見出し画像

ビーストバインド公式NPC列伝:ランダルシア・シルヴァ

※本記事は、「BEASTBIND 25th Advent Calendar」 9/19分の記事です。
「BEASTBIND 25th Advent Calendar」については、以下のリンクをご参照ください。
 なお、本記事は加照様からの寄稿となります。加照様、ありがとうございました!


◆はじめに

 『ビーストバインド』シリーズ25周年のアドヴェントカレンダー企画の一つとして始まった、公式NPCの紹介記事。早いもので第2回を迎えることとなったこの連載も、カレンダー企画の終了に当たって一旦の幕となる。長い間、本当に長い間、前週から本シリーズを支持し、読み続けてくれた皆さまにはあらためて感謝の意を申し述べたい。
 25周年を越え、さらに勢いづく『ビーストバインド』界隈(当社調べ)。今後シリーズが見せる次のステージにも期待が膨らむばかりである。最終回では、そんな"未来"を体現した公式NPCを紹介したい。

◆魔狩人ランダルシア・シルヴァ

 吸血鬼、それは夜の側においても一際強力な魔物たちだ。
 ネットワーク所属の有無に関わらず、出自によらず、数多くの弱点をものともしない不死身の怪物。
 そんな彼らと戦い続ける人間がいる。
 培った経験と知識、持ち前の機転、秘伝の奥義。ありとあらゆる力を駆使し、不死者に死を与える狩人。
 彼らはヴァンパイアハンターと呼ばれ、各地で吸血鬼と死闘を繰り広げていた。

 そして、ここに宿敵の胸に杭を打ち込むべく、日本の地へ降り立った者が居る。
 その名も、ランダルシア・シルヴァ。
 一族の悲願を果たすべく立ち上がった、歴戦のヴァンパイアハンターである。

◆魔獣の絆編


 『ビーストバインド・魔獣の絆』の紳士録にて、彼は初めて舞台に登場する。
 イラストでは頭頂部が禿げ、木の杭を持った目つきの悪い老人として描かれている。見るからに只者ではない、というか近付きたくない雰囲気である。歴戦の狩人は風体からして違うということか。

 バー「ルーナン」の片隅で、常連やバーテンに見守られながら昼寝をして過ごす。烏が飛び立ち、猫が横切るたびに、杭を片手に走り出しては転んで腰を痛める
 これがランダルシア・シルヴァという老人の日常だ。

 しかし、彼はただの偏屈で気難しいだけの老人ではない。
 自称・シルヴァ家第6代目当主にして、歴戦のヴァンパイアハンター。宿敵ザンダルバ伯爵を追って海を渡り新宿へ流れ着いた、紛れもない魔狩人なのだ。
 しかも、これだけの経歴でありながら、彼は気前の良さも持ち合わせている。300年の歴史を持つシルヴァ家の奥義ですら、ただ一杯奢るだけで伝授してくれるという。その歴史に裏打ちされた退魔の技は、吸血鬼にとっては脅威となるだろう。

 だが、そんな彼もいくつかの問題を抱えている。
 シルヴァ家第6代目当主の肩書が自称であること。
 彼の伝授してくれるシルヴァ家の奥義を、当人がとうの昔に忘れてしまっていること。
 何かにつけてザンダルバ伯爵認定をして騒ぎだすこと。

 やはり、ただのヤバい奴なのでは?

 そんな疑問が頭をよぎる者もいるだろう。
 しかし、それらも些末な問題である

 普段は役に立たないボンクラが、いざという時に活躍する。
 古参兵が型落ちの武器や知識経験で強敵と渡り合う。
 これこそ浪漫、皆も大好きな物語の王道だ。バトルシ●プの爺のアレである。
 ランダルシア翁も、きっと宿敵ザンダルバ伯爵との決戦では、その奥義を存分に見せてくれることだろう。
 歴戦のヴァンパイアハンターに戻った彼とPC達の共闘、想像するだに胸が躍るではないか。

 いずれにしろ、ランダルシア翁の次の展開が楽しみで仕方がない。
 そんな期待に胸を膨らませつつ、彼のその後を見てみよう。

◆ミレニアム編

 ということで、ランダルシア・シルヴァの次なる登場はサプリメント『ミレニアム』。
 早速紳士録をめくると、相変わらず杭を持った彼の姿が確認できる。
 しかし、気になる点がある。心なしか、存在感が薄い、と言うより身体が透けているように見える。
 これは如何なることか。本文を読んでみよう。

 死せる者

 死せる者、である。
 なんと、あの歴戦のヴァンパイアハンターは既に死亡してしまっていた
 おそらく、宿敵ザンダルバ伯爵との決戦によって命を落としたのだろう。伯爵との因縁深き彼のこと、ただ敗れたのではなく、きっと差し違える所まではできたのだと信じたい。その偉業と引き換えの犠牲であったと。彼の命には、それを成し得るだけの力があったのだと、私は信じている。

