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右手袋子と左手手袋郎

※1475文字ありますので、お暇な時にでもどうぞ!!

登場モノ

右手袋子:右手軍手の妖精

左手手袋郎:左手軍手の妖精

おじいさん:サンタクロースの妖精

雪深い耳の形をした山には大きなもみの木がありました。
冬は真っ白い雪に閉ざされて、辺りは深と静まっていました。

右手袋子(みぎてていこ)と左手手袋郎(ひだりててぶくろう)
はその山におじいさんと暮らしていました。
二人はおじいさんの仕事を手伝って、薪を割ったり、土を耕したり、
木の実をもいだりしていました。

袋子と手袋郎は自分たちが兄妹なのか、恋人同士なのか、友人なのかを
知りません。気がついたころには二人一緒で、おじいさんも二人が一人の
ように思っていました。

袋子は大変器用に仕事をこなし、しなやかにそして楽しげに、クルクル
踊ります。手袋郎はその様子をおじいさんと暖かい暖炉のそばで座って
見ているのが好きでした。

けれども袋子は手袋郎が何をするにもモタモタし、ダンスさえも
下手なのが気に入りませんでした。
なにより嫌なのは手袋郎がこの田舎暮らしを好きでいる事でした。

袋子はおじいさんの女友達が連れているケリーから聞いた
都会に憧れていました。いつか行ってみたいと思っていました。

夜、ベッドに横になって袋子は手袋郎に自分の夢を話しましす。
わたしは、都会に行って、きらびやかな街を見てみたい、そして暮らしてみたいと。
でも頑固な手袋郎は都会なんかに行ったら、ごみごみしていて、一つも
安心して暮らせない。ここが一番だとつっけんどんに言いました。

おじいさんは年に一度、街へ行く用事があったのですが、その時には
橇に乗るので気取り屋のレザーを連れて行くのでした。
けれどもその年のクリスマスイブの日にレザーがなぜか行方不明になって
しまい、おじいさんは袋子と手袋郎を連れて行くことにしました。

袋子と手袋郎は橇に引きずられ、体が引きちぎれそうになりながらも
一生懸命仕事をし、おじいさんと無事に都会の街に辿り着きました。
街を見たい袋子でしたが、二人に息つく暇はありません。
おじいさんは大きな袋を担いで、煙突に飛び込んでは家の子供たちへの
プレゼントを置いて回ります。
袋子と手袋郎も顔をすすで真っ黒にしながらのお手伝い。

けれども二人はレザーと違って、体が丈夫ではありませんでした。
手袋郎は袋子をかばって仕事に励みましたが、袋子の手はとうとうもげて
しまいました。

おじいさんは、しょうがないなと一言ボヤいて、袋子を近くの
暖炉にポイッと投げ入れました。
袋子は街の様子を見たかったなあと思いながら、死んでいきました。

おじいさんは休みなく手を動かしプレゼントを配っていたので手袋郎は
袋子が死んでしまったからと言って、悲しんでいる暇はありませんでした。

おじいさんは、貧しいモノたちに贈り物をする尊い仕事をしているのを
手袋郎も聞いていたので、泣きごとなどは言えません。

けれども手袋郎の体ももう限界でした。橇を引くトナカイの力は強く、
煙突の煤は手袋郎の目も口も塞いでしまいました。ボロボロになった
手袋郎をおじいさんは困ったもんだよと言いながら近くのゴミ箱に
捨てました。

手袋郎はやっぱり、都会になんか、来なければなぁ、二人が別々に
捨てられることもなかったのにと思うと、悲しくって、涙がこぼれ
ました。

そうして、冷たい雪は降り積もり、手袋郎も死んでしまいました。
この様子を見ていた神様は
手袋郎、手袋苦労したねと言って、袋子と手袋郎を紐付きミトンに変身
させました。

二人は郊外の小さなお家の子供のミトンになりました。袋子は街の暮らしに
喜んで、子供と手袋郎のために毎日ダンスを披露しました。
手袋郎は紐付きになって、袋子ともうはぐれないと喜びました。
こうして二人は末永く幸せに暮らしました。

今日の一句
手袋は相方失くし涙する
詠みモノ
左手手袋郎

大変貧乏しております。よろしかったらいくらか下さい。新しい物語の主人公を購入します。最後まで美味しく頂きます!!