訓としては、自分の行動を想定して、もっと下調べをすべきだったこと。そうでなければ、タクシーを予約して利用すること。

なんやかんやと、昨日は長い長い一日だった。この仮面と人形の博物館は、明日また行く予定。素晴らしいところだったので、明日はじっくり時間をかけて写真を撮ったり、余裕があればスケッチしたりして楽しんでこよう。

後ほど紹介します。お楽しみに。

仮面と人形博物館の一つの建物










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