「シルヴァの爺さん? 風邪ひいてくたばったって聞いたぞ?」

 風邪、である。
 風邪症候群、特効薬の無いウイルス感染の病気。
 この爺、あれだけ伯爵と騒いでいた末に、バーで風邪を引いて死んでしまったのだ。さらに、死んだことに気付かず地縛霊となり、未だにバーで屯しているのだという。
 探偵はバーにいる、地縛霊もバーにいる。ルーナンの懐の深さを今一度確認できる。

 時折、魔物との戦いに加勢をしてくれることもあるようだが、実体がないのであまり役には立たないとのこと。
 もはやマスコットといって差し支えないのではないか?
 ただし、このマスコットは何かにつけて杭を抱えて走り出すので注意が必要だが。

◆トリニティ編

 ルーナンの非公式マスコット、お騒がせ地縛霊のランダルシア翁は、トリニティにおいても健在だ。
 その姿はサプリメント・ドミニオンズP.131で確認できる。
 宿敵ザンダルバ伯爵の影を追っては大騒ぎ、『シルヴァ家300年の奥義』を伝授する為に若者を捕まえる姿は、もはやルーナンの日常風景となっている事だろう。
 相変わらず、自分が死んだ事には気付いていない様子である。しかし、ごくたまに役に立つ知識、誰もが忘れ去ったような本物の吸血鬼に関する知識を披露する事もあるらしく、お役立ち度は僅かに上がっている

 そして、孫娘であるシルヴァ家現当主、メアリ・シルヴァの守護者として時折召喚されてはルーナンに戻るということを繰り返している
 認識としては孫娘に加勢をしているつもりのようだ。

 余談だが、私は以前この召喚・転移を利用したシナリオを書いたことがある。大まかな内容は『戦闘中に厄介アイテムを拾ったランダルシア翁が、戦闘後そのままルーナンへ持ち帰って大騒ぎ』といったものだ。
 ランダルシアのとぼけたキャラと相まって、当時のPLには好評をいただいた。

◆メアリ・シルヴァ ~その血の宿命~

 ここで、ランダルシア翁の孫娘メアリ・シルヴァについても紹介しておこう。

守護者使い/マジシャン/?
吸血鬼狩りの一族の末裔であるグラマラスな美女。トリニティ時点で27歳。
吸血鬼を討ち滅ぼすことを生き甲斐とし、ヴラド騎士団を追って来日した。
祖父である亡霊ランダルシアを使役し、タンデムアタックで戦う。

 怪物と戦う狩人であれば、使えるものは祖父でも使うということか。まさに女傑である。

 彼女の姿は魔獣の絆収録のシナリオ『吸血鬼の夜』にて、その若かりし姿を確認できる。凛々しい顔立ちをした金髪の美少女であり、若干17歳にして既に吸血鬼と戦っている。
 ネタバレは避けるが、彼女も吸血鬼と因縁深く、ランダルシア翁と同じ一族であると言えるだろう。
 ちなみに、ランダルシアはシナリオに登場していない。「コミカル仕立てにする為に登場願うのもよい」とは書かれているが、それでいいのか血縁者。

◆おわりに

 これにてランダルシア・シルヴァの歴史、その一端の紹介を終える。
 彼の命は既に一度終わりを迎えた。しかし、彼が真の死を迎えることはなかった。
 無自覚ではあるが肉体の軛から解き放たれた今、彼を存在させるのは『吸血鬼を狩る』というエゴである。
 その渇望がある限り、ランダルシア・シルヴァが消えることはない。
 そして、孫娘メアリとの絆がある限り、彼が渇望に呑まれることもないだろう。

 存在が続く限り、可能性はなくならない。

 宿敵ザンダルバ伯爵との決着はどうなるのか。
 シルヴァ家300年の奥義は明かされるのか。
 ランダルシアが己の死に気付く日は来るのか。
 彼の"未来"の可能性は、死してなお尽きることはない。

 これこそTRPG、ひいてはビーストバインドシリーズの持つ可能性だと、私は考える。
 たとえ止まっているように見えたとしても、遊ぶ者がいればコンテンツは生き続ける。遊び狂い、思い描くものがいる限り、未来に終わりはないのだ。
 ビーストバインドが迎える次なる世紀へ、シルヴァ家の奥義とザンダルバ伯爵への想いを馳せながら、記事を締めくくりたい。

 周年企画もあと僅か。
 寄稿程度の参加だが、最後までこの祭りを楽しんでいただければ幸いだ。


本記事は、「F.E.A.R.」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『ビーストバインド トリニティ』の二次創作物です。(c)井上純一、重信康/F.E.A.R.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?