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バリ島ウブドを歩く㉟ 【お祭り】

バリ島ウブドの最終日は満月の前日だった。屋台で買ってきた三角包みの朝食を終えて荷造りをしている時だった。チンチン・ピーヒャラ‣ドドンドンと騒がしい音が聞こえてきた。

あわてて外を見ると、神輿を担いだお祭りの行列だった。男性も女性も、小さな子どもを連れた母親も、その行列に参加している。

もちろんこの通りは、その数十分の間は通行止めになっている。偶然、お祭りの日にウブドに滞在できて運が良かったと思った。

ゲストハウスのそばの通りにお祭りの行列。
お祭りの神輿をトラックから降ろすところ。

そういえば朝食を買いに出かけた時に、数人の男性がいつもと違う服装で通りに座っていた。”今日は何かあるのですか” と尋ねると。お祭りでジンバランのビーチまで出かけるという。ウキウキとした気持ちがこちらに伝わってくる。写真を撮ることも、快く了解してくれた。

これからジンバランビーチに行く人々

私は見かけによらず、昔からお祭りのピーヒャラ音に影響されやすいタイプだ。子どもの頃の盆踊り大会は、人知れずとても楽しみにしていた。大人になってからは、小さな町の盆踊り大会に参加した。当時私はその町役場の保健婦だったので仮装大会のお役所チームで奴さん姿で踊ったこともある。人が足りないからと、チンチン鳴らす鐘を渡されれば、ノリノリでそれっぽいズムで拍子をとっていた。

私が訪問看護師として働いていたのは、ある老人保健施設の一室だった。その施設では年に一度のお祭りの日があった。いつもはうつ向いて反応のない老人たちも、チンチンとかねが聞こえてくると手振りで踊り始め元気になる。

私はここぞとばかりに、浴衣を着て場を盛り上げた。と言えば、とても親切な看護婦さんなのだが、実は私はただそわそわしてじっとしていられず浴衣姿で踊っていたのである。いつもと違う私の様子を見て、同僚は ”うわっ、利用者さん(入所しているお年寄りたち)とおんなじだ。”と言った。

だから、お祭り好きの私には、これからジンバランビーチへ行く彼らの気持がよく伝わってきた。

さて、そろそろ空港に向かう時間というときに、ゲストハウスのご主人が車を用意しに出かけた。彼を待つ間、若奥さんは私の荷物を運ぶのを手伝ってくれたり、私との雑談に付き合ってくれた。

お祭りは満月の前日、神をお迎えするために行われる。ということは、毎月この派手なお祭りが催されているわけである。
そして、神に祈り、その祈りが届いた証として、額に米粒をつける。

彼女とご主人は、朝6時からお祭りに参加していたという。そんな疲れも見せず、にこやかに応対してくれた。そして彼女の額にはまだ米粒が張り付いていた。


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