再掲/wake me up

これで触れた曲から勝手に書き起こしたやつのデータ拾って来た。


05410-(ん) 


 ドアが閉まる音がした。
 僕は視線を力なく落とした。直前の会話など、思い出したくもない。彼女の目に浮かんでいた透明な滴だけが、心を占拠している。
「…何で、泣いたの」
僕の問いに答える人はいない。
 泣かれるくらいなら、いっそのこと、嫌ってもらった方がマシだった。彼女が僕を嫌いになったというなら、それで僕は納得出来たのに。
「訳、分かんね…」
涙が、あの泣きそうな顔が、瞼の裏に張り付いて。忘れることすら、許そうとしない。
 それでも日常は至って普通に進んでいく。彼女がいないなんて、嘘のように。いつものように薬を用意して、水で流し込む。すぐに、眠気が襲ってきた。携帯を開いて、送り慣れた彼女へメールを打っていく。
『きっと眠ってるから、迎えに来て』
彼女はいつも薬に頼らなくては眠れない僕を、優しく起こしてくれた。彼女がいたから、僕は安心して眠りにつくことが出来た。送信ボタンを押そうか迷って、結局終話ボタンを押してしまう。
 もしも、返事が否定のものだったら、どうしよう。僕と彼女を繋いでいた関係は崩れて消えたのだ、それが何をもたらすか、僕は分かっている。僕がどれだけ嫌がったとしても、彼女は僕を過去にする。恋人でも友人でもない、別の何かに変換してしまう。
 それでも僕は考える、答えが出ないのを良いことに。否定の返事が返ってきたら、僕も泣けば良い? それとも死んだ方が良いのかな。がむしゃらに飛び降りてみるのも良いかもしれない。…それとも、ドンマイって自分にキスでもしようかな…。
 止まらない思考の海に呑まれるように、僕は眠りに堕ちていく。きっと、最初から僕が願っていることなんて、一つしかないんだ。

 君が迎えに来てくれるまで、深い闇に溺れ続けていれば良いのに。


初出 20130228
title by RADWIMPS

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