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2022年4月外界に出たモグラ

4月から新しい仕事に就いて、久しぶりに朝早く電車に乗って通勤する毎日を過ごした。始業時間がやけに早い。

在宅勤務もあり2年間通勤電車に乗る事もなく、朝も比較的ゆっくりで毎日ラジオを聴きながら仕事をしていたうえに人に会う事も稀だったので、また以前のような社会生活が送れるのか非常に不安だった。朝早く起きられるのか、人とコミニュケーションが取れるのか、体力は持つだろうか?

本当は以前のような生活には戻りたくなかった。仕事が決まってから、憂鬱な気分で過ごしていた。本音は「働きたくないね~」だった。

良かったのか悪かったのか、最初の1週間は職場で陽性者が出たので在宅勤務になり、とりあえず朝早く起きる練習から始められた。

毎日の通勤が始まると不思議な事に、ほとんど違和感なく以前と同じような生活に戻っていた。ただ、朝早く起きなくてはというプレッシャーのせいか、異常に早く目が覚めてしまい睡眠不足の日々が続き、日中は時差ボケのようにぼんやりしていた。2年ぶりに外の世界に出たモグラだ。

人と対面で話していなかったので声もボソッとしていて、目を合わせる事も出来ず、多少気持ち悪さを感じさせていたんじゃないかと思う。

新しい生活に慣れるのが精一杯のひと月だった。週末はグッタリして一日中寝て食べてYouTubeを観て過ごす。日曜日が夕方になる頃に、やっとテキパキと動きだして月曜日からの日々に備える。

そして少しずつ人間に戻っていった。社会人らしく振舞えるようになったのではないだろうかと思っている。

意外だったのは、憂鬱だった割には、それほど嫌だと感じなかった事。
むしろ久しぶりにたくさんの人のいる場所に出ていって、人とコミュニケーションを取る事に喜びを感じたりした。最初だけのような気はするけれど。

以前と全く違う未来を予測していたのに、それを望んでいたのに、結局私は以前と全く同じ生活に戻ったのだな。そして、それが嫌ではなかったんだなと、仕事帰りにオープンテラスのレストランの横を通りながら思う。

夕方まだ明るい時間に人々が楽しそうにビールを飲んでいたりする。
見慣れた光景に、これまでの2年間が消えてしまったようにも感じる。
それでも確実に、以前とは違う不思議な感覚がある。
同じようで同じではない、過去に戻ったわけではない事を知る。





